まさかの大発見!
最近、多忙の為に更新できずに申し訳ありませんでした。
詳しくは活動報告に記載するので、良かったら見て下さい。
現在、キリヤはドガルガルの部下であるバンドとドボルネと別れた後にアイサークの街に戻る為に移動している途中である。移動の途中に魔物が居れば『ステータス』を確認し、所持していない能力を持っていれば狩る事にしているが、まだ遭遇出来ていない状態である。
アイサークに戻るのには空を飛んでいけば、一時間も経たずに帰れる距離だろうが、『龍神王ガルザーク』の魔竜軍の四天王を務めるドガルガルとその部下の二体が大暴れした所為でアイサークの近隣の街には、厳重な警戒態勢が敷かれているらしい。その為に、空を飛んでいる姿を見られるのは好ましくない。どこで、ベルゼブブに繋がっているかは不明だからな。『闇夜之暗殺者』が在るから見つからないと思うが、念には念をと云うしな。
何故、俺が厳重な警戒態勢を敷かれているか知っているかって?――――分身とアリスから情報である。バンド達と別れて、すぐに連絡が来たのだ。
「面倒くさいな、どうやって帰ろうかな」
気付けば、ボソリと独り言を溢していた。周囲の地形は把握しているが、どこに誰が存在しているかは分かんないしな。《空間把握》を常時発動するのも疲れるしな。精神的にだけど。
結局、夜まで待つことにした。日が落ちて暗くなれば『闇夜之暗殺者』を持つキリヤを視認できる者も居ないだろう。元々、居ないと思われるが。
そのまま、近くの森で狩りをしながらノンビリと待つことにした。勿論、待つとは言ったが、何もしない訳ではない。分身にはアイサークで情報収集に当たってもらっている。まぁ本体は何もしてないがな。
今日の方針が決まった所で、俺は狩りに向かった……が、獲物がチョロ過ぎるのだ。マジ作業だった。それでも、収穫は無い。
「やってられるかぁぁ!!」
この森には碌な奴が居なかったのだ。能力持ちを発見して意気揚々と捕食しても、既に持っている能力に吸収されるだけだし。一時間程しか動いていないが、ヤル気も無くなるのも頷ける。日暮れまで、まだ十分すぎる程に時間が在るのだ。
大樹の太い枝の上に座り込みながら、愚痴を言っていると名案が頭に浮かんだのだ。
「そうだ! 分身に狩りに行かせよう」
これが、漫画だったら頭の上に電球が出てきてから″ピカーン″と閃いたって感じになるだろう。早速、分身を作成した。数は五体だ。もっと、数を増やしても良かったが、特に考えもせずに五体にしたのだ。
「よし、お前たちは能力を所持している魔物の捕獲に向かってもらいたい。さぁ、行くのだ! 我が同士よ! 」
大袈裟に手を動かし、指示を出してみたが、キリヤの予想を裏切る事が起こったのだ。
「「「イエス・ユア・マイロード」」」
「えっ、俺らが行くんですか?」
「アンタは残るのかよ? 不公平じゃないのか?」
三体は当たり前の様に指示通りに動き出したが、残りの二体は反対みたいだ。
(初めて、分身に拒否された!? てか、分身が拒否するってどうなんだ!!)
「あれ?……どうなってんだ、何で今まで通りじゃないんだ」
キリヤの疑問は尤もである。なんせ、今までにこんな事を言う分身は居なかったからである。
「俺達にだって意思があるって事だろ」
「まぁ、そーゆう事だ」
キリヤは少し考える為に黙り込んだ。そして、口を開いた。
「よし、お前たちの言い分は分かった……だが、他の分身には自我がないのか?」
「ある奴も居れば、無い奴も居るんじゃないのか?」
「多分、俺達ほどの自我はないんじゃないのか?」
自分の分身と話すとは奇妙な感覚である。
「わかった、お前たちは狩りに行かなくて良いぞ」
分身の二体は「やったぜ」的な事を言って、喜んでいたがキリヤの言葉は続いた。
「だが、これから行う実験に付き合ってもらうぞ!」
「「ええっ!! そりゃ、ねーぜ。とっつぁん!」」
二体の分身は声をハモらせながら、文句を言った。
「ええぃ、うるさいぞ。狩りに行かないなら当然だろうがっ! てか、誰がとっつぁんだ! 」
「「危険な事は嫌だぁ~」」
またしても、二体の分身は同時に同じ言葉を言った。
「安心しろ! 実験って言ったが、危険な事はしないから」
その言葉を聞いてから、少し大人しくなった。
「それで、実験って何するんだ?」
「面倒な事は御免だからな」
「お前達みたいな自我のある分身を創りたいと思ってな」
「何で、そんな事を?」
「そんな事して、何かメリットでもあるのか?」
本物は、分身達の疑問に答える為にすぐに口を開く。
「勿論、メリットはある! それは、自分の意志で考えれるという事はそれだけで強みになるだろ? 各地に散らばってから情報収集にも便利だしな 」
