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第72章 – 光のかけら

ガレオン・ゴウシンの食堂の中央テーブルは、笑い声と温かい料理、そして安堵のため息に包まれていた。

天井から吊るされた金色の光は、まるで手懐けられた太陽のように穏やかで、焼きたてのパン、香辛料たっぷりの煮込み肉、そしてハーブティーの香りが空気を満たしていた。


クロウは、神に感謝するような顔で三皿目を貪っていた。

アンとアイオは、ジュースがクランベリーなのか、異世界の果実なのかを真剣に議論している。

ウェンディは、料理の組み合わせを科学者のようにノートへ記録中。

メグミとリシアは、ティーカップを軽く合わせて微笑んだ。

カグヤは、ゆっくりとスプーンを動かしながら、壁に寄りかかって食べようとしないプレティウムをじっと見ていた。


だがその賑やかさから少し離れた、柔らかな光に包まれた小さな部屋で――

セレステは木製の小さなテーブルを前に、ソファに座っていた。

隣には腕を組んだリュウガ。

向かい側には、穏やかな姿勢で琥珀色の液体を注いだグラスを持つイーオン。


会話は、形式を必要としなかった。

今、交わされているのは音ではなく、重みそのものだった。


「……じゃあ……」

沈黙を破ったのは、セレステだった。

「あなたは……私が生まれた時から、知っていたの?」


イーオンは静かにうなずいた。

その眼差しは穏やかで、どこか遠くを見ているようでもあった。


「そうだ。君が初めて目を開けたとき、私はそこにいた。

君の両親は、私のことを“頑固なジジイ”と呼んでいたよ。

……あの頃は、まだ白髪も少なかったがな」


彼は苦笑し、グラスに軽く口をつける。


セレステは視線を落とした。

彼女の瞳には、霧のような記憶の破片が揺れていた。


「覚えてるような、覚えてないような……

高い天井の家。窓から差し込む金色の光。

それから……笑顔のあなた。

今より、もっと笑ってた気がする」


イーオンは再びうなずいた。


「それは、間違いなくあの家だ。

君の母親は、いつも水晶の花で部屋を飾っていた。

父親は……君を肩に乗せる私を嫌っていたがな」


「頭を踏んじゃったから?」

セレステが少しだけ笑う。


イーオンは喉の奥から、くぐもった笑い声をこぼした。


「その通り。君は楽しそうだったが、彼は顔をしかめてたよ」


その後に訪れた沈黙は、決して重苦しいものではなかった。

それは、忘れ去られた記憶の余韻に満ちていた。


「私の両親……“組織”で働いていたんでしょ?」

セレステが顔を上げて尋ねる。


「そうだ」

イーオンは応じた。

「だが――騎士ではなかった。そう聞いていたか?」


セレステは小さくうなずく。


「“補助員だった”って、何度も教えられてた」


イーオンは、まるでその次の言葉に覚悟を込めるかのように、

グラスを静かにテーブルに置いた。


「それは……嘘だ。

いや、少なくとも、半分の真実しか語られていなかった」


セレステの目が大きく開かれ、

リュウガも無言で身じろぎしながら、耳を傾けていた。


イーオンは、静かでいて力強い口調で続けた。


「君の父、マレクは、戦略家として私が見た中でも屈指の頭脳を持っていた。

君の母、イレナは、印術の世界で数世代に一人とされる才女だった。

彼らは鎧を着ていなかったし、星の騎士団に正式に属していたわけでもない。

だが――彼らがいなければ、多くの戦いは始まる前に終わっていた」


セレステの指先が、膝の上でぎゅっと握られる。


「じゃあ……なぜ、それを私に隠したの?」


イーオンは、グラスに再び少量を注ぎながら、言葉を選ぶように語った。


「君が彼らのようになることを、恐れていたんだ」


セレステはまばたきをした。


「……恐れてた?」


「いや、愛ゆえに、だ」

イーオンは優しく見つめながら言う。

「君がこの“厄介なジジイ”とまた旅に出てしまうことを恐れていた。

彼らはいつも言っていたよ――

“もしアイツに似てたら、15になる前に戦場へ行くぞ”ってな」


彼は照れたように笑った。


「……そして実際、君はここにいる。しかも――想像を超える強さで」


セレステは深く息を吐いた。

天井の魔導ランプが一瞬、優しく揺らめいた。


「それで……両親は……どうなったの?」


イーオンの表情が変わる。

痛みではない。

だが、その答えには重さがあった。


「それは……君が自分の足で辿るべき真実だ。

私は……もう君に嘘をつきたくない」


セレステは下を向いた。

だが、その肩に、リュウガが手を置く。


その手は強く、温かく――何より傍にあるという証だった。


「お前は一人じゃない」

リュウガが言う。


セレステは彼を見つめ、静かにうなずく。


イーオンはそれを見届けると、ゆっくり立ち上がった。


「準備ができた時、全てを話そう。

騎士としてではなく――君を抱きかかえた、あの日のイーオンとして」


セレステは目を閉じる。


「……ありがとう、イーオン」


ランプの光が、少しだけ暖かくなった気がした。


そして隣の食堂からは、アイオの元気な声が聞こえた。


「さあ!クロウ、あーんして!火竜さん、お口開けて~!」


「うまいけど恥ずかしいわー!!」と叫ぶクロウに、

メグミとアンの笑い声が混じった。


セレステは目を細める。


小さな笑いが、胸の奥を温めていた。

最後まで読んでくださって、本当にありがとうございました。


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この物語はメキシコ出身の作者「ジャクロの魂」によって執筆されています。 お気に入り・評価・感想などいただけると、物語を続ける力になります! 応援よろしくお願いします!
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