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第80章 – ミラージュ・サンクトゥムの心臓(しんぞう)
ミラージュ・サンクトゥムの巨大な扉が、静かな油圧音とともに開いた。
中から吹き出したのは、爽やかで芳しい風――
そして、その奥に巨大な影があった。
暗闇の中、黄色い光を放つ一対の目が静かに輝いた。
「第一保護ユニット、起動。識別完了。確認:優先ゲスト、到着」
床が微かに震えた。
現れたのは全高4メートルほどの巨大ロボット。
幅広い胴体、柱のような腕。
そして黄金の仮面を思わせる装甲をまとった頭部。
その声は低く、音楽のように響き、
その身体からは穏やかな魔力の振動音が発せられていた。
「ご挨拶を。私はSTIR。
技術統合監視・迎撃ユニット。
サンクトゥムへ、ようこそ」
その場にいた全員が思わず立ち止まった。
本能的に一歩下がる者もいた。
ヴェルが目を細める。
「これは……ロボット? それとも巨人?」
スティアはゆっくりと彼女に顔を向けた。
「両方。
私は“選ばれし者”を守り、仕えるために設計された存在。
サンクトゥムが“ふさわしい”と判断した者には、扉を開く」
ウェンディは口をわずかに開いたまま、アイオに寄りかかる。
「もう……驚く余地