分身達も少しはメリットが分かったようだ。
「分かったから、早くしようぜ」
「時間は有限なんだぞ! 」
分身達は自我のある分身を創り出す利点に気付いたからか、ヤル気を出している。もっとも分身達は他にも自我のある分身を創れたら、自分が楽できると気づいただけである。その事にキリヤは気づいていない。
「じゃぁ、始めるぞ」
キリヤはそう言ってから、十体の分身を作成した。能力は一つも使えない状態のだ。その状態の方が魔力コストが断然、低いのだ。これから何十、何百の分身を作成する為に魔力を節約しなくてはならない。
「この中に自我のある者はいるか?」
キリヤは十体の分身に問いかけたが、反応を返す者は見られない。
「失敗か?」
「もしかしたら、問いかけが悪いのかもしれないぞ」
まさか、分身からそんな意見が出るとは思っていなかったので、キリヤは驚いていた。
「……なら、どーゆう風に聞けば良いんだ?」
キリヤは分身体にどうすればいいか尋ねてみた。
「そんなのは簡単さ! 絵しりとりをすれば、いいのさ!! 」
自信満々と云った感じで言った分身を見ながら、キリヤともう一体の分身は溜息を溢した。
「馬鹿か?」
「どうやって、絵しりとりで分かんだよ!!」
「フフフ、百聞は一見に如かず!ってな 」
「って事でやってみようか」
「……ったく、仕方ないな。まぁやってみるか。は~い! 全員、集合!! 」
何だかんだ言って、分身の案を実行する本物であった。
それから急遽、絵しりとりを始まった。描こうとしない分身は消して、新しい分身を作成する。自分で思考をする分身も半分ほど居るが、全てピンキリである。何を描いているか、皆目見当も付かないモノもある。
「おい! これは、何の絵なんだ!? 」
言っているそばから、コレである。今も最初の分身が後に作成した分身の理解不能な絵を見て騒いでいるのだ。
「おい! 騒がしいぞ!! 精神統一してから分身を造る時の違いを検証するんだからっ!! 」
少し離れた場所に居た本物は分身達に向かって怒鳴った。
それからも絵しりとりは続いていた。作成された分身の数は数百にも上っていた。性能[スペック]は低いから消費する魔力は実戦で使う奴よりは少なめであるが、数が多いのもあるし、集中していたのもあって魔力を大幅に消費していた。
「どうしたよぉ~ キリヤさんよ! ……あっ! 俺もキリヤか。アハハハ 」
分身は自分で言った言葉に受けて笑っている。
「うるせーよ! 魔力をけっこう消費して疲れてんだよ……てか、お前達にも呼び名が無いと不便だな。キリヤ2号とかでいいよな? 」
本物のキリヤは名案とばかりに胸を張って分身の方に視線を向けてみた。
「テメェ、なに胸を張ってんだよ! 2号って何だよ!! 犬じゃねぇんだぞ!」
分身は気に入らなかったみたいだ。
「じゃあ、名前の案をお前が出してみろよ」
「えっ!?……そーゆうのは親が考えんだろうが! お前は、俺達の一応だが親だろっ!」
そこから本物と分身の長くに渉る口論が続いたのは、想像に難くないだろう。結果を言うと、名前の事は保留になった。
太陽が暮れ始め、辺りが暗くなる頃に周囲の散策と狩猟に行った分身達が戻ってきた。最初に送り出した5体以外にも途中で何体かの分身を森に送っていたのだ。神眼を発動出来る程に優秀な奴らは能力持ちの魔物を捕えてきたが、途中から送った奴らは能力無しの魔物を連れてきている。中には帰ってこない奴らも居る。まぁ、ソイツ等は魔物に返り討ちにあったのだろうと予測される。怪我を負った者も何体か戻ってきたし。
「これで、全部か?」
本物が周囲を見渡しながら、確認を取った。
「何人か戻ってきてないぞ」
分身が数を数えてから、報告をしている。
「テレパシーが届かないな」
「魔力をケチったからじゃねぇか?」
「うるせーよ。ここに居ない奴は魔物に遣られたとみておくか」
「今日の戦果を確認するか」
分身達が捕まえてきた魔物の能力を一通り確認してみた。
『潜水』,『脱皮』,『火耐性』,『熱耐性』,『伸縮』の5種類だった。『火耐性』と『熱耐性』を所持している奴は同じなので、能力持ちの魔物は四種類だった。
それからも実験は続いた。本物以外が捕食しても本物にも能力は反映されるかの実験と自我のある分身は一度消しても、また創り出せるかの実験である。
結果は二つとも成功である。
二つ目の方は、最初に何度も失敗したが、ある条件を満たせば成功したのだと。その条件とは、名前を付ける事である。
名前を付ける事で分身から個人に進化(?)するみたいだ。
今日の実験で分かった事は、大きいぞ。これからも研究を続けねば、ベルゼブブに殺されないためにも。