暴走天使。そして、決着
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当初の目的通りにミカエルの翼を切り落とす事には成功したが、天使の翼は力の源ではないらしい。ミカエルの言葉が正しければ、力のコントロールを司る部位とのことである。
「人間の身体だと、すぐに限界が来そうですね。仕方がありませんね……どうせ、暴走は止められないんですから、天使の姿で闘いましょうか」
ミカエルはエリスの身体から抜け出すように出る。その姿を見てキリヤは驚いた。
髪の色は赤色で、身長も170センチぐらいの美女だった。そんな事よりも驚くべきポイントがあるのだ。
「何で、翼が灰色なの? てか、再生するもの!?」
キリヤは灰色の翼が生えているミカエルに疑問を投げかける。今までは純白だった翼が灰色に変わっていると、違和感がある。黒色だったら堕天使みたいでカッコいが、灰色は微妙であった。
「ええ。翼の再生自体は出来ますよ。色が真っ白から濁ってきますけどね
まぁ濁れば、それだけでコントロールなんて無理ですけどね」
「なんだかんだと言っても質問には丁寧に答えてくれるんだな」
ミカエルが狼狽し始める。意外と律儀なのかもしれない。
「そんな事は無いです! これから死ぬ貴方に、せめてもの手向けです……そんな事より、外で闘いましょう。でないと、あの娘も闘いに巻き込まれますよ? 私は構いませんけどね」
分身体を二体だけ洞窟に残してから、ミカエルと洞窟の外に出る。洞窟に残した分身にはエリスの身の安全の保護と教祖のオッサンを見張らせてある。
洞窟から出て二人は相対する。
「これで本当に最後です! この身が朽ち果てようとも、貴方を倒しますッ!」
ミカエルは正面から突進してきた。確かに、素早さが上昇していた。なら、他のステータスも100%以上の力が出ていると思われる。そんな最強モードのミカエルは目にも留まらぬ、早業で連続突きを放つ。キリヤは身体を左右に動かし、躱す。先程とは違い、余裕があまり無い。躱すのも一苦労である。
キリヤは縮地の御蔭で一瞬にしてミカエルから距離を空ける。距離を空けると分身体を二十体造り出す。今回の分身体のスペックは素早さ重視だ。
主に攪乱要員の為だ。本物を含め、大人数のキリヤが高速で周囲に移動を開始した。
分身と同じぐらいの速度で移動をして、偽物と本物の区別をつきにくくする。そして、ミカエルが偽物に気を取られている間に周囲の森に潜む。数が減ってからばれない為に、分身をもう一体造る。スペックはかなり高めだ。けっこうな魔力を消費したが、その分の働きはするから問題ないだろう。この分身には本物として行動してもらおう。
(ぶっちゃけ、時間切れまで粘っていたら俺の勝ちだがな)
アリスの死を切っ掛けに、この世界は現実である事を再認識したのだ。今までも遊び半分だった訳ではないが、どこか現実味に欠けていたからだ。その為に男の浪漫を感じる様な真正面からの正々堂々の戦いを挑んでいたが、自分よりも強者を相手にそんな事はしなくなった。勝てば、官軍の世の中だと学んだ。
セコイかろうが、卑怯と罵られようが、勝たなくてはならない。これが二次元ならば、正々堂々とすれば勝負するのも良い事だが、この世界は現実である。それ故に敗けられない。
天使を喰おうと考えているキリヤなので、ずっと隠れているワケにもいかない。天使を倒すには焦りは禁物である。
木陰にて本物はチャンスが来るのを伺っていた。それから、五分も経つまでに分身体が合計で七体にまで減った。本物の代わりを任せていた奴はちゃっかり生き残っていた。まぁ当然か、それだけの性能は有していた。
みるみるキリヤの分身達が消されている。残りは僅か四体になる。ここでミカエルが隙を出すのをゆっくりと待つ。この距離なら縮地での範囲内で一瞬で移動できるので、変わらずの位置で様子を伺うままだ。だが、キリヤはいつでも攻撃出来る様に身体変換で右腕を剣に変換する。本当は最近使っている大鎌が良いんだけど、あれだと縮地で移動する際には使いずらいので、剣になっている。
