ハニーのクッキング♪
博士は石敢當君の改良を中断し、三時のおやつタイムに入った。
今日のおやつは、フレンチが作った特製のジャムをかけたふわふわの中の生地と外側のサクサクがたまらなく美味しいパンケーキだ。ちなみに作ったのはフレンチで、ハニーと博士は出来上がるのを待って食べるだけだ。毎日食べるだけのふたりを見た彼は、エプロンを外しながら、日頃の不満を口にした。
「たまには自分たちで作ってみたらどうですか」
「いつか作るよ」
『あなたのいつかは永遠に来ないでしょう』
心の中でツッコミを入れていると、ハニーが意外にもこんな事を言い出した。
「明日は私がお菓子を作ってあげるね♪」
思いもよらない彼女の言葉に思わず彼の瞳からうれし涙がこぼれた。
「ハニーさん、明日のおやつ楽しみにしていますね」
「うん、任せて♪」
自信満々に言うハニーであったが、彼女が料理をする姿をいまだかつて一度も見たことがないフレンチは、可愛いキャラほど料理が下手という小説のお約束のようなものを思い出し、彼女が明日作る料理に対し、ヒヤリと冷たいものを感じた。
翌日、ハニーはお菓子の本を前に悩んでいた。
「何作ろうかなぁ?博士とフレンチ君はどんなお菓子を作ったら喜んでくれるんだろう」
彼女は色々考えては見たが、舌の肥えた彼らを満足させることは容易ではない。
ハニーは一生懸命に考えた末、少し反則気味な手を使う事にした。
彼女の義理の兄であるカイザー=ブレットは、スターレスリングジムの副会長にしてパン職人をしている男だ。今は故郷であるエデン星で『カイザーのパン屋さんエデン支店』を経営している。
彼の作るパンの美味さは地球人の作るパンとは文字通り次元が違い、神の惑星であるエデン星でも大人気なのだ。彼が味方になってくれるのであれば、これほど心強いことはないとばかりにハニーは期待を込めて、宇宙電話で彼の店に電話をかけた。
「もしもし、カイザー兄さん?」
「ハニー、久しぶりだな。地球の暮らしはどうだ?」
「とっても楽しいよ♪」
「それはよかった。私は地球にいるお前が心配で、なかなか寝付けなかったから、これを聞いて安心したよ」
「ところで兄さん、お願いがあるんだけど……」
彼女は兄に、フレンチの代わりにおやつを作ることを約束した話をした。すると彼は、
「本当に辛いが兄さんは今、店を開ける事が出来ない。店の前でお客さんが五時間も待っているのだ。大勢のお客さんの心を裏切るわけにはいかない。いい子のハニーなら、兄さんの気持ちが分かるはずだ」
「……うん、分かった。他を当たってみるね」
「
すまない。私の可愛い妹よ」
ここで電話は切れた。彼女は少しため息をつくと外へ出て、最後の頼みの綱であるアップルの家へと向かった。




