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それは既に手の中にある

それは、偶然のようで――

きっと、必然だった。

追われ、傷つき、辿り着いた先。

そこにあったのは、静寂に包まれた“出会い”だった。

まだ名前も知らない。

まだ言葉も交わしていない。

それでも確かに、何かが動き出す。

これは、ひとつの命が、もうひとつの命に触れる物語。

紫と群青が溶け合う空が、憂いを帯びて揺れている。


地の底まで鳴り響くような絶望が、すぐそこまで迫っていた。


大気は重く、押し潰されそうなほどに淀んでいる。


ユウミと白い虎は、洞窟を出た。


――そして、目の前に広がる光景に

言葉を失う。


おびただしい数の魔物。


いや――軍勢。


ゴブリン種だけではない。


ホブゴブリン、ゴブリンジェネラル、オーク、ハイオーク、トロール……。


上位種すら混在する、異様な布陣。


『……ふざけた数だな』


『臆したなら下がっていろ、小僧』


『君もまだ本調子じゃないでしょ』


『こんな雑魚ども、我の敵ではない!』


白き虎は、迷いなく軍勢へと突っ込んだ。


『おい!……まったく……行くか』


ユウミも地を蹴る。


戦いが、始まった。


白き虎は雷のような速度で突進し、最前列の魔物を吹き飛ばす。


鋭い爪が振るわれるたび、数体の魔物がまとめて宙を舞った。


オークが剣を振り上げる。


『だから遅いって』


振り下ろされる前に、ユウミの飛び蹴りが顔面を捉えた。


宙に舞った剣を掴む。


そのまま回転し、周囲の首を一閃で刎ねる。


止まらない。


止まることは許されない。


二人は次々と魔物を屠っていく。


ズンッ……ズンッ……!


『デカいのが出てきたな』


前列を押しのけ、上位種が姿を現す。


ゴブリンジェネラル、ハイオーク、トロール。


ゴブリンジェネラルが大剣を振り下ろす。


ザシュッ!


『ぐっ……弱った翼を……狙ってきたか……』


白き虎が怯む。


その隙を狙い、ホブゴブリンの大斧が振り下ろされる。


――ガギィンッ!!


『……小僧』


ユウミが割って入り、大斧を受け止めた。


さらに、ジェネラルとトロールが追撃に入る。


白き虎は低く身を沈め、翼を畳んで回避。


次の瞬間、跳ね上がるように飛びかかり――トロールの頭部を噛み砕いた。


一方、ユウミは鍔迫り合いを力で押し返す。


だが――


左右から迫る影。


ホブゴブリンとハイオークが同時に斬りかかる。

片方を回避。


もう一方を剣で受ける。


ギャァンッ!!


体勢が崩れる。


踏ん張れない。


ユウミは吹き飛ばされ、岩へと叩きつけられた。


『小僧!』


『……大丈夫だ……!』


受け身で衝撃を逃がす。


だが、ダメージは確実に蓄積していた。


ゴォォォォオオオ……!


無数の魔物が、地鳴りと共に迫る。


『……早く、動かないと』


立ち上がる。


構えを取る。


――だが。


手にあったはずの剣は、砕けていた。


刀身は、もうどこにもない。


『チッ……!』


魔物が一斉に襲いかかる。


(……くそ!避けきれない――)


――ドォォォンッ!!


轟音と共に砂煙が巻き上がる。


次の瞬間、魔物たちは四方へ吹き飛ばされていた。


その中心に立っていたのは――白き虎。


だが、翼も肩も深く裂け、純白の毛は赤く染まっている。


ユウミを守るため、さらに傷を負ったのだ。


『来い、小僧!』


『……何を……!?』


襟元を咥えられ、そのまま引き上げられる。


風のような速度で、再び洞窟へ。


『おい!洞窟に入れば――』


『逃げるのではない。お前に試したいことがある』


最奥へ到達する。


白き虎が呪を紡ぐ。


何もなかった空間に、虹色を帯びた白い祠が現れた。


ドクンッ――


鼓動が跳ねる。


祠の中央。


そこには、一振りの刀が突き立てられていた。


『……これは』


『遠い昔、我は九頭龍の神より、この神剣を守る役目を賜った』


ドクンッ、ドクンッ……!


その言葉に呼応するように、鼓動が激しくなる。


脳裏に、あの少女の姿がよぎる。


(――抜け。)


声が、聞こえた気がした。


『龍神より賜りし、この刀の名を――』


(――不知夜。)


名が、直接頭に響く。


ドクンッ!ドクンッ!


『……この八百年、我は主を待ち続けてきた』


足が、勝手に動く。


『数多の強者に示したが――』


手が、伸びる。


『抜けた者は――』


(――刀を抜け。)


――音が消えた。


咆哮も、足音も、すべて。


ただ、鼓動だけが響いている。


(――余こそが力。)


白き虎の声も、少女の声も、届かない。


ただ一つ。


刀の声だけが、すべてを支配していた。


(――余がお前を使ってやろう。)


――シャリーン……


抜かれた。


白き虎の瞳が、見開かれる。


ユウミの右手には、不知夜。


刀身と、その顔は――どちらも下を向いたまま、動かない。


『……』


『……こ……小僧……』


沈黙。


そして――


『……ふふ』


『……どうした……』


『あハハハはハハハはははハハハはハハハハハははははハハハははハハハはハハハははははは!!!』


壊れた。


完全に。


ユウミの意識は、闇の底へと溶け落ちた。





第4話を読んでいただき、ありがとうございます。

今回は、ユウミとオリオンの出会いを描きました。

この出会いは、これからの物語においてとても大切な意味を持つものになります。

ただの邂逅ではなく、

“運命が交差する瞬間”として感じていただけたら嬉しいです。

ここから、ユウミの旅は大きく変わっていきます。

そして同時に、彼の内にある“何か”も――。

次話も、楽しみにしていただけたら幸いです!

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