様子を伺い始め十分程には最後の一体が攻撃を受けてしまう。そいつは本物の代わりを務めていた分身だった。高性能な分身は自身の胸から天使槍が生えている様に胸を貫かれている。他の分身と違い、すぐに光の粒子なって消える事はないが、消えるのも時間の問題だろう。しかし、この状況で動き出す者が居た。本物だ。
キリヤは縮地のお蔭で一瞬にしてミカエルに肉薄する。ミカエルは肉薄される寸前でキリヤに気づき、咄嗟に槍を引き抜こうとするが、抜けない。キリヤの分身が槍を力の限り掴んでいるからだ。キリヤは分身に『力尽きるまで槍を掴んで手放すな』と指示を出しておいたのだ。そのお蔭で、ミカエルもすぐには槍で反撃が出来ない。そんなチャンスを見逃すはずもなく、ミカエルの右の脇腹をキリヤの長剣に変換してある腕が貫く。
「グッ!」
ミカエルは苦しそうな声を漏らしたが、すぐに天使槍を分身から抜き出す。すぐに分身体も光の粒子に成り果てた。ミカエルはダメージの所為で先程に比べても遅い速度で突きを放つが、キリヤは後方に跳び、難なく回避する。
距離を空けたキリヤは更に分身をまた二十体造り出す。
「小賢しいですねッ! 聖なる槍よ、敵を穿て 《シャイニング・ジャベリン》 【フルバースト】」
ミカエルの周りに無数の光の槍が浮き始める。数十を軽く超える数の光の槍がキリヤ達を目掛けてから発射された。
アリスの記憶にも【フルバースト】なんてものは存在していない。とりあえず、縮地を発動し地面を高速で移動して攻撃を躱す。分身の方も避ける努力はしていたが、回避できずに喰らっていく……全滅だ。分身には期待してなかったが、消されるのは早すぎる。
「我、望むは敵を捕らえる光の檻 《ライトプリズン》【フルバースト】」
攻撃を回避する為に距離を空けたキリヤを見て好機だと判断したのか詠唱に移るミカエル。近距離であれば、即座に詠唱を止めていたが、距離が空いているせいで間に合わない。ミカエルの詠唱で出来た光の檻は直径300メートルはあるほどに巨大だった。この光魔法はアリスの記憶にもあるものだ。しかし、ここまで巨大なものではなかった。
その光の檻はキリヤとミカエルを囲む。その檻に二人は閉じ込められる。この魔法の所為でキリヤは逃亡する事が難しくなった。
「これで逃げられませんよ」
ミカエルはそう言うと、光の檻の大きさを縮小し始める。最初は確実に捕える為に広範囲ようの檻を形成し、その後に範囲を縮める事で得意な接近戦をやりやすくするのだろう。キリヤは檻の隙間から右腕を出そう腕を動かす。すると、バチッ!バチッ! と音を立てながら、腕が焼け焦げる。耐えれるレベルだが、少し厄介である。戦闘中にはその程度の隙も勝敗を左右するからだ。
キリヤが結界の強度を測っていると、あっという間に四方を10メートルぐらいの立方体が完成していた。
「この範囲なら躱せませんよ」
ミカエルは爽やかに宣言する。
「それは、どうだろね」
確かに少し厳しい。躱すのが厳しいなら、攻撃を先に食らわせるまでだ。キリヤは身体変換で大鎌を造り出す。長剣では決定打に欠けるからだ。互いに武器を構えて相対する。
(狙うは《絶対切断》のカウンターだ)
神眼で攻撃の軌道を読めば、カウンターも難しくかはないだろう。それでも、キリヤ油断せずに構える。
「この槍は、罪を裁く聖なる槍 《ジャッジメント・スピア》【フルバースト】」
「喰らえぇぇぇ 《絶対切断》 」
ミカエルは自身の扱える最強の技で勝負を決めに来た。それに合わせて、キリヤも大鎌を振るう。自身の最強のワザとともに。
互いの武器が激しく、ぶつかる。大気がそれだけで震えた。それでもお互いの武器は壊れずに、何とか形を保っている。
(絶対切断なのに切れてないじゃん!)
