天使降臨。そして、ピンチ
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祭壇の輝きはより一層輝きを増す。突如、眩い閃光が周囲を襲った。次第に閃光が収まるり、祭壇に視線を向けるとアリスによく似た女の子が宙に浮いていた。浮遊状態とでも言うのだろうか。
腰まであるストレートの金髪の長髪。深い海の色のような蒼い瞳。瞼には、天然の薄紫のアイシャドウ。透けるようなという形容詞がぴたり合う白い肌。紅べにも塗ってないのに、濃い赤色の唇。華やかで艶あでやかな、艶美な美貌。顔は非常に整った造形で、見る者を魅了させる。身長はアリスと同じぐらいの160センチ程だろう。そんな美少女には人間とは一つだけ異なる部分が存在した。翼である。背中に天使の翼と表現する様な純白な翼が存在したのだ。
「我が名はミカエル。大天使なり。我に肉体を与え、呼び出したのは貴様か?」
大天使と名乗るミカエルは教祖のオッサンに指を向け訊ねる。
「ははぁ、私が使徒の身体を用意して貴女様を呼び出させて頂きました」
オッサンはミカエルに平伏する。
(あれ? こいつらって邪神を降臨させようとしてたんじゃなかっけ?)
キリヤはふと、疑問を思う。
「そうか、褒めてつかわす。この身体は非常に居心地が良くて存分に力を使える。これで、邪悪なる者を浄化する事に支障は出ないでしょう」
大天使ミカエルは突然に動き出す。キリヤに攻撃を放つ為に。
「消えなさい 《聖槍》 」
ミカエルから放たれた光の槍はキリヤの横腹に直撃して容易く貫通するだけの威力を秘めていた。しかも、威力だけでなくて速度も驚異的であった。キリヤは不意打ちといえど、反応が出来ずに直撃したのだから。
「えっ!?……マジかよ」
(イテェ! すげー痛い。そして、万事休すか……)
傷口が炎で焼かれているかの様な熱さに襲われた影響で地面に膝を着き、傷口を手で抑える。
「邪悪なる魔の者よ、彼方はそこで消えなさい」
ミカエルは冷淡と言葉を言い放つ。その口調には相手を想う感情なんて存在しない。それ程に冷酷。ミカエルはキリヤを殺すことに何も感じない様に無表情である。淡々と作業をこなすかの様だ。
「おいおい、嘘だろ……強すぎかよ。まぁタダで殺されるつもりはないけどな。炎よ、敵を焼き尽くせ 《ヴォルケーノ》 」
キリヤは片膝を地面に着けている状況で火魔法のヴォルケーノを放つ。他の魔法は魔法名を覚えていないから使えない。必然的にこの魔法しか使えない。
ミカエルとの距離は五メートル程。その僅かな距離から膨大な量の炎がミカエルに放たれる。ついでに言えば、邪教徒の教祖にも。
炎が途絶えた後にキリヤは絶句する事になる。
「まさか、無傷かよ……」
ミカエルを包む形で神々しい光が球体が球体を形作っていた。その球体はミカエルを包み込むようにして身を完全に守っていた。この光の球体は灼熱地獄の様な高温の炎に包まれても中の者を守護するだけの能力を有していた。その光の恩恵で教祖すらも無事であった。
「その程度の魔法で我に攻撃を加えると本気で思っていたのですか? 愚かですね」
ミカエルはキリヤの攻撃に対して何も想わない。脅威と感じる事もない攻撃。キリヤは身体変化を用いる事で万全な状態の身体を創り直す。そのお陰で横腹に受けた傷も完全に消える。そして、その後に大鎌を作成する。
「魔法を防げても、これならどうだっ!」
作成し終えると同時に大鎌を勢いよく一閃。
――――――ガキィイィン!
金属を斬り付けたかのような衝撃がキリヤの手に大鎌を通して響く。
「クソッ! 物理攻撃も通じないのか!?」
キリヤの表情には焦りが視えていた。実力も相手の方が確実に上で攻撃まで通じないからだ。このままだと、殺されるのも時間の問題だとキリヤ自身気付いていた。それ程までの実力差が二人の前には存在している。
「観念して浄化されなさい。それが神の意思です」
「……見逃してくれないか?」
キリヤは無駄だと悟りながらも命乞いを試す。
(ここで見逃してくれれば、楽なんだけどな……)
無言で応えるミカエル。勿論、ミカエルは逃がす気が無いと言うのを代弁しているかのようにミカエルの周囲の光が輝きを増す。
分かり切っていた結果の為に落胆もせずに策を考える。そして、効くとは思えないが毒を散布する。毒が効き始めるまでの時間稼ぎでキリヤはミカエルに話し掛ける。
「お前の目的は何なんだ? 俺を殺した後はどうするんだ?」
ミカエルは少し考える素振りを見せてから答える。
「そうですね、邪悪な者を浄化して回り世界を救いましょう。神の御心のままに」
(浄化って何だよ! 殺すの間違いだろうが!)
