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第68章(後半)― 線を越える決断

一方、森の中心部では――

戦闘は続いていた。


リエルとエオンは木々の間を稲妻のように駆け抜け、魔導弾をかわしながら、次々と機械兵を斬り伏せていた。だが、彼らが一体倒すごとに、まるでそれを補うかのように別の敵が現れた。


空気は、煙と汗と緊張に満ちていた。

葉は燃え、宙を舞い、魔法の閃光が周囲を焼き尽くしていた。


リエルは荒い息を吐きながら叫ぶ。


「師匠! こいつら、以前のと違います! 動きが……適応してきてる!こっちの動きを読んでる!」


エオンは、焦げた前髪と裂けたマントを振り払いながら、剣で敵を両断した。


「耐えろ……真の敵は、まだ姿を現していない」


――その時だった。


すべてが静止した。


機械兵たちが一斉に動きを止めたのだ。まるで一つの意思が全体を制御し、命令を切ったかのように。金属の脚は沈黙し、銃口は下がり、空気が一変した。


リエルは身構えた。


「……何だこれ……?」


エオンの目が細くなる。彼の声は、鋼のように冷たかった。


「――来たか」


木々が微かに揺れ始めた。風ではない。何かが森を押し進めている気配。そして、霧の中から、ひとつの影が現れた。


それは兵士たちのような無骨な姿ではなかった。

漆黒のロングコートを身にまとい、階級章も紋章もなく、静かに歩く人物。


フードの奥からのぞくその瞳は、異様なまでに青く、冷たく、人工的な光を宿していた。


背中には一本の黒い長剣。空気を切り裂くほどの薄刃。構えてもいないのに、殺気だけが剣のように走った。


リエルは一歩後退し、唾を飲む。


「……師匠……あれ、他のとは違う」


「……ああ。あれは兵ではない。指揮官か……それ以上の存在だ」


その存在は、何も言わずゆっくりと歩を進めてくる。戦闘の気配はない。しかし、その静けさがかえって異様だった。


エオンがまっすぐ立ち、赤いオーラがその身体を包み始める。炎のような気迫が一気に空気を変えた。


「……リエル。時が来た」


リエルも頷き、目を閉じる。


「了解です」


その瞬間、二人の身体から強大な光がほとばしる。地面が揺れ、木の葉が吹き飛ばされ、森が息を呑んだ。


エオンは、赤と金の重厚な鎧を纏っていた。胸には突進する猛牛を象った紋章。マントは炎の旗のように揺れ、剣は熱気を放ち、軋みながら光った。


リエルの鎧は翡翠と銀の色。鋭角な曲線が光を反射し、兜には曲がった角。剣は雷のように振動し、彼の鼓動と共鳴していた。


「――忘れられし真実のために」

エオンの声が森に響いた。


「――俺たち自身のために」

リエルが応える。


敵は何も言わず、静かに片手を上げて黒剣を抜いた。

その音はまるで、深淵が悲鳴をあげるかのようだった。


――そして、沈黙の中で突撃。


クラァァァンッ!!!


一撃目で木々が悲鳴を上げた。火花が飛び、衝撃が地を揺らす。


それは速度、力、そして技術の戦い。三者の剣が交差し、命を奪う芸術のような応酬が始まった。


敵の動きはまるで生きた影。回転、切り返し、逆手、跳躍――全てが洗練されていた。


エオンは防ぎつつも一歩後退し、顔をしかめた。


「……この技……ただの機械ではない!生身の剣士だ!」


リエルは背後から斬りかかろうとしたが、片手で防がれた。


「感情が……感じられない!まるで“意志を持つ空虚”と戦ってるみたいだ!」


ザァァク! ブォォンッ! キィィン!


火、雷、影。三つの属性が入り混じり、森そのものが戦場と化した。


回転斬り、カウンター、裏拳、防御からの打ち込み。

それは、まるで伝説の舞い――光と闇の決闘のようだった。


エオンは剣を交えながら目を細めた。


「……この剣術……まさか……」


「知ってるんですか!?」

リエルが叫ぶ。


だがエオンは答えなかった。

彼の内心では、ある確信がすでに芽生えていた。


――これは“兵士”ではない。

これは、“執行者”。

そして奴の使命は、捕縛ではない。

終焉をもたらすこと――それだけだ。

挿絵(By みてみん)

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この物語はメキシコ出身の作者「ジャクロの魂」によって執筆されています。 お気に入り・評価・感想などいただけると、物語を続ける力になります! 応援よろしくお願いします!
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