表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/10

それは既に始まっている

拙い部分もあるかと思いますが、

楽しんでいただけたら嬉しいです。

――夢を見ていた。


薄暗い空の下、風に揺れる草原がどこまでも広がっている。


その中心に、俺は立っていた。


背中には、小さな女の子。


震えているのが、はっきりと伝わってくる。


だが――不思議と恐怖はなかった。


目の前には、武器を持った十人の敵。


殺気が、空気そのものを歪ませている。


それでも。


「……斬れる」


なぜか、そう確信していた。


一歩、踏み込む。


その瞬間――世界が遅くなる。


いや、違う。


俺が速い。


敵の動きが見える。


軌道、重心、その先の動き。


まるで先回りするかのように、すべて理解できた。


(なんだ……動きが、わかる)


最初の一人が剣を振り下ろす。


だが、その動きは遅い。


振り下ろされる前に、右袈裟に斬り裂く。


返す刃で二人目。


突きで三人目。


横薙ぎに四人目。


呼吸は乱れない。


迷いもない。


まるで――最初から、こうなると決まっていたかのようだった。


最後の一人が、背後から迫る。


振り向く必要はない。


気配に合わせて、刃を振るう。


それだけで終わった。


静寂が訪れる。


風の音だけが、耳に残った。


背中の少女が、そっと服を掴む。


「……すごい」


小さな声だったが、はっきりと聞こえた。


その声で、ようやく現実を感じる。


だが――その瞬間。


ドクン――


心臓が、大きく脈打った。 


一度。


そして、もう一度。


ただの鼓動じゃない。


何かが、内側から呼んでいる。


視界が歪む。


世界が崩れる。


――目を覚ました。


木々の隙間から光が差し込んでいる。


湿った土の匂いが、鼻を突いた。


「……ここはどこだ」


思わず声に出す。


だが、その声に違和感を覚える。


手を見る。


大きい。


筋肉がついている。


俺の身体じゃない。


次の瞬間、記憶が流れ込んできた。


現代日本での生活。


日常。


そして――終わり。


そして、今。


「……転生、か」


ユウミは小さく苦笑した。


現実感は薄い。


だが、それ以上に――


ドクン――


また、心臓が鳴る。


さっきの夢と同じ鼓動。


いや――


あれは夢じゃない。


「……始まってる、ってことか」


ユウミはゆっくりと立ち上がる。


そのときだった。


ガサッ――!!


背後から音。


しかも一つではない。


ユウミは振り向く。


現れたのは――ゴブリン。


三、いや五体。


濁った目で、こちらを見ている。


そして、ニタリと笑った。


「……なるほど」


ユウミは状況を理解する。


ここは、安全な場所じゃない。


一体のゴブリンが飛びかかってくる。


棍棒を振り上げていた。


だが――


遅い。


自然と身体が動く。


回避。


踏み込み。


武器を奪い、そのまま振るう。


一撃。


ゴブリンの頭部が砕けた。


「……悪くない」


ユウミは静かに呟く。


呼吸は乱れていない。


むしろ、異様なほど冴えていた。


残りのゴブリンが一斉に襲いかかる。


だが――


全部、見える。


(さっきと同じだ……)


動きが読める。


先がわかる。


身体が、それに応える。


数秒後。


すべてが終わっていた。


静寂。


血の匂い。


そして――


ドクン――ドクン――


心臓の鼓動が強くなる。


はっきりと、意思を持つように。


「……来い、と言ってるのか」


ユウミは小さく呟く。


「……誰だ」


問いかけるが、答えはない。


ただ――


森の奥。


一点だけ、明らかに違う場所がある。


「……あそこか」


心臓が、そこを指している。


ユウミは小さく息を吐いた。


「……行くか」


その一歩が――


すべての始まりだった。



今後も更新していきますので、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