ここで怒鳴るようなミスは犯さない。
「それは、別に構わない。しかし、お前が使っている身体は持ち主に返せよ」
ミカエルは意味が理解出来ない風に首を傾げる。
「何故? そのような事をしなくては、いけないのですか?」
「その身体の持ち主だって自由に生きる権利があるんだ。それを蔑ろにするのか?」
「神の為にその身を犠牲に出来るなんて幸せ者ですね」
話が噛み合わない。そして、毒の効果が表れる事も勿論ない。
「貴方はここで死んでもらいます。世界平和の為に」
「はい、そうですかって訳にもいかないからな」
キリヤは全力で洞窟の外に向けて飛び出す。
「アリス、逃げるぞ」
撤退の途中にアリスを抱き抱える。地面を思いっきり踏みしめ、洞窟の外に飛び出す。そして、洞窟の外に出ると森林に逃げ込み、木々の木陰に隠れる。完全に逃げの一手である。
「アリス、ごめん……お姉さんを助けられなかった」
「仕方……ないですよ。まさか、儀式が成功するなんて、私も考えていませんでしたし」
この洞窟にはミカエルと教祖の二人しか残って居ない。
「ミカエル様、奴を逃がしてもよろしいのでしょうか?」
キリヤ達が洞窟から逃げ出したのを呑気に見ていたミカエルに教祖は訊ねる。
「構いませんよ。どうせ、運命からは逃げられはしません」
ミカエルは背中から純白の翼を広げる。そして、キリヤ達を追う。正確にはキリヤだけであるが。
大天使ミカエルから逃げ出すことに成功したキリヤ達は近くの森林に隠れている。キリヤは索敵の方向を洞窟の方角に限定する。普通に発動すれば、キリヤ自身を中心に半径100メートル程の範囲だけど、一方向に 限定すれば何倍もの距離まで索敵が届く様になっている。
「このまま隠れてからやり過ごそう」
キリヤはアリスに小声で話し掛ける。
「わかりました」
洞窟からミカエルが出てくる。それだけで、キリヤの場所まで圧力が加わってくるみたいだ。
「奴が出てきた。注意してくれ」
天使として本能なのか、ミカエルはキリヤ達の居場所が分かるかの様にキリヤ達の上空に位置する場所に留まる。
「この近くに居るのは、分かっています。そろそろ、出てきたらどうですか?」
『隠密』系の能力をフル活用していいてもミカエルには通じない。勿論、完全に通じていない訳ではない。それでも、ほとんどの位置を把握されていれば、意味も無いだろう。それ程までに実力に差があるのだろう。
「アリスって結界みたいなの張れる?」
「はい。張れますけど、大天使の攻撃を防ぐようなのは出来ませんよ」
その言葉を聞いてキリヤは胸を撫で下ろす。
(これなら、俺が死んでもアリスだけなら助かるかな? 魔物に襲われても何とか逃げれるだろう)
人の心配よりも自分の心配をしなくては、今回はヤバいそうであるが、キリヤはアリスの事が気掛かりだった。これなら、いざとなれば、自分だけで逃げる事も算段にいれてある。
「出てきませんね。なら、仕方ありません! ここら一帯ごと消すまでです!」
ミカエルは両手を真上に向けてから詠唱に入った。
「アリスは結界で自分を守っておけ。俺が戻らなかったら、何とか生きてくれ」
キリヤはアリスに言葉を残すと返事も聞かずにミカエルの方に飛び出す。アリスが何かを言おうとしていたが、気にしない。
「待てよ! 環境破壊になるから大技は止めろよ」
ミカエルの手の上には直径5メートルはある光球が出来ていたが、それを一瞬で槍の形に変更する。近接戦闘用と推測される。
「あら? 出てきましたの。てっきり、隠れておくのかと思ってました」
(本当はそうしときたいんだけどな)
「炎よ、敵を焼き尽くせ 《ヴォルケーノ》 」
「光よ、我が身を守れ 《ホーリーシールド》 」
ミカエルに大量の炎が押し寄せるが、ミカエルは光の壁で容易く防ぐが、炎が目隠しになっている。その状態で急加速を発動して一瞬でミカエルに肉薄する。不意打ち気味に身体変化で作成した大鎌を振るう……が、それさえもミカエルは光で作った槍で大鎌を防御する。
