表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/324

第57章 – 指揮の瞳(コマンド・アイ)

「アーーーン!!」


母の叫びは、痛みと再会の感情に満ちていた。


ゴシン号の砲台区画。メタリックな床の上、すすと工具の破片に囲まれ、アンの体は横たわっていた。風が開いたハッチから吹き込み、頬の血を揺らす。カグヤが人型に戻り、彼女の母を船内へ連れてきたその直後だった。


母の瞳にはまだ“灰の世界”の影が残っていた。しかし、胸の奥で何かが弾けた。凍りついた感情が、温かく震え始めていた。


彼女は震えながらアンのそばにひざまずき、唇を震わせて言った。


「やっと…やっと…覚えてくれたの…?」


「アン…私の娘…私…あなたを置いて…!」


「ちがうよ、ママ。もうここにいるじゃない」


涙があふれ、温もりが戻っていく。


カグヤの分身がそっと肩に触れた。


「まだよ。今はあなたの役目じゃない。リュウガたちに任せて」



そのころ地上では、ゴーレムたちが再び前進を開始していた。圧倒的な重量が地を揺らし、ゴシン号の砲撃も効いていなかった。


リュウガは歯を食いしばり、拳を地に打ちつけた。


「くそっ…弱点が…どこだ…!」


その時——


鋭い痛みが彼の両目を貫いた。


「うっ…!」


地面に膝をつき、顔を手で覆う。


「リュウガ!」

セレステが駆け寄る。


しかし、それは“痛み”ではなかった。


目から光が溢れた——右目は蒼、左目は白銀に輝く。


世界のすべてが、スローモーションになった。仲間の魔力の流れ、敵の構造、感情の波——


すべてが「視える」


「……これは……」


彼は静かに立ち上がり、かつてないほどの確信を持って叫んだ。


「全員、俺の指示に従え!!」


プレティウムが目を細める。

その瞳——かつて見た、王者の瞳だ。



「カグヤ!マンティスとシュリンプの複合!側面を狙え!曲線で動け!」


「了解!"深海の鼓動——衝波突き(ディープパルス)!!"」


関節を砕き、装甲を割る!


「アン!糸を!」


「“輝く運命のスレッド・オブ・フェイト”!」


透明な光の網が、ゴーレムたちの手足を縛り動きを止めた。


「ヴェル、ハンマーフォーム!膝を狙って!」


「“天槌正義の一撃ハンマー・オブ・ジャスティス!”」


巨大な金色のハンマーがゴーレムの関節を破砕する!


「アイオ、脚を拘束して!」


「“音鎖リズム・チェイン——オベディエンス!”」


ヨーヨーが音速で回転し、脚に絡みついて締め上げる!


ゴーレムたちが膝をつく。


「リシア!全力で!」


「“千の彗星のミル・コメット!”」


天空から無数の光の矢が降り注ぎ、防御外装を破壊!


「プレティウム、爆弾を!」


「“忘却の破片シャード・オブ・ノーン!”」


闇の爆発が魔法障壁を壊し、構造を不安定にする!


「カグヤ、仕上げを!」


「“聖核雷破コア・レイ・ブレイク!!”」


胸元から放たれた純結晶の閃光が、ゴーレムの一体を粉砕!


「俺の番だ——“地裂轟旋ジオ・ストーム・サイクロン!”」


リュウガが掲げた剣が嵐となり、二体目のゴーレムを巻き上げて粉砕!



静寂。


砕けた石が降り注ぎ、光が空に広がった。


リュウガの瞳は光を失い、膝をついた。


「リュウガ!」

セレステが抱き留める。


「平気だ…まだ…完全には制御できないだけさ…」


「今のは…」

プレティウムが呟いた。

「……“指揮の眼”か」



アンは変身を解き、ゴシン号へと駆け戻る。


母は甲板に立っていた。涙を浮かべ、腕を広げて。


「ママーッ!」


「アンッ!!」


二人は強く抱き合った。陽光の中で、再び結ばれた母と娘。


「戻って…きたのね…!」


「あなたのおかげよ…アン…」


その様子を見つめながら、リュウガは静かに微笑んだ。


「闇を越える絆……それは——愛だ」


カグヤがつぶやく。


「……人の心ってのは…強いな」


アイオがプレティウムの脇でにやりと笑う。


「ねぇ、もしかしてそれ…褒めてる?」


「……たぶん、な」


ゴシン号は再び空へ。


だが進む先はもう「テオ王国」だけではない。


その先に待つのは、失われた真実。


そして——


本当の敵の、眼差し。

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

気に入ってくれたら、ブクマしてね!感想も大歓迎です!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この物語はメキシコ出身の作者「ジャクロの魂」によって執筆されています。 お気に入り・評価・感想などいただけると、物語を続ける力になります! 応援よろしくお願いします!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