キリヤは心の中で叫ぶ。
ミカエルの方も《ジャッジメント・スピア》を防がれたことに驚いている。互いに決定打を与えれる攻撃をどうすれば、当てれるかを考える。更にキリヤ達は武器を何度も交差させる。
「溶けちまえぇぇぇ」
キリヤは毒蛇時代に多用していた強力な酸性の毒を放つ。『猛毒魔法』は魔力を毒に変換する能力であるその為に腕を相手に向けるだけで使えた。毒蛇時代は口を開かなくては使えない技だったが、使い勝手も良くなっている。
「我、放つは光の光線 《ホーリーレーザー》 」
光の光線が紫色の毒々しい魔力波を正面から打ち破る。勢い余り、ミカエルの張ってある結界に衝突する。無論、結界は健在である。
光の光線を放った隙にキリヤは分身を三体造るそして、分身体はミカエルの背後に回る。まぁミカエルも注意しているから分身の攻撃が当たるとは思えない、。しかし、狙いは攻撃では無い。『蜘蛛の糸』を使い、ミカエルの動きを阻害する事であった。それに、蜘蛛の糸にはもう一つの使い道もある。キリヤ達は蜘蛛の糸を結界内に放つ。その結果、10メートル程の大きさの檻の内側には大量の糸が張り付いてあった。
「この様な事をして……何を?」
ミカエルは途惑っているみたいだ。
キリヤ達は糸を身体変換でワイヤーに造り変え分身達と四方から引っ張っる。ミカエルの身体にワイヤーが何重にも絡まる様に糸は設置してあった。『罠師』のお蔭でどこに仕掛ければ良いのかも何となく理解出来たので、楽に出来た。
天使槍で糸を切られると困るから、新しく数体の分身を造り腕と槍を抑えに行かせる。
「クッ……卑怯ですよ。正々堂々と戦いなさい!」
ミカエルが俺を睨みつけてきた。
「卑怯? 知らないな。戦いに卑怯もクソもあってたまるか! 貴様の負けだよ諦めろ!」
キリヤは身体変換でボロボロになっていた大鎌を造り直す。そして、ミカエルに無慈悲に振るう。ミカエルを抑えていた分身もろとも、上半身を下半身とが真っ二つに割かれる。
「ゴッホ……無念で…す」
ミカエルは吐血しながら、倒れる。もう戦う事も無理と判断したキリヤはミカエルの上半身の方に喰らう為に近づく。勿論、警戒はしている。捕食者を発動し、キリヤはミカエルを喰らった。呆気なく、ミカエルの身体が光の粒子になって消える。そして、毎度お馴染みの声がミカエルを喰った証拠に頭に響きわたる。
キリヤは何とかミカエルと戦闘に勝利し、喰らう事に成功した。ミカエルを捕食した事でステータスが更新される。
ステータス
名前/霧咲霧夜(仮)
種族/上級魔人《ユニーク天魔人》
能力スキル
通常/『剛力』,『遠吠え』,『鎌鼬』,『蜘蛛の糸』,『罠師』,『飛翔』,『鑑定』,『盾術』,『アラーム』,『裁縫』,『暗算』,『杖術』,『槍術』,『話術』,
稀少/『風流操作』,『聖気』,『神聖術』,『鎌の担い手』,『水魔法』,『光魔法』,『火魔法』,『土魔法』
固有/『能力進化』,『癒しの光』
,『天賦の才・智』,『身体変換』,『猛毒魔法』,『天使武器』(new)
伝説/『神眼』,『闇夜之暗殺者』,『捕食者』
能力が増えただけではなく、種族が《ユニーク魔人》から《ユニーク天魔人》に変化してあった。原因は天使を喰ったからと考えられる。もし、そうだったんならば何故今まで他の生物を喰った時には変化しなかったのだろう。
考えても不明だから、思考を放棄した。
新しく手に入れた『天使武器』はミカエルがしていたみたいに武器を作れるみたいだな。ぶっちゃけ、『身体変換』で武器も作れるから要らない気もする。他の能力が増えなかったのは既に持っているからと推察される。
「さてと、無事に終わったし、洞窟に戻ってからエリス・バーミリオンの様子を見に行くかな」
キリヤは独り言を洩らしながら、洞窟に戻る。無事に洞窟に着いた。洞窟にたどり着くと、そのまま分身達に見張らせている二人の元に向かった。
教祖のオッサンはキリヤの姿を目にした瞬間に信じられないモノを見たように動転した。
