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第47章:飛翔の翼

エレオノーラの陥落から数日が過ぎた。アムテの空は以前よりも澄み渡り、まるで過去の暗雲がゆっくりと晴れていくようだった。街は息を吹き返し、花が再び咲き、広場では子供たちが走り回っていた。かつて彼らを飲み込もうとした恐怖など知らぬままに――。


城の中では、重く厳かな空気が漂っていた。会議の間には、リュウガ、セレステ、カグヤ、クロ、アン、アイオ、ヴェル、リシア、そして王子がそろっていた。


「それで……決めたのか?」

王が厳しくも理解ある声で尋ねた。


リュウガはゆっくりとうなずいた。


「はい。我々の次の目的地は、テオ王国です。」


その名は空気の中に鐘の音のように広がった。アンとアイオの目が、希望と不安に揺れながら輝いた。前に出たのはアイオだった。両手を胸にあて、しっかりとした声で言った。


「私たちは……以前のことを何も覚えていません。ただ、ある日目覚めたら、暗き影の中にいました。でも……リュウガたちが救ってくれた時、何かが心の奥で目覚めたんです。私たちは、自分たちが何者だったのか、今は何者なのか――それを知りたいんです。」


アンはアイオを見て、それから皆を見回し、震える笑顔で続けた。


「もし、あの場所に私たちのような人がいるのなら……助けたい。」


王は王妃と視線を交わした。先に口を開いたのは王妃だった。優しい声で言った。


「テオ王国は……最近距離を取っている。しかし、彼女たちの故郷であるのなら……行くべきです。」


王妃はヴェルに目を向けた。そして、次の言葉は娘へと向けられた。


「あなたはどうするの?」


ヴェルは唾を飲み込み、リュウガを見た。次に両親を見て、優しさと決意の入り混じる目で言った。


「彼と一緒に行きます。」


「本気か?」

王は眉をわずかにひそめた。「まだ正式な遠征ではない。予測できない危険もある。」


ヴェルは一歩前に出て、哀しげに微笑みながら深く頭を下げた。


「お父様、お母様……今まで守ってくれてありがとう。ワガママで泣き虫で、いつも迷惑ばかりかけた私を……ずっと愛してくれてありがとう。リシアはいつも私の傍にいてくれて、二人とも私に道を示してくれました。でも、この城に残っていては、私はいつまでも“王女様”のままです。リュウガと共にいると……私はもっと強く、もっと誰かのために動ける人間になれる気がするの。」


王妃は立ち上がり、ヴェルを強く抱きしめた。王も立ち上がり、固く口を結んで感情を抑えていた。


「行きなさい、ヴェル。お前にはもう……翼がある。その翼で、飛べ。」


リシアも前へ出た。


「私も行きます。ヴェルの側にはいつも私がいたし、これからもそうでありたい。そして……テオに行くことで、私にも答えが見つかるかもしれない。」


王子は腕を組み、にやりと笑った。


「ずっと行ってみたかったんだよな、テオ王国。今回は……なんだか特別な旅になりそうだ。」


王は銀の紋章を手にし、それをリュウガへ差し出した。紋章には王家の紋が彫られていた。


「リュウガよ、我が国の英雄として、この印を持って行くがよい。それは道を開き、疑念を閉ざす。我々の信頼と誇りの証だ。」


リュウガはそれを受け取り、全員に一礼した。


「ありがとうございます。必ず答えを見つけてきます。そして、彼ら全員を命にかけて守ります。」


ヴェルがそっとリュウガの手を取り、微笑んだ。


「私たちも、あなたを守るからね。バカ。」


セレステは笑い、カグヤはリュウガの肩を軽くたたいた。


「死なないでよね。誰が先にキスするか、まだ決めてないんだから。」


「もうしたけど。」

クロがそっと言った。少し恥ずかしそうに微笑んで。


「えぇっ!? ずるいっ!」

アイオがいたずらっぽく抗議する。


アンはただ、くすくすと笑っていた。


王が最後に高らかに宣言した。


「では行け! 王国のために! 真実のために! そして、君たちが築く未来のために!」


拍手が部屋に鳴り響いた。


そしてこうして、旗が高らかに風に揺れる中、リュウガとその仲間たちは、今や彼らの家となった国を後にした。

その先に待つのは、テオ王国――過去の影が、彼らを待ち受けていた。


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この物語はメキシコ出身の作者「ジャクロの魂」によって執筆されています。 お気に入り・評価・感想などいただけると、物語を続ける力になります! 応援よろしくお願いします!
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