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進化。そして、自己紹介

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 楽園と呼ぶに相応しい花畑の中心部は血の海が広がっている。誰の血かは、言わなくても理解できるだろう。それだけ、強烈な攻撃だった。


 現在、キリヤは蟷螂の姿で、ピンピンしているが、次も助かるという保証はどこにもない。その為に、下手な行動が執れないキリヤは物陰に隠れて様子見に徹するしか出来ない状態だ。

 キリヤが隠れて様子を伺っている精霊ちょうには見つからない為に能力スキルの『隠密』や『擬態』に『隠形』と稀少レアの『潜む者』と『隠れる者』を駆使して全力で隠れる。能力スキルのフル活用だ。そのお蔭で精霊ちょうには見つからずに済んでいる。


 先程の攻撃で決着が着いたと思い、気を抜いている精霊ちょうにキリヤは復讐を決意。元々、喰うつもりだったが。つまり、精霊ちょうの油断に付け込んで背後をを取り、喰らう。簡単な事である。


『我の聖域サンクチャリを血で汚すとは、邪悪なる者は死しても、我の邪魔をしおってからに』

 蝶の精霊が頭上で独り言をブツブツと言っている。蝶の精霊が翅を羽ばたかせて風でキリヤの毒蛇形態の死体を風で吹き飛ばす。



 精霊ちょうが風の操作に集中してる隙にキリヤは背後にに回り込む。そして、腕に付いている鎌を振るう―――――結果は容易く、精霊ちょうの方翅を切り落とす。


『なっ!? 貴様何者だ? さっきの毒蛇の仲間か……油断した』

 精霊は飛べずに地面を這いつくばる。片方のはねだけでは、自由に飛ぶ事も出来ない。トドメを刺す事も容易であるが、キリヤは油断しなかった。


精霊ヤツは強い。正々堂々と戦えば、敗けてたのは俺だった事は確実だっただろう。その為、ここで確実に息の根を止める)


 キリヤは思案通りにすぐに次の行動に出る。頭上から地面に向けて急降下する。無論、ここで地面に激突する様なミスはない。精霊ちょうも悪あがきで風の刃を放ってくるが、ダメージと方翅かたはねが欠損している所為で先程までの威力が出せない。その為にキリヤは容易く攻撃を避け、肉薄する。近づく事に成功すると、鎌で精霊ちょうの身体を貫き、絶命させる。


 動かなくなったせいれい蟷螂キリヤが持ち上げて喰らう。この光景だけでは蟷螂が蝶を喰らっている自然の摂理で片付くが、ユニークモンスターが精霊を喰らった瞬間であった。精霊の身体が魔力の粒子となってキリヤの身体に吸収される。


能力スキル『飛翔』,『急加速』を取得しました》

稀少能力レアスキル『風流操作』,『聖気』を取得しました》

《種族???が『下級魔人』に進化しました』


 不思議な声の『下級魔人に進化しました』と不思議な声が響いたのと同時に身体が光り始める。急に身体が熱くなるのを感じる。それは、細胞が尋常では考えれない程に活発に働きだす副作用であった。そして、自身の身体を造っているのだと、自分でも理解する。そして、その働きはあまりにも迅速に収束に向けて動き出す。自身を覆っていた光や細胞の異常な動きが徐々に治まり始めた。


 そして、進化の影響は時間にして数分で終了した。


 光が治まるのと同時にキリヤは咄嗟に自分の身体に異変が無いか確認する。既に熱も収まり、体長も良好であった。しかし、異変・・が起こっていた。だが、悪い事ではない。なんと、念願の人型になれたのだ。大きさは小さいままで約20センチと小人よりも小さいレベルだが、蟷螂から大きく進歩したのだ。


 自身の身体を詳しく観察すると、背中には半透明な羽が出現していた。驚愕する事に生えているのではなく、背中付近から出現しているのだ。身体には付いていないが自在に操作できるという不思議仕様であった。妖精の羽という表現が一番しっくりくるだろう。


(下級魔人なのに見た目が妖精ってどうよ? ありなのか?)