「まさか、これで終わりですか?」
「そんな、ワケねーだろ!」
槍と鎌で鍔是り合いになる。この時に風流操作で風の刃をミカエルの背後に発生させて、背後からミカエルに風の刃が牙を剝く。
その攻撃がミカエルに当たる寸前でミカエルの背後に光の壁が出現してから風の刃を防ぐ。あと僅かのところで攻撃を防がれるが、ミカエルの余裕の表情を少しだけだが崩す事に成功したのだった。
「……小賢しいですね」
「自分より強者と闘うなら、当然だろ?」
簡単な挑発を織り交ぜながらもキリヤは思考を重ねる。
(素早さは相手の方が少し速いが『急加速』を使えば、俺のが上だな。それと力も俺が勝っている)
簡易的に相違の性能を見比べ、憶測する。ミカエルは素早さに補正を与える能力を持っている可能性が高い。天使としての種族の恩恵も含まれる。そして、両者の純粋な性能の差にキリヤは嘆く。
(俺にも俊敏等の素早さに補正がある能力を所持しているのに素早さで勝てないなんて……チートかよ)
ミカエルの槍が連続にキリヤの眼前に迫る。その連続で放たれる刺突を大鎌の柄で弾き、時には受け止めて防御するが、長くは続かない。武器の方が耐えられなかったのだ。大鎌が欠損したと同時に急加速で素早く後方に離脱するが、右肩に鋭い刺突を受ける。
「さっきから思っていたが、お前の攻撃は普通じゃないだろ? 何故か、傷以上にダメージがある……それは、お前が纏っている聖気の影響だろ?」
右肩に受けた傷を修復させながら新たな大鎌を新調させたキリヤは訊ねる。
「無知な貴女の質問に応じてあげます。貴女の言った通りですよ。聖気は魔の者に有効ですので」
ミカエルは余裕の表情で応える。その返答を聞いたキリヤはニヤリと笑みを零す。自身の推測通りだと。
「そうか、良い事を教えてくれて感謝する。お礼に良いものを見せてやる」
最初にキリヤは『聖気』とは魔力による身体強化の上位互換だと考えていた。だが、先ほどにその違いに気付いた。故に、自身も聖気を纏う。聖気は魔に属する者の弱点らしいが、自身の聖気では影響が出ない。これで直接的にミカエルからの攻撃を抑える事に繋がると考えたからだ。
「なっ!? な、何故……魔の者のくせにが聖気を扱えるのですか!?」
ミカエルは信じられないモノを見た表情をする。さすがのミカエルもこの事には驚愕を隠せない。
「さぁな、俺ってば魔の者じゃ無いんじゃないのか?」
「……どんな小細工をしたのですか? 貴方が魔の者なのはわかっていますよ。聖なる槍よ、敵を穿て 《シャイニング・ジャベリン》 」
ミカエルから放たれた光の槍を聖気を纏いし大鎌で受け止める。武器は破壊される事はないが、踏ん張りが利かずに数メートル程押し飛ばされる。
「次はこっちの番な! 聖なる槍よ、敵を穿て 《シャイニング・ジャベリン》 」
ミカエルが何秒か前に放ったのと、全く同じ魔法をキリヤも放つ。
(思った通り光魔法と神聖術を持っているからデキると思っていたのだ。ミカエルが使っているのが違う能力だったら無理だったんだろうが……)
魔に属する者が光系統の能力を使用した事で一瞬、動揺を見せるが問題なく防御系の魔法を発動させるミカエル。
「光よ、我が身を守れ 《ホーリーシールド》 」
光で出来た正方形の盾に拒まれて光の槍がミカエルに届く事はなかった。
(この防御系魔法も光魔法かな? 使える魔法が増えていくから闘いの選択肢も増えて、有利になるはずだ)
「貴方は光魔法が使えるみたいですね……珍しいですけど、容赦はしません! そして、本気で行きます。我がミカエルの名の元に顕現せよ、天使槍 」
ミカエルの手元に神々しい光を発している槍が具現化される。
(見る感じ、ヤバそうじゃね?)
