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第46章 ― 裁き

エレオノーラが倒れてから数日が経った。王国には少し軽やかな空気が流れていたが、城の奥深くでは、真実が今にも爆発しそうな釜のように煮えたぎっていた。


玉座の間には、リュウガが王と王妃の前に立っていた。その隣には、ヴェル、リシア、クロ、セレステ、アン、アイオ、カグヤ、そして王子が並んでいた。


王は巻物を広げた。そこには、手紙、記録、財政書類、そして無数の名前があった。


「一人でできることではない」王妃は険しい表情で言った。「エレオノーラには協力者がいた。強力な…内と外にね」


ヴェルは拳を握りしめた。リシアは悲しげに視線を落とす。王子は低いが確かな声で語った。


「これは単なる裏切りじゃない…王国を内部から乗っ取ろうとした組織的な企てだった」


リュウガは腕を組み、前へと一歩踏み出す。


「ならば動かねば。もしこの網を残せば、毒はまた広がる。罰は…徹底的でなければ」


「まさか…」王子が問いかけ、目を見つめる。


リュウガは一切躊躇せず、その視線を受け止めた。


「そうだ。全員、死刑だ。悔い改める機会があったのに、それを選ばなかった。彼らは自らの運命を選んだ」


王子は拳を握りしめる。


「中には、我が王宮の貴族たちもいた…エレオノーラを長年隠していた者たちが…」


リュウガはヴェルの傍に立ち、名前の並んだ書類を冷たい目で見つめていた。


「今、止めなければ…」リュウガは言った。「また奴らはやる。奴らでなくとも、奴らの子や弟子がやる。平和は一時のものになる」


王は王妃に目をやった。王妃は静かに茶を持ちながら…頷いた。


「認可するわ」王が言う。「我らのやり方で、裁きを下す」


リュウガは立ち上がり、都市の地図をテーブルに広げた。


「計画はある。明日、公開式典の間に実行する」


王国中央広場では式典が進んでいた。金の旗が太陽の光を受けて輝き、民衆の歓声が街に満ち、鐘楼の鐘が誇らしげに鳴り響いた。


王は金の剣を手に取り、それをリュウガの肩に当てた。リュウガは白地に金の装飾が施されたマントを纏っていた。


「今日この日、我らの命を救い、娘たちを救い、この国の未来を守った男に敬意を表す!」王は力強く叫ぶ。「リュウガ・ハシモトよ、王冠の名の下に、汝を王国の英雄とする!」


群衆は歓声を上げ、喝采が響き渡る。しかし、その裏で、王国の各地では別の式典が密かに行われていた…静かで、致命的な裁きの儀式が。


後継者の間

場所:フォン・トラセク邸

犠牲者:リュウガとその両親を侮辱した三人の貴族


「乾杯しよう、諸君」家長が赤いワインの杯を掲げた。「嵐は去った。エレオノーラは愚かだった。我々は生き残った」


「リュウガなんて…王の気まぐれさ。すぐに消えるさ」と若者の一人が笑う。


扉が静かに軋んだ音を立てて開いた。誰も反応しなかった。だが、影の中から、黒と紫のマントを纏い、編み込まれた髪と戦闘用グローブを着けたクロが姿を現した。


「不処罰を楽しんでるのかしら」その声は鋭い囁きだった。


「誰だお前!衛兵を呼べ!」父親が叫ぶ。


だが、応答はなかった。


クロはゆっくりと、魔法の暗黒の刻印が刻まれた二丁の銃を掲げた。


「王国への反逆の罪により…」最初の男の頭を撃ち抜いた。

「…陰謀と操りの罪により…」父親の心臓を撃ち抜いた。

「…ヴェルと我が姉妹を危険に晒した罪により」最後の男は膝をついたところで弾丸を受けた。


沈黙。クロは同じ扉から姿を消す。残ったのは落ちる杯の音だけ。


毒された晩餐

場所:ラレント邸

犠牲者:資金提供に関与した貴族たち


蝋燭の下で杯が光る。笑い声が食卓を満たしていた。


「新しい秩序は来た。リュウガなどただの駒だ」と伯爵が言い、唇にワインをつけた。


給仕していたのは、カグヤだった。タイパンの姿で、蛇のような目と光沢のある肌。すべての杯は彼女の分泌した溶解毒に覆われていた。


乾杯の瞬間…それは最後の一杯となった。


一人は七面鳥に顔を突っ伏した。もう一人は「中から燃える!」と叫び転げまわる。三人目は空に向かって懇願した。


カグヤはハンカチで顔を拭き、静かにその場を後にした。


逃亡の夜

場所:貴族街裏手の路地

犠牲者:貴族とその愛人


一人の貴族が若い女性を急かして裏口を抜けようとしていた。


「急げ!金は馬車にある。この混乱を利用しない手はない!」


銃声が響いた。胸が赤い花のように開いた。女が叫ぶが、逃げる前に眉間を撃ち抜かれた。


犯人はリュウガの分身。冷たい目をした彼は霧の中へと消えていった。


黒曜石の影

場所:ファエンラル邸

犠牲者:ファエンラル伯爵夫妻


彼らは宝石と書類を詰めながら邸内を走っていた。


「急げ!エレオノーラと関わってたのがバレる前に!」


扉が音を立てて閉まる。セレステが黒曜石の姿で、彼女自身が創り出した水晶の柱の間を歩いてきた。


「自分で蒔いた種から逃げるべきではなかったわね」冷ややかに言う。


邸は封鎖された。静かな爆発が内部を吹き飛ばし、屋根の上のカラスたちだけがそれを見ていた。


狩り

場所:東の森

犠牲者:侯爵とその息子たち


「撃て!奴を撃て!」侯爵が叫んだ。


「…鹿じゃない!」少年が怯える。


霧の中から、黒いユニコーンの姿をしたヴェルが現れる。隣には、矢を弓にかけたリシア。


「なぜ…?」侯爵は立ち尽くした。


「怪物も家族で狩りをするのよ」リシアが囁く。


矢が心臓を貫いた。森は泣かなかった。ただ静かに彼らの死体を飲み込んだ。


赤ずきんの裁き

場所:テヴァル邸

犠牲者:最後の集まった貴族たち


主の間で、彼らはエレオノーラの死を祝っていた…自分たちは無事だと思って。


「未来に乾杯!」


灯りが落ちた。


「衛兵はどこだ?」


柔らかな笑い声。血塗れの赤ずきんの姿をしたアンが、踊るように歩いてくる。


「狼から逃げ切れると思ったの?」


影から黒い狼たちが現れた。彼らに飛びかかり、音もなく…絶命させた。


英雄の戴冠式


トランペットが鳴る。リュウガは民衆の前にある壇上に登った。王がその腕を掲げる。


「今日、この国と神々の前で、リュウガを我が王国の英雄とする。お前はもう異国の者ではない、リュウガ。お前は我が息子だ」


「そして、我らの守護者よ」王妃が黄金の帯を彼にかける。


リュウガは目を閉じた。民衆が感動に沸く中、彼の思いは…今しがた死んだ名前たちへと向かっていた。その正義は公ではなかった。静かなるもの。しかし、必要なものだった。


ヴェルが彼の手を取った。


「…終わったの?」


リュウガは彼女を見つめた。


「いや。でも…今日は勝った」

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

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この物語はメキシコ出身の作者「ジャクロの魂」によって執筆されています。 お気に入り・評価・感想などいただけると、物語を続ける力になります! 応援よろしくお願いします!
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