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第88章 ― レガシーの声(こえ)

ミラージュ・サンクタムの灯りが温かく大広間を照らしていた。その場所に、リュウガは皆を集めた。アンドロイド、メイドたち、オートマタ、そしてまだ動ける数少ないロボットたちが、主力メンバー――プレティウム、セレステ、ヴェル、リシア、ウェンディ、カグヤ、アイオ、アン、その他の仲間たち――と共に集結していた。


リュウガは一歩前に出て、落ち着いた眼差しを皆に向けた。彼の声は静かだったが、確かな響きを持ち、全員の心に届いた。


「今までありがとう。俺たちを救ってくれて、この場所を聖域として守ってくれて…。だが、もうその時が来た。」


誰もが沈黙し、アンドロイドたちは好奇の目で彼を見つめた。


「テオ王国と決着をつける時だ。」


その言葉にざわめきが広がった。サフィは顔を伏せ、リーフィは身体を強張らせ、クリスタルは腕を組んで黙っていた。


「君たちに一緒に来てほしいとは言わない。だが、もしこの場所を出たいと思う者がいれば…もし、自分たちの創造主の遺産を、ただ隠れて守るためではなく、何かのために使いたいと思うのなら…その選択は自由だ。命令に従うのと、運命を選ぶのとでは、まったく違う。」


その言葉は風のように吹き抜け、メイドたちは視線を交わし合った。クリスタルは眉をひそめ、リーフィが前に進み出た。


「リュウガ…本気なの? 私たちを、壊されるかもしれない戦いに連れて行くの?」


「決めるのは君たちだ。俺は君たちの主じゃない。君たちがそう望まない限りは。」


クリスタルが眉を上げる。


「もしここに残りたいと思ったら?」


「その時は、仲間たちと俺だけで行くよ。だが、君たちがしてくれたすべてのことに、心から感謝している。」


リーフィは考える時間を求め、アンドロイドたちは静かにその場を後にした。


数時間後、地下庭園は柔らかな人工の光に包まれていた。機械の花々が淡く輝き、リーフィ、サフィ、パール、その他のアンドロイドたちは創造主の墓の前に集まっていた。古いロボットたちも、きしむ音を立てながらゆっくりと歩き、式のような静けさが広がっていた。


「どうすればいいの…?」と、サフィが指を組みながらつぶやいた。


「もし彼について行けば…戻れないかもしれない」とパールが言った。


「でも、ここに残ったら…この場所を裏切ることにならない?」と、若いメイドが小さく言った。


その時、墓の裏から「カチッ」という小さな音がした。


小さなハッチが開き、中から浮かぶ球体の装置が現れた。それは空中に青く輝くホログラムを映し出し、皆が驚いて一歩後ずさった。


「それは…!」とリーフィが息をのんだ。


ホログラムに映ったのは、白髪に丸眼鏡をかけた年配の男性。その声は柔らかく、懐かしさと哀愁を帯びていた。


「これを見ているということは…非常プロトコルが作動したのだな。本当は直接君たちに伝えたかったが…」


リーフィの目には涙が浮かんでいた。


「マスター…!」


「これは記録された最後のメッセージ…私の遺言だ。このシステムが作動したということは、聖域が発見されたか、あるいは"ふさわしい者"がこの場所に足を踏み入れたということだ。」


ホログラムは少し揺れたが、続けられた。


「その者をここへ。人間であるなら…聞かせてほしい。」


まもなく、リュウガが呼ばれてやってきた。彼はホログラムの姿に言葉を失って立ち尽くした。


「これが…?」


リーフィが静かにうなずく。


「はい、彼です。」


ホログラムの中の創造主は、まるでリュウガの位置を知っているかのように、彼を見つめた。


「君は…中枢システムにより選ばれた。偶然ではない。君の感情構造、決断力、導く力、そして何より――彼女たちに示した共感により選ばれた。あのクリスタルでさえ、かつてはもっとも解読困難だった彼女でさえ。」


クリスタルは腕を組み、視線をそらした。


「だから私は、ゼータ・プロトコルを起動した。この聖域は、今から君を“新たな契約されたマスター”として認識する。」


「なに…?」とリュウガがつぶやいた。


「アンドロイドたちに強制はしない。このシステムは命じない、ただ提案するだけだ。しかし、君にはこの場所を導くことも、閉じることもできる。その未来は、君の手の中にある。」


ホログラムはゆっくりと光を失っていった。


「ありがとう…彼女たちに希望を与えてくれて。そして、もし君がテオ王国に辿り着いたなら…伝えてほしい。“記憶は残っている。正義も残っている。意思を持つ心も、まだここにある”と。」


そして、光は静かに消えた。


沈黙がその場を包んだ。


リュウガは目を閉じ、唾を飲み込み、そしてゆっくりと顔を上げる。


「君たちに命令するつもりはない。だが、覚えていてほしい。これからの戦いは、俺たちだけのものじゃない。テオに何かを奪われた者すべての戦いだ。そして、もしこの場所が無実を守るために作られたのなら――創造主の犠牲を、ただの過去で終わらせていいのか?」


リーフィは唇を噛み、そっと頭を下げた。


「今夜だけ…考える時間をください。」


リュウガはうなずいた。

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この物語はメキシコ出身の作者「ジャクロの魂」によって執筆されています。 お気に入り・評価・感想などいただけると、物語を続ける力になります! 応援よろしくお願いします!
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