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宿敵同士の対決

将軍はひとり寂しく部屋に座っていた。何か読むものはないかと本棚を見る。

しかし、彼が好きなジャンルの成功本などはありそうにもなかった。


「暇だな……」


彼は唸り、再び腰を下ろすと、ゆっくりと部屋を見渡す。

りんごの目覚まし時計にりんごのルームライト、りんごのイラストの壁紙――この部屋の持ち主であるアップルは名前の通り、りんごが大好きな少年であった。


「りんごもなかなか悪くない」


彼はアップルの部屋に感心していると、ふと壁際に貼りつけられている写真立てに気が付いた。それにはアップルが北海道でスキー体験をした時の写真が入っていた。彼は、アップルやヨハネス、ハニーと触れ合ううちに心にある変化が起こり始めていたのだが、彼はその変化に気づくよりも早く、動物的直感で只ならぬ殺気の持ち主が住宅街付近に現れたことを察知した。


「この私に対する非常に強い殺気……よりによって奴が来たか。私はアップルとヨハネスの恩に報いるためにも、奴と闘わねばならぬ!」


彼はノートの一枚を破り、サラサラと若い人が使わないであろう万年筆で置手紙を書いて置いた直後、猛然と猛牛のように外へと飛び出し、その殺気を放つ人物の元へと向かって行った。



アップルの家から少し離れたバス停前でふたりの男が対峙していた。

ひとりは、白いオールバックに白の軍服を着た男、もうひとりはがっちりとした体格に厳つい顔に黒い軍服を着た中年男性。

白と黒、全く正反対の服の色を着たふたりは互いを睨む。


「フフフフ、久しぶりだな。我が宿敵、ジュバルツ=ブラックロー将軍よ」


「まさかお前もこの場に来ているとな、ジャドウ=グレイ」


「俺はただ知り合いが作るパイを食べに来ただけだ」


「嘘を言うな。お前はパイを食べた後、私を倒し悪役の座を奪うつもりであろう」


彼が指摘するとジャドウは不敵な含み笑いをする。


「フフフフ……さすがは腐っても鯛、じゃなかった、俺の出番を奪っただけの事はあるようだ」


「お前に褒められたところで私は嬉しくもない。さっさと帰るがいい」


「断る。俺は意地でもパイを食べて満足した後、お前から悪役の座を奪う。この作品の悪役はひとりで十分だ。お前の出番はない」


「ジャドウ=グレイ。お前はどうやらこの作品がシリアスだと勘違いしているようだな……残念だがこの作品はコメディ。シリアス担当のお前がいる必要はない」


「バカめ。俺はコメディが大好きだ。それに、コメディの中に少々シリアスがあると読者は喜ぶ。したがって、俺はこの作品に必要な存在だ」


「その高慢な思い上がり、ここで挫いてしんぜよう」


「フフフフ…望むところだ、ジュバルツよ」


彼らはかなり長い会話で読者を飽き飽きさせた後、間合いを取り互いの得物であるサーベルを引き抜き、敵に斬りかかって行った。


「「この作品の悪役はこの私(俺)だ!」」

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