オクゾールVSハプドヴァース
第2回ライト文芸新人賞に応募する為に改稿等の作業をする予定ですので、次回の更新は未定です。
それと、『異世界でフラグ回収しています!』の改稿版を4/1から投稿するので、良かったら見て下さい。
活動報告を書いておくので、それも見て頂ければ恐縮です。
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キリヤはオクドー相手に『捕食者』で魔力を喰う練習も既に十分と、判断すると、オクドーを『猛毒魔法』で昏倒させた。そして、すぐにハピネヴェース達を追う為にハーピィ達の巣に向かう。
これは、キリヤがオクドーの相手をしていた時の事である。
「ハピネスは仲間を連れてこの森から離れるんだ。別の棲家を見つけろ」
自分たちの棲家に急いで向かっている最中にハプドヴァースは妹であるハピネヴェースに指示を出す。
「お兄様はどうなさるおつもりですか?」
ハピネヴェースは兄貴であるハプドヴァースの方に視線を向けて尋ねた。
「オレは奴等を引き留める。そのうちにお前達は行くんだ」
「そ、そんな! 無理です、お兄様もご一緒に逃げましょう」
「案ずるな、タダではくたばらんさ。それに、策もある。もしかすれば、豚共に引導を渡してやれるかもしらん」
ハプドヴァースの言葉を信じているが、悲痛な表情でハピネヴェースは頷いた。
「同族の事は任せたぞ」とそれだけを伝えると、ハプドヴァースは急遽、進路を変更した。その先には多くのオークを引き連れているオクゾールの姿が見える。
ハピネヴェースも兄貴の事を信じ、一人で棲家の方に戻った。
「この辺がハーピィ達の巣の筈だが、一匹も姿を見せないとは」
周りのオークに比べて何倍も大きいオークの言葉に部下のオーク達も言葉を返す。
「もしや、逃げ出したのかもしれませんぞ」
「臆病な奴等ですな」
「ボス、どうするんで?」
ボスと呼ばれた何倍も大きいオークは答える。
「ハプドヴァースが戻ってきていない状態でこの森から離れるとは考えられんから、森の奥の方に隠れているのだろう。探し出すぞ 」
オーク達はハーピィの匂いを嗅いで探し始めた。オークの種族は基本的に鼻が利くのだ。オーク達がハーピィを探していると、突然に強風がオーク達に襲い掛かる。
「狼狽えるな! お前等はそのまま奴等を探せ。ここは儂が引き受ける。オクマル、全体の指揮はお前が執れ。奴は儂が倒そう」
オクゾールは部下に先に行かせた。部下の指揮をオクマルという魔人に任せて。
「おい! ここはオレ等のテリトリーだぞ。テメェ等、タダで済むと思ってんのか? アァン?」
ハプドヴァースは怒気を含んである声で威圧する。その威圧でレベルの低いオーク共は怯みだすが。
「まだ、生きておったか。死にぞこない風情が図に乗るなよ」
オクゾールの言葉で怯えていたオーク共の士気も回復した。
「もう、油断はしねぇぞ。アンタら豚に空を自由に飛ぶオレを捉えれると思っているのか? 今すぐ、兵を退けば戦争にまでは発展させねぇぇよ」
「一度、儂に敗けた身で申すとは、片腹イタイわ! 空からでしか戦えない臆病者に用はない! 失せな! まぁ、儂の軍に入りたいなら、構わんぞ」
ハプドヴァースの言葉なんて興味ないと言わんばかりに、自分の要求だけを伝える、オクゾール。
こうして、オークとハーピィは全面戦争を行う事になった。
「風よ、敵を切り裂く刃となれ 《ウィンドーカッター》 」
「無駄な攻撃だな。グォォォォォ!!」
ハプドヴァースから風の刃が放たれたが、オクゾールの遠吠えでかき消された。
「そんな大声でオレの攻撃をかき消すとは驚きだな」
まさか、遠吠えでソニックブームが起きるとはハプドヴァースも驚き、素直に感心していた。
ハプドヴァースの攻撃は全て防がれる。そして、オクゾールの攻撃は全て躱される。互いに遠距離攻撃のみの戦が続く。
「――――チッ! キリがねぇぇぇ。小蠅の様に煩わしいぃぃぃ!!」
攻撃が当たらないオクゾールは次第に苛立ちが募ってくる。別に自分も攻撃を受けている訳ではないが、次第に焦りも覚えてきた。
「お前がオレに勝てたのは、オレがお前と戦う前に疲弊してたからだぜ! オクドーと一緒で返り討ちにしてやんぜ」
ハプドヴァースはオクゾールを挑発して、苛立ちと焦りを増加させていた。
勿論、現在のハプドヴァースも疲弊している状態には変わりない。そして、オクドーを返り討ちにしたと言ったが、ブラフである。まぁキリヤが倒していると思っているが。実際は昏倒させただけであった。
