表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/324

第56章 – 岩の心、光の涙

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

もしこの作品が少しでも面白いと感じていただけたら、ぜひブックマークをしていただけると嬉しいです。

励みになりますので、よろしくお願いします!


大地が震えた。


ドォォォン! ドォォォン!


森の縁から二体の巨人が現れた。一体は筋肉質な人型、部族のような装飾をまとい、黒曜石と黒い水晶の破片で覆われている。もう一体はより巨大で無骨、まるで山そのもののような四角い腕を持つゴーレム。


どちらも灰色の巨大なコートを着ていた。ほつれた縁は、まるで古代の文明の残滓のように揺れていた。


その目は不気味な紅い光を放ち、生気を持たぬ人工の視線で辺りを見回していた。


「なっ…なんだあれは!?」

プレティウムが後退しながら声を上げた。

「服着たゴーレムだと…!?」


リュウガが眉をひそめた。


「違う…ただのゴーレムじゃない」


セレステが震える声で呟く。


「その姿は…欺瞞のためのもの。

…あの巨体で、速い…!」


その言葉通り、巨人たちはその大きさに似合わぬ驚異的な速度で動き出した。人型の巨人がアイオに拳を振るい、間一髪で転がって避ける。もう一体は腕を地面に叩きつけ、リシアとヴェルが飛び退いて躱した。


「ひゃああああ!?全然遅くないじゃん!!」

アイオが必死に着地する。


アンは歯を食いしばり、剣を抜いた。


「怖くなんかないっ!!はあああああっ!!」


一直線に人型の巨人へと斬りかかり、腕に斜めの一撃を加える。だが——


ザシュッ


刃は僅かに表面を削っただけ。深くは届かない。


「なっ…!? 全然効いてない!?!?」


「奴らの体は、ただの岩じゃない!」

セレステが叫び、プリズムの盾を掲げる。

「これは…普通の魔法じゃない!」


プレティウムが腕を上げ、暗黒のエネルギーを収束。


「喰らえ!」


カアァァンッ!!!


黒い閃光が四角いゴーレムの顔面を撃ち抜き、爆煙が辺りを包む。


だが——


煙が晴れた先に、ゴーレムはまだ立っていた。頬に僅かな黒い焼痕があるだけ。


「…ありえん」

プレティウムが呟く。


ゴーレムたちは低いうなり声を発する。その身体の奥から響くような、洞窟のような重低音。再び突進を開始した。


カグヤが素早く前へ飛び出す。


「変身、《エレファント・フォーム》!」


ズドンッ 巨体へと変化し、一撃を受け止める。


「変身、《ライノ・フォーム》!」


ドガアアッ! 角を突き立てて巨人を弾き飛ばす。


「変身、《ハーレクイン・マンティス》!」


バシュバシュ! 石の関節部に斬撃。


「変身、《ピストル・シュリンプ》!」


ポンッ! 音速の衝撃波で地面が裂ける。


しかし——


巨人たちはほとんど怯まなかった。


「まるで動く要塞…!」

セレステが叫び、リシアを守るように立ちはだかる。


アンは息を切らしながら、再び剣を握り直す。


「こんなの…おかしい!なんで倒れないのよ…!どいてぇぇぇっ!!」


リュウガが叫ぶ。


「アン、待て——!」


遅かった。


四角いゴーレムが拳を振り上げ、無防備だったアンに直撃。


ドゴォォォン!!


「アアアアアアアアアンッ!!!」

全員が絶叫する。


アンの身体は空中へと吹き飛ばされ、ゴシン号の側面に叩きつけられた。


機体が揺れ、金属がめくれ、煙が立ち込める。


カグヤがすぐに駆け寄る。船体の一部は崩れ、割れた金属の中にアンが倒れていた。顔に血、意識はかすか。剣は彼女の手から離れていた。


「アン!!」

カグヤが抱き上げる。


その時——


騒音に惹かれたかのように、船内にいたアンの母が歩み寄ってきた。彼女を見張っていたカグヤの分身が警戒する。


だが、母は立ち止まり——


視線を落とす。アンの傷だらけの姿に。


……。


その瞳に、変化が生まれる。


「ア…ン…」

震える唇。


「アン… アン…」


目に涙が浮かぶ。


そして——


一滴の涙が、頬を伝って落ちた。


「私の…娘…!

アン…!!

アンーーー!!」


虚無の支配が、絶叫と共に崩れた。


彼女は膝をつき、アンを抱きしめる。


「ごめんなさい!! 傍にいられなくて! 守れなくて…!

私の子よ!!戻ってきてぇぇぇぇぇぇ!!」


カグヤはその姿に、そっと肩へ手を添える。


「…ようやく…心の灯が、戻ったみたいね」


外では、リュウガが静かに剣を掲げる。


その視線はまっすぐに、巨人を見据えていた。


「——ここまでだ」


「俺の仲間に、これ以上指一本でも触れるな」

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この物語はメキシコ出身の作者「ジャクロの魂」によって執筆されています。 お気に入り・評価・感想などいただけると、物語を続ける力になります! 応援よろしくお願いします!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