 キリヤはとりあえず、進化したステータスを確認してみる。


 ステータス

 名前/霧咲霧夜(仮)

 種族/下級魔人《ユニーク魔人》

 能力スキル

 通常ノーマル/『隠密』,『気配察知』,『不意打ち』,『飛行』,『俊敏』,『擬態』,『剛力』,『忍び足』,『遠吠え』,『麻痺耐性』,『毒耐性』,『熱察知』,『幻覚耐性』,『魔力隠蔽』,『超音波』,『嗅覚』,『隠形』,『幻術』,『索敵』,『鎌鼬かまいたち』,『分裂』,『吸収』,『形状変化』,『身体変化』,『逃げ足』,『蜘蛛の糸』,『罠師』,『跳躍』,『飛翔』,『急加速』

 稀少レア/『喰らう者』,『切り裂く者』,『麻痺を操る者』,『毒を操る者』,『食物連鎖』,『潜む者』,『隠れる者』,『刈り取る者』,『風流操作』,『聖気』

 固有ユニーク/『弱肉強食』,『能力進化スキルアップ

 


 姿以外に種族にも変化がみられる。《???》から《ユニーク魔人》に変化したみたいだ。 せっかく人型に成れたし、顔も確認したいと思うが、残念ながら、鏡なんて物はこんな森林には在りはしない。


 自分の身体をペタペタと触診する。そして、自分の容姿を出来る限り確認する。 

  髪は銀髪で腰ぐらいまである長髪で髪質はサラサラだったが、一部だけが重力に逆らうが如くカールを描いていた。その一部とは頭の頂の辺りから生えている一束ほどのアホ毛だった。

 手足は少し細いが、それぐらいは許容範囲と我慢した。服装はよくわからないが、黒の衣を羽織っている。その黒の衣の上から半透明の妖精みたいな羽が存在している。


(どうせならイケメンになってると嬉しいな)

 この時のキリヤは浮かれていた。まだ、見ぬ自分の容姿に期待しながら―――――後に絶望が待っているとも知らずに。


 キリヤは妖精状態でさらに東に向かって飛ぶ。時速は百キロ程は出ていると思われる。本気を出せば、もっと速度も上がるだろう。まだ飛行にも慣れてないから現状はこのくらいの速度で十分と考え、速度は上げない。飛行を再開して、割と時間が経つが一向に生物に出会わない。上空でこの速度に追いつける奴は僅かだから当然と勝手に解釈する。


 更にどれくらい時間がたったのだろうか。少なくても数刻は経過したと思われる。それ程は飛行したと自負してある。そんな時に地上に馬車らしきものを発見した。しかも複数ある。それを目撃したキリヤは地面に急降下する。そして、地上に降り立った。正確には少し浮いてあるが。


 隠密状態で馬車に近付くキリヤ。そして、草陰でこっそりと様子を伺う。馬車の傍には複数の人間が居る。全員が男性であった。身なりは、あまりヨロシクなさそうである。だが、もしかしたら、この世界ではこれが基準の可能性すらもある為に見た目では判別できない。見た目が山賊っぽいので、注意が必要とキリヤは内心警戒する。


(おおぉぉぉ!! 遂に人間に会えたぞ)


 キリヤは一種の感動に近い想いが込み上がる。だが、ここでいきなり飛び出す真似はしない。先ずは情報収集が大事である。万が一な事が起きると困るからだ。本来ならすぐにでも飛び出したい衝動を堪える。そこに人間たちの会話が聞こえてくる。


「こんなにも簡単に作戦が上手くいくとはな」

「だな。聖女・・使徒・・を捉える事に成功するなんてな」

「最初に教会・・の手の者に仕事を任された時は驚いたけどな」

「これで当分は遊んで暮らせるぜ」

「仕事が終わったら一杯しようぜ」

「当然だ」


 精霊もそうだったが、日本語で話をしている。

(自動翻訳でもされているのか?)