「やはりか、貴様がここに来たという事はオクドーを打ち破ったのか……息子の敵を取らせてもらうぞぉぉぉ 《巨大化》 」
元々が3メートル超えの巨体がさらに膨れ上がった。どれぐらい大きくなったかというと、現在は10メートルを超えてある。
「なっ!?、そんな奥の手があったのかよ……」
唖然としながらハプドヴァースは上空に避難しようと高度を上げようとしたが、それを許すつもりは相手には無かった。巨大な丸太の様な腕を巧みに操り、上には行かせない様にした。
「本当に小蠅のようじゃな。この手は鬼共と戦う時までは隠しておこうと思ったのにな」
素早さに自信のあるハプドヴァースはなんとか攻撃を掻い潜っている。そのまま高度を上げる事には失敗しているが、攻撃を喰らう様なヘマは冒さない。そのまま均衡状態に突入した。
「もう、お前の相手をするのも飽きたな。儂もハーピィ狩りに参加させてもらおう。お前はそのまま逃げ続けるんだな。安心せい、お前の同族は儂等がたっぷりと可愛がってやるからな」
オクゾールもこのまま不毛に攻めるのは得策ではないと判断し、避難しているハーピィの方を追いかけようと、踵の向きを避難していったハーピィの方角に向けた。その時の彼の表情が下卑ていたのは言うまでもない。
「テメェェェ、ふざけんなぁぁぁぁ!! お前の相手はオレだろうがぁぁぁ 《風圧壁》 」
10メートルを超える巨体のオクゾールに風圧壁を発動するが、この巨体に効果を及ぼすには魔力を多大に消費しなくてはならない。キリヤとの戦闘も含め、ハプドヴァースは魔力を使い過ぎている。
「そんなもんでは儂は止めれんよ。相手をしてほしかったら、地上に降りるんだな。そしたら、追いかけるのを待ってやろう。さぁ、どうすんだ? 地上で儂と戦う勇気があるか? 地上で戦えば、先ほどのように敗けるのは目に見えているがなぁぁぁ」
下種な笑みを浮かべたままハプドヴァースに問う。勿論、ハプドヴァースに選択の余地はない。
「……わかった、地上で勝負だ」
「本当にいいのか? 地上では儂に勝てないのだろう? だから、空にばかり逃げていたのになぁ。ほら、さっさと、降りな」
ハプドヴァースは渋々と地面に降り立った。地面に降り立った彼の目の前には巨大すぎるオクゾールが立っている。
「さぁここからが本気の闘いだな。少しでも、空を飛べば……わかってんだろ? まぁ精々、足掻けよ」
その後の戦いはあまりに一方的だった。ハプドヴァースは攻撃を回避するので、精いっぱいである。空も飛べない。よって、、彼の能力を十分に発揮出来ない。そして、魔力の残量がほとんど残っていなかったのも原因の一つだ。
彼は必死に避ける。あの巨体の一撃を喰らえば、それだけで再起不能である。だから、必死に走り続ける。自身に付いている翼を使えば、簡単な事でも自分の脚だけで避けるのは大変だ。それでも、彼は仲間の為に時間を稼ぐ。一刻も早く、妹であるハピネヴェースが仲間達を率いて、この森から脱出するまでの時間を。その為、残っている僅かの魔力は攻撃の為ではなく、身体強化のみに注ぎ込み木々の陰に隠れたり、時には地面に這いつくばっても彼は諦めなかった。
(せめて、もう少しは、ここに食い止めなくては……)
魔力も完全に枯渇し満身創痍なハプドヴァースを支えていたのは仲間を逃が為のす時間を稼ぐ事……つまり、仲間の為である。
「どうしたぁ? 動きが鈍ってきてるぞ? 早く逃げないとペシャンコだぞ」
満身創痍で立つ事がやっとなハプドヴァースを煽る。もう既に彼が限界だと知っていてもだ。オクゾールは既にいつでもハプドヴァースを倒す事が出来る。しかし、それをせずに遊んでいるのだ。
巨大なオクゾールの足が頭上から迫る。それを前方に倒れ込みながらもハプドヴァースはギリギリ躱した。しかし、地面に倒れ込んだ彼を無造作にも摘まみ上げるオクゾール。そのまま、彼の腕に付いてる翼を毟り始める。
「もうこれも、必要ないだろう。儂が取り除いてやろう」
残虐な笑みを浮かべたままオクゾールは翼や羽を毟る。その行為の度に悲鳴を上げるハプドヴァース。
「そろそろ飽きたな。どうやって、殺してやろうかな……そうだな、良い事を思い付いたぞ」
少し思考する素振りを見せたオクゾールはその手で摘まんでいるハプドヴァースを顔の方に持ってきた。
「これから、貴様を喰ってやろう……生きたままな」
そして、大口を開く。しかし、ハプドヴァースは動かない。
