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新しい家族

「可愛い可愛い」


「……」


「可愛い可愛い」


「……」


「可愛い可愛い」


「……」


「可愛い可愛い」


「何回言うつもりなんですか?」


フレンチは現在少しイラッと来ていた。なぜなら、博士が彼を抱きしめて「可愛い」を連発しながら頭を撫でているからである。

彼は自分が美形なのは認めていたし、可愛いや綺麗だと言われるのも慣れていたけれど、頭を撫でられるのだけは慣れていなかったようで、これには普段冷静沈着なフレンチも少しイラッとしたのか、少しきつめの口調で言った。

彼の言葉から、博士は彼があまりいい思いをしていない事を感じとり、彼から離れてソファに腰かけた。フレンチは、自分にとっての恐怖同然の抱擁から解放されたので、深く深呼吸をして、平静を保つ事にした。彼から少し距離を置きつつ、フレンチは自分もふかふかのソファに腰かけた。

それは一度腰かけただけで、先ほどの怒りが吹き飛び、その心地よさからか眠くなるほどの高級ソファだった。彼は先ほどとはうって変わって、まるで猫のような愛くるしい笑みを浮かべ、


「僕、もうこのソファから離れたくありません……」


次第に彼の瞼が閉じはじめ、彼は完全に眠ってしまった。彼が眠ったのを確認した博士は、ニヤリと不敵な笑った。それは、すやすやと静かな寝息を立てて寝ているフレンチにとって、恐ろしい魔の手が襲い掛かる前兆である事を彼は知るはずもなかった。



目が覚めたフレンチは、まだ夢うつつの状態であった。

周りを見渡しても、傍にいたはずの博士はいない。


『どこかに出かけたのかしら』


取りあえず、あまり気にしても仕方がないと考えた彼は、顔を洗いに洗面所へ向かった。そこで鏡に映った自分の顔を見た彼は、驚愕のあまり、大きく目を見開いた。彼の顔には博士がやったであろうと思われる落書きが、たくさん書かれてあったのだ。幸いそれは水性のマジックで書かれていたのですぐ落とす事が出来たからよかったが、これが油性だったら大変な事になっていた。


「全く、あの博士は……」


彼はため息をついた後、彼の本棚にある漫画を取り出して、彼が帰ってくるまで待つことにした。


「たっだいまー!」


その声と共に勢いよくドアが開かれ、博士が帰ってきた。彼は博士が帰ってくるなり、開口一番こう呟いた。


「その子、誰ですか?」


彼が優しく抱きしめていたのは、五歳くらいの金髪に緑の瞳、ミツバチの恰好をした大変可愛らしい男の子だった。


「ああ、この子ね。可愛いだろう?」


「それはそうですけど、まさか誘拐でもしてきたんですか!?」


「いいや。彼が私に懐いてついてきたのだよ。ハニー=アーナツメルツくんと言うらしい」


「なるほど……って、ハニーくんっ!?」


「フレンチくーん♪」


男の子はフレンチを見るなり、彼にぴょんと抱き着いてきた。

フレンチと男の子は知り合いだったのである。

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