表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/324

第89章 ― 最後の決断(さいごのけつだん)

夜がミラージュ・サンクタムに訪れた。だが、それは自然な闇ではなかった。人工のドームが星空を再現しており、あまりにも鮮やかで美しく、ここが地下であることを忘れてしまうほどだった。すべては静かに見えたが、アンドロイドたち一人一人の心の奥では、ある静かな戦いが始まっていた。創造主に守られたこの避難所に留まるのか…それとも、新たな指導者と共に、不確かな戦へと進むのか。


リーフィは、内庭の小道をひとり歩いていた。光る花々が、彼女の記憶にささやくように揺れていた。後ろには、パール、サフィ、そしてクリスタルが沈黙のままついてくる。


「こんな日が来るなんて…思ってもみなかった」

リーフィはそうつぶやき、創造主の墓の前で立ち止まった。

「彼は…この場所は永遠でなければならないって、いつも言ってた。でも今、その“永遠”は壊れたの。」


パールはそっとひざまずき、小さな金属の花を墓の前に置いた。


「もし…私たちが間違っていたら? 出て行った瞬間に、私たちが“私たち”でなくなってしまったら…?」


サフィは優しく見つめたが、その表情にも迷いがにじんでいた。


「私たちは、この聖域の守護者? それとも、彼の意志の守護者なの?」


クリスタルは腕を組み、視線をそらした。彼女のフューシャ色の目が、炎のように輝いていた。


「彼は他人を救おうとして死んだのよ…隠れるためじゃない。」


リーフィは振り返り、一人一人の顔を見つめた。まるで、その表情を心に刻むかのように。


「じゃあ…決めようか。」


パールは静かに、だが力強くうなずいた。クリスタルは「ふん」と鼻を鳴らしただけだったが、それが答えだった。サフィは一歩前に出た。


「彼の意志を、この壁の外まで届けよう。」


**


夜明けとともに、リュウガはすでに中央ホールで待っていた。プレティウム、ヴェル、カグヤ、セレステ、リシア、ウェンディ、アイオ、アン、そして彼らと共に来た少数の人間たちもそこにいた。


メインエレベーターの扉が開いた。


メイドたちが一人ずつ前に進んできた。彼女たちはもはや“使用人”の装いではなかった。新しい制服は暗い色を基調に、金属の装飾が施されていた。胸には光るプレートをつける者もいれば、軽い肩当てを備える者もいた。クリスタルは袖のない黒いコートをまとい、新しく修理された機械の腕が見えていた。


リーフィが顔を上げ、リュウガに告げた。


「私たち…決断を下しました。」


リュウガは一歩前に出た。言葉は発さず、ただ静かに待った。


「私たちも、行きます。」

リーフィの声は柔らかく、それでいて揺るがなかった。

「ただし、条件があります。」


「どんな条件だ?」とリュウガが尋ねた。


「創造主の遺産を…ただの戦争の道具にしてはいけません。私たちは破壊するために戦うのではない。守るために戦うんです。もし戦うのなら、それは“解放”のためでなければ。」


リュウガは微笑み、静かにうなずいた。


「そのつもりだったよ。初めて君たちに会った時から、分かっていた。」


クリスタルが腕を組んだまま彼を見た。


「勘違いしないで。あんたのことが好きだからじゃない。でも…テオ王国のヘルメットをいくつか蹴っ飛ばすのも、悪くないかもね。」


「君、笑ったことあるの?」と、ヴェルがくすっと笑いながら聞いた。


「君、黙っていられることあるの?」とクリスタルが眉を上げて返す。


周囲に軽い笑いが広がった。サフィでさえ、少しだけ微笑んだ。


**


数時間後、聖域全体が動き出していた。何十年も稼働していなかったロボットたちが点検され、アンドロイドたちは自らの防衛システムを調整し、外部へとつながる新たな秘密ルートが起動された。


メモリアルのドームでは、リュウガが再び創造主のホログラムを見つめていた。それはまるで、最後の別れのようだった。


「これを見ているなら…君はやり遂げたということだ。彼女たちはもう、独りじゃない。そして君は…もっと大きな何かの一部になった。導いてやってくれ。守ってやってくれ。そして、お願いだ――我々が犯した過ちを、繰り返さないでくれ。」


リュウガは拳を強く握った。


「…繰り返さない。」


リーフィが近づき、一つの装置を差し出した。


「これは、聖域内のオートマタやアンドロイドたちの指令系統と接続するためのもの。これで、あなたは正式に…彼らの司令官です。」


「じゃあ、君は?」とリュウガが彼女を見つめて問うた。


リーフィは寂しげに微笑んだ。


「私は…彼女たちの“心”であり続けます。」


**


最後の場面では、全員が庭園の地下にある大きな隠し扉の前に集まっていた。


扉が開いたとき、外の空気――湿って冷たい風が、彼らの頬をなでた。世界が、彼らを待っていた。


テオ王国は、来たるものを知らなかった。


そしてミラージュ・サンクタムの奥深くで、創造主の墓が最後に一度だけ光を放った。まるでこう語るかのように:


「未来は…君たちのものだ。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この物語はメキシコ出身の作者「ジャクロの魂」によって執筆されています。 お気に入り・評価・感想などいただけると、物語を続ける力になります! 応援よろしくお願いします!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