「何だ、動く気力も残っとらんのか? もう、よいわ」
その手で摘まんでいたハプドヴァースを自身の口の方に軽く投げ込んだ。口の中に入る直前にハプドヴァースは急旋回し、オクゾールの右眼の前まで飛び、最後の力を振り絞って右眼に自身の左腕を突き刺す。
「ガァァァァ!! フザケルナァァァァ!! 」
「ハッ! ざまぁみやがれ」
本気で怒鳴りながら、ハプドヴァースの体を掴み、地面に叩き付けた。そして、何度も何度も踏み付ける。地面には小さなクレーターが出来上がっていた。そのクレーターの中心には無残な姿になったハプドヴァースが横たわっていた。
キリヤがオクドーを倒した後にボノロア大森林に巨大なオークが出現した。キリヤがその巨大なオークに気付いた様に他にも気づいた者達が居た。
「ん?……何だ、アレは?」
一人の男性がボノロア大森林の異変に気付いた。
「どうかしたのか、カイネル?」
カイネルと呼ばれた男性の仲間と思われる男も気になり、男性が視ていた方角に視線を向けた。
「うわぁぁ!!? 何だ、あの化け物は!!」
その声を聴き付けてか、数人の仲間が近寄ってきた。そして、全員が絶句する。カイネル達の視線の先には10メートルを遥かに凌駕するオークが暴れていた。
「急げ! ここを離れるぞ!」
「おう」
「冒険者ギルドと領主に報告だ」
ここには五人の冒険者が居た。彼らは全員がAランクの冒険者である。パーティ名【炎の剣】として活動中の冒険者パーティだ。その実力は高く、この辺りではかなり有名なパーティである。そんな彼等の狙いはゴブリンかコボルトの魔人の討伐であった。魔人が無理でもキングは倒す予定であった。その為に彼らはボノロア大森林まで足を運んでいた。イレギュラーである、巨大オークの所為で魔人討伐を断念し街まで急ぎで戻って行った。
キリヤはハプドヴァースを追う予定だったが、既にどこに居るか分からないので急遽、予定を変更しオクゾールの元に向かい情報を集める事にしたが、向かっている途中に異変に気付いた。
(何故、あいつは巨大化しているんだ? 巨大化しなくてはいけない理由があるって事か……つまり、戦っている。問題は誰と、だ。一番、考えられるのはハプドヴァースだが、あんだけボロボロだった状態で挑まないよな……嫌な予感がする)
キリヤは考えても分からないので、思考を放棄した。そして、嫌な予感がしているので、急いで向かっている。
そして、オクゾールの前にまで飛んで行った。オクゾールの周辺は確かに戦闘を行った跡が残っていた。木々は薙ぎ倒され、地面にクレータが出来上っていた。
「なっ!? おい! 起きろ、無事か!?」
キリヤはクレーターの中心で横に倒れ込んでいるハプドヴァースを発見した。急いで駆け寄ったが、既に息をしていなかった。
「……俺が殺すまで死ぬんじゃねぇぇよ。てか、あんだけボロボロの状態で闘うとか馬鹿じゃねぇのか」
キリヤはハプドヴァースの亡骸を視ながら、呟く。
「何だ小娘? 貴様はハーピィではないみたいだが、ハプドヴァースの仲間か? そいつも馬鹿な奴だったぞ。仲間の為にボロボロの状態でノコノコと出てくるわ。明らかに不利な条件も飲んでから挑んで来たんだぜ。仲間の為なんて綺麗ごとを抜かすからな!」
頭上から見下してくるオクゾールにキリヤは答えた。
「確かに、俺はハーピィでもハプドヴァースの仲間ではないさ……ただ、仲間にしてやっても、良かったカモな」
オクゾールはハプドヴァースがどのように死んだかを繊細に語ってみせた。その言葉を聞いて、キリヤは笑った。
「ハハハハハ! やっぱり、アンタみたいな外道だと殺すのに躊躇しなくて良いな。お前を殺すことは決定事項だ」
ハプドヴァースを殺すことには躊躇いを見せ、悩んでいたがオクゾールを殺す事には何も感じない。むしろ、殺したいとすら思っていた。
「小娘が粋がってんじゃねぇぇぞぉぉ!! 」
オクゾールは巨木の様な太い腕を振り上げ、キリヤに目掛けて拳を振り下ろした。キリヤの後ろにはハプドヴァースの亡骸がある。その為、キリヤは避けれない。
「どうした? こんなものか?」
その直後に巨大な右腕が宙を舞い、真っ赤な鮮血の雨を降らした。
「――――――え?……ガァァァ、痛テェェェェェェ。どうなってんだ。儂の腕が無いじゃと?」
驚愕の表情を浮かべ血まみれになっているキリヤに視線を向けるオクゾール。そして、キリヤの手には竜炎武装で創られた長剣が握られていた。勿論、その剣も血でビッショリと濡れていた。