 考えても、答えは出ないので考えるのを放棄する。そして、キリヤは男達の会話を盗み聞きしていて気になるワードが聞こえてきた。聖女・・使徒・・だ。この二つの存在が重要と考える。そして、この男達は人攫いの疑惑も浮上する。情報が少なく過ぎて、分からないことも多く悩む。馬車の数を見るだけで分かるが、馬車を見張っている奴ら以外の人間も居るはずだ。


 キリヤは周囲を索敵する。近くに百人規模の集団が存在する事が判明。集団の居る方に移動してみる事にしたキリヤは、巨大な洞窟を発見する。その洞窟の入り口には当然の様に見張りが立っている。


 キリヤは見張りに気付かれないようにコッソリと侵入する。天井付近を飛行しているので、基本的には見つからないだろう。キリヤの読み通り、アッサリと侵入は成功する。


 洞窟の中は二本道に分かれていた。キリヤは蝙蝠と毒蛇から入手した熱感知と超音波を使い、中の構造を調べる。索敵の結果で大体は判っていたが。

 右に行くと、大きな広間があってから百人程の人間が存在しているのが分かる。

 左側は小さな部屋―――――牢屋みたいに鉄格子がしてあるだけだ。そこには一人だけ居た。捕まっている聖女か使徒と思われる。



 とりあえず、牢屋っぽい場所に向かう。もちろん、まずは様子見だ。


「誰かいるの?」

 鉄格子の向こうから声を掛けられた。キリヤの隠密状態を見破ったのか牢屋に幽閉されていた人物が岩の後ろで隠れていたキリヤに声を掛ける。『出るべきか? 出ないべきか?』と葛藤していたキリヤは決断を下す。

 隠密を解除してから姿を現す。


「えっ!? 妖精フェアリーが何故にこんな場所に……いえ、妖精フェアリーではありませんね?」

 確かにキリヤは妖精フェアリーではない。ユニーク魔人に分類されている。


(何故、隠密を使用していた俺の場所がわかったんだろうか?)


「確かに俺は妖精フェアリーじゃないぜ」

 この時初めてキリヤは捉えられている人物の姿を目撃した。


 透き通るような銀髪プラチナ・ブロンド。目鼻立ちのすっきりした整った 顔立ち。やや釣り気味ながらも大きなまなこ

 碧色エメラルドグリーンの光彩をたたえた瞳。淡桃色の柔らかそうな唇。少しキリッとした目、少し高めの鼻、桜色の程よい大きさの唇、銀髪を腰のあたりまで延ばしている。そして胸も年齢の割にはある思われる体型をしている。


(壮絶な美少女だ。地球ではありえないだろう)


 少女が不思議そうにこちらを見つめている。そして、一言発する。この言葉がキリヤに多大なショックを与える事になるとは、この時の彼女は想像もしていなかったのだろう。


「凄く可愛らしい方ですね。女性が俺だなんて、一人称は宜しくありませんよ」

 キリヤは一瞬、固まる。意味を理解出来なかったからだ。

(えっ!? 今、何て言った?……女性だと? アハハハハ! そんな馬鹿な事があるわけないだろう)


「俺が女性に見えるか?」

 キリヤは少女に質問する。

「はい。凄く可愛い女の子です」

 少女はキリヤを真っ直ぐ見つめてきっぱりと言う。


(こいつは幻覚にでも掛かっているのだろう。それか、捕まったショックで精神が崩壊したのだろうか?)

 キリヤは嫌な冷や汗が身体中から流れている様な気がした。少し、確認するのが怖くなってしまったのだ。


「……えっと、鏡とかある?」

 キリヤは動揺しながら訊ねる。

「手鏡なら私の荷物の中にありますよ。そこに置いてあるのでお使い下さい」

 少女の指が牢屋の隅を指していた。そこには小さな鞄が置いてあった。鞄から鏡を取り出す為にキリヤは牢屋に入る。鉄格子の隙間から何事も無い様に侵入する。


 鞄の中には荷物が少なかったので、すぐに見つかる。そして、キリヤは鏡を覗き込んだ。

 鏡の中には可憐。さながら彫刻のような均整のとれた美貌。腰の長さまである銀髪。緋色の様なあか金色こんじきと表すような金色の瞳だ。所謂いわゆるオッドアイだ。

 透き通るような白い肌。胸を含めてスレンダーな体型をした人というよりも妖精に近しい彼女の細い身体には、黒い、ゆったりとした衣をまとっている美少女が居る。


「……」

 現実を受け入れれずにプルプルと身体を震え上がらせるキリヤ。その度に彼女キリヤのトレードマークの様に存在しているアホ毛も左右に揺れる。

(……マジで!? 落ち着け。確かに身体が少し華奢だと思ったが。身体が小さいから気のせいだと思っていたのに)