冷静に様子見に移るキリヤ。そして、互いに武器を構える。
ミカエルが天使槍と言っている武器はヤバいっと、本能が囁きかけてくる。キリヤは自身の第六感辺りが危険だと警報を鳴らしている気がする。実際は能力の『直感』があの槍は危険だと教えているに過ぎない。
「貴方は私に天使武器を使わせた事を誇っていいですよ」
「そんなんで誇れる程のもんかねぇ」
キリヤも実際はヤバい代物だと分かっているが、軽口を叩く。ここで焦りを見せるのは得策ではないからだ。
「その身をもって判らせてあげますよ」
ミカエルは天使槍で真正面から刺突を放つ。
「そんな、単純の攻撃が通ると思うなよ」
キリヤは大鎌を振るって迎撃したが、キリヤの大鎌は柄の部分を一撃で切り落とされ、柄の半分より先が滑らかな切断面を残して地に落ちる。
(聖気を纏っていたのに、最初と同じで接近戦も不利だな)
「貴方にもう勝機はありません。そして、この一撃で終わらせてあげます。この槍は、罪を裁く聖なる槍 《ジャッジメント・スピア》 」
ミカエルの持つ槍が青白く輝き始める。直感で悟る。この攻撃は危険だと。
「光よ、我が身を守れ 《ホーリーシールド》 」
光魔法で自身の前に光の盾を張り、全身と大鎌に聖気を纏う。槍が真っ直ぐに飛来する。キリヤの光魔法の存在を無視するかのように貫通して聖気を纏った大鎌とキリヤの身体を容易に貫いてみせる。
「グッハ!」
防御を呆気なく破られ、直撃を受けたキリヤは錐揉み上に墜落する。
(ヤバい。地面への衝突は避けないと……)
墜落中のキリヤは咄嗟に森の木々に蜘蛛の糸を張り、即席のネットを作成する。ネットのお陰で即死級の衝撃を和らぐ事ができた。それでも、地面への衝突は避けられないが。衝突のダメージが大きくて上手く能力を発動できない状態に陥る。
上空では満足げにミカエルが眺めている。キリヤは自分の身体に視線を戻す。そこには、全身を鮮血で汚した己の身体が存在した。頭部からは大量の流血が見られ、銀の髪は深紅の赤色に変わっている。まるで、赤い頭巾を被っている様にも見受けられる。そして、自身の鳩尾付近には深々と突き刺さっている神々しい光の槍が確認できる。まぎれもなく、先ほどのミカエルの一撃である。
(早く身体変化で傷を消さないと……あれ?)
いつもの様に傷を治そうと身体変化の能力を発動させようと魔力を込めるが、直ちに身体から魔力が霧散していく。徐々にでは表せれない速度で魔力が抜けていく感覚に陥る。絶望的な状況にいると、ミカエルが「ふわり」と言った擬音が出そうな感じに舞い降りる。
「おや、まだ生きていましたか? 《ジャッジメント・スピア》を受けた者は徐々に魔力を失い、生命活動を停止されます。貴方は楽に死ねませんよ」
声も満足に出せないキリヤ。
(思い返せば、昔から妙なところお人好しだったんだよな。異世界に転生してもすぐに死ぬなんてな……
やっぱり、自分はは主人公ってガラじゃなかったな……)
「キリヤさん! ご無事ですか!?」
薄れゆく視界の中にアリスが駆け寄ってくるのを最後にキリヤは視界が闇に沈んだ。
「彼の傷を癒せ 《ヒール》 」
キリヤの傍らで必死に回復魔法を連発するアリスにミカエルが詰問する。
「貴女、何をしてるのかしら?」
既に何度目かも分からない魔法の行使をするアリス。
「……まぁいいでしょう。どうせ、無駄な事ですし」
一心不乱に魔法を酷使するアリスを尻目にミカエルは飛び立つ。
「キリヤさん、今、助けますね」
深呼吸し、全神経を集中させるアリス。
「固有能力『癒しの光』発動!」
神秘的な光がアリスの手に集まり出す。徐々にその光りは輝きを強める。その光の正体はアリスの保有する固有能力である『癒しの光』であった。その回復の光がキリヤの傷口を照らし始める。しばしの時を経て、キリヤの意識が戻る。
意識が戻ったっと言っても、危篤状態である事には変わりがなかった。それでも、意識が戻るまでの効果を見せても、それ以上に回復することはない。延命しているだけであった。アリスが『癒しの光』の発動を止めれば、キリヤはすぐにでも死んでしまう状態であった。それほどまでに《ジャッジメント・スピア》の後遺症は凄まじいのだ。
「固有能力を使っても治癒出来ないなんて……仕方ありません。キリヤさんの弱肉強食で私を吸収して下さい。私の力を手に入れたら、ミカエルから姉さんを取り戻してくださいね」
キリヤは驚愕している。それをしたらアリスは死んでしまうからだ。理由は不明だが、アリスは『弱肉強食』の事を知っている。しかも、効果の詳細までもだ。キリヤの理解が追いついていない。
「それを実行すれば、アリスは死ぬぞ? てか、何で俺の能力知ってんだ? 説明なんてしてないはずだぞ」
アリスは苦笑いしながら応じる。
「私の能力の「神眼』って相手のステータスも見れるんですよね。【伝説】級の隠蔽系統の能力がないと防げれないと思いますよ」
(相変わらず『神眼』の能力は凄いな)
「俺がアリスの力を吸収するだけしてから、逃げたらどうすんだ?」
神妙な顔でアリスの瞳を覗き込みながらキリヤは訊ねる。