「な、なな、んで!? お前がここに居るんだ!?」
キリヤは一歩近付く。
「言わないとわからないのか?」
キリヤの言葉を聞いたオッサンはミカエルを乏し始めた。
「何が、大天使だ! こんな小娘一人に敗れるとは情けないわぁ!」
「あ!? なら、てめぇならこんな小娘倒せるのか?」
今の発言にキリヤはイラつく。敵だったが、ソイツの強さは一番知っているつもりだった。それなのに、何も知らないような雑魚に言われたのが、許せなかったのだ。
「あっ! そうだ! 私と組まないか? 私と組めば、一国の主になる事も夢ではないぞ! 悪い話ではないだろ?」
一国の主って、微妙だな。世界征服が出来るとか言えないのだろうか。
「頭大丈夫か? 組むわけないだろ! お前みたいな三下と!」
オッサンは次第に焦り始める。顔には脂汗がダラダラと垂れ始める。
「私はこう見えても貴族だ! 金ならある! だから――――グガァァァァ!!」
五月蠅かったので、話途中だったけど、片腕を斬り落とす。
「五月蠅い! 黙らなければ、右腕も落とすぞ?」
キリヤの脅しが効いたのか、オッサンは静かになる。
「俺の質問に黙って、答えろ。いいな?」
オッサンはコクコクと頷く。
「素直でよろしい。最初の質問は何故、邪神を信仰していたお前達が天使であるミカエルを呼び出したんだ?」
腕を抑えたまま喋りそうになかったので、治療してやる事にした。
「彼の傷を癒せ 《ヒール》 これで喋れるな?喋らなければ、解っているんだろうな?」
止血だけはしてやった。腕を治すには高位な光魔法か神聖術を使わないと治せない。アリスの記憶のお蔭で治せるが、そこまでしてやる義理はないしな。
「サンガルア様は邪神ではない! 薄汚い人間を滅ぼしてくれる至高の神だ! それを何故、理解しないんだッ!?」
自身が信仰している神を邪神呼ばわりされたのが、気に入らなかったのか教祖は声を荒げて叫ぶ。キリヤは大鎌を持ち上げる。勿論、自分の状況を理解していない馬鹿に教える為にだ。
「あっ! 待ってくれ、いや、待って下さい。話しますから」
とりあえず、大鎌を降ろし話すのを待つキリヤ。
「……サンガルア様を召喚するには大量の魔力と生贄が要りますからね。その点、天使は憑代になる素質の高い者一人で事足ります。そして、天使が魔族や魔人を殺してくれれば、ソイツ等を生贄の足しになりますしね。魔人の魔核なんて高く売れますし、儀式に使用しても良いですからね 」
教祖は命が惜しいのか、素直に白状する。そのお蔭で合点がいった。大天使を召喚した理由に。
(成程な。納得したよ)
「そうか、よくわかったよ。つまり、サンガルアを呼び出すには生贄も魔力も足りないから天使を召喚してから、準備の手伝いをしてもらおうと。そーゆー事だな?」
キリヤは要約しオッサンに確認する。
「はい、その通りです」
その後にもいくつか質問をするが、どうでもいい事ばかりだった。もう聞くような事も残っていないから殺そうと考えていると、エリス・バーミリオンが目を覚ました。
「う、う~ん……はっ! アリス無事!? 」
エリスは目を覚ましたのと同時に周囲を確認し始めた。
「え、えっと、おはよう……で良いかな? 調子は大丈夫かな? どこまで覚えている?」
エリスは目をパチクリさせて、状況の把握に努めている。
ステータス
名前/霧咲霧夜(仮)
種族/上級魔人《ユニーク天魔人》
能力スキル
通常/『剛力』,『遠吠え』,『鎌鼬』,『蜘蛛の糸』,『罠師』,『飛翔』,『鑑定』,『盾術』,『アラーム』,『裁縫』,『暗算』,『杖術』,『槍術』,『話術』,
稀少/『風流操作』,『聖気』,『神聖術』,『鎌の担い手』,『水魔法』,『光魔法』,『火魔法』,『土魔法』
固有/『能力進化』,『癒しの光』
,『天賦の才・智』,『身体変換』,『猛毒魔法』,『天使武器』(new)
伝説/『神眼』,『闇夜之暗殺者』,『捕食者』