 キリヤは鏡を見てから数分間はショックで何も出来なかったが、少しして少女の方からが声をかけてきた。


「あの、大丈夫ですか? 顔色が悪い様な気がします。そして、この場所は危険ですので、早く逃げた方が良いと思われますが」

 少女は純粋にキリヤの身を案じていた。

「う、うん……大丈夫かな。それより、君はここで何してんの?」

 キリヤは動揺を悟られないように平然装いながら質問する。

「実は……私、聖女なんです。それで邪神を崇拝する組織に双子の姉と一緒に囚われてしまったんです。ちなみに姉は使徒です」


 面倒な事になってるーーーー!! 関わる方が良いのだろうか。キリヤは考える。キリヤの脳内には二つの選択肢が表示されていた。

・助ける

・見捨てる


 とりあえず、助ける事にした。この世界の事を聞かないといけないしな。


「ここから出たいか?」

 キリヤは少女に問いかける。少女は一瞬、キョトンとしたが、すぐに首を横に振った。

「私はいいので、姉を助けて下さい」


(自分より姉を優先するのか、良い子だな)


「わかった。君のお姉さんを助けるよ。代わりに――――」

 少し、沈黙をつくり、続きの言葉をキリヤは発した。

「――――この世界の事を教えてほしい」

 これは賭けであった。こんな事を言う奴は正常か疑われそうだからだ。

 

 少女が不思議そうにキリヤの方を見る。そこで、少女と視線が合ってしまった。


(気まずい……絶対、変人だと思われた。記憶喪失って言っておけば良かったカモ)


「えっと、人間の街に行きたいんですか?」

「……」

 キリヤは沈黙する。暫し、考える。

(えっ!? なんの話だ? もしかして、この森の外について聞いたと思っているのか?よし! 自己紹介のついでに白状しよう! もし、異世界人や魔人が嫌われていたら、魔王でも目指そうかな)


「急に変な事を言ってごめん。自己紹介がまだだったから、自己紹介をするね。俺の名前は霧夜キリヤだ。魔人だが、前世の記憶を保持している元人間・・・だ。君に危害を加えないと約束しよう」

  少女はまたしてもキョトンと少ししたが、気にした様子もなく、自己紹介を始める。


「私はアリス。アリス・バーミリオンです」

 あれ? 魔人って普通に大丈夫なのか? キリヤが不思議に思っていると、少女――――いや、アリスが俺の疑問を察したのか、説明をしてくれた。


「不思議そうにしていますね。キリヤさんが思っている通り、普通なら魔人と聞けば恐怖や畏怖の念を抱きます。それでも、キリヤさんは私の事を純粋に心配してくれました。それに、自分から魔人だと名乗る事も悪さをしようと思っている魔人ならしません……っていうか、キリヤさんがユニーク魔人だって気づいてましたし」


 アリスは少しだけ、申し訳無さそうに答えてくれた。


(俺は魔人としか言っていないのに。ユニーク魔人って何故知っているんだ!? ただのハッタリにしては鋭いし)


「俺が魔人だと気づいていたのに、助けも呼ばずに呑気にお喋りをしていたって言うのか?」

「はい。最初に見たときは妖精フェアリーだと思いましたけど、私の能力スキルで魔人だと判りました」


 便利な能力スキルだな。欲しいけど、人間は敵対した奴以外は喰いたくないからな。敵対した奴でも嫌だけどね。


「そうか。何故、魔人だと気づいた時に助けを呼ばなかったのか?」

「私は死んでも気にしませんし。でも、死にたい訳ではないんですよ? それに姉を助けてくれる可能性が少しでもあるじゃないですか。本当は、自分で助けたいんですけど……人数も多いし、私の能力スキルは封じられているんです」


 アリスは聖女・・と呼ばれている程の者なのに。能力スキルを封じるだと……そんな事も出来るのか。

「アリスは能力スキルを封じられているのに俺の正体を見破ったのか?

それと、能力スキルを封じられているとは、どうゆう事なんだ? 」


「私の能力スキルの一つに伝説レジェンド能力スキルの『神眼ゴッド・アイ』があります。【伝説レジェンド】級の能力スキルを『魔封じの首輪』では完全に封じる事は出来ません」


 伝説レジェンド級は固有ユニークより上位の能力スキルとキリヤは判断する。





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