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第4章 ロック解除

見えない鎖が解き放たれたとき――

現れるのは、ただの力ではない。


それは真実。

それは、“本当の自分”。


過去は傷を残す。

だが未来は――

その傷を、武器に変えることができる。

翌朝、彼らは西へ向かって出発した。


森は静まり返っていた。

だが、地面は物語っていた――


壊れた荷車。

荒らされた木箱。

まだ乾いていない血の跡。


「……ちょうどこの辺り」

カグヤがしゃがみ込み、泥の上の足跡に触れながらささやいた。


リュウガが追跡スキルを起動する。

青い閃光が彼の視界を走る。


「ゴブリン八体。隠れている。接近中だ」


セレステが弓を構える。


「試作品の出番ね」

ゴブリンたちが突如飛び出してきた。

怒声。錆びた剣のきしむ音。


リュウガが魔法陣を描く。


「氷の槍!」


氷の槍が三本、敵のリーダーたちを貫いた。


セレステは光の矢を放ち、さらに二体を射抜く。


カグヤは武術だけで、二体のゴブリンを流れるような動きで制圧。


最後の一体が逃げようとする――


だがリュウガが叫ぶ。


「重力反転!」


ゴブリンは宙に浮き、そして――地面に叩きつけられた。

意識を失った。

「……なかなかのチームね」

カグヤが手を払いながらつぶやいた。


「無駄がない。自然な連携だった」

リュウガはゴブリンの死体をインベントリに収納する。


だが、そのとき――


ミシッ……


木々の奥から、不気味な音が響いた。


闇の中に、

何かがこちらを見つめている。


そして――

それは煙のように、ふっと消えた。


「今のは……ゴブリンじゃない」


彼らはさらに森の奥へと進んでいった。

光が消えていった。

森はさらに濃く、さらに暗くなっていく。


「……おかしいわ」

セレステが小さくつぶやく。

「カグヤのそばにいるべきだった……」


「彼女を見つけなきゃ」

リュウガが歯を食いしばる。


そのとき――


シュッ!

ナイフが木に突き刺さった!


そして、闇の中から――

カグヤが姿を現した。


だが――

彼女は、“彼女”ではなかった。


目は虚ろ。

動きは機械のようにぎこちない。


「カグヤ!? 俺たちは味方だ!」


彼女は一切ためらわず、攻撃を仕掛けてきた。


リュウガが分析魔法を発動。


[精神操作]――検出


「操られてる!」


「セレステ、動きを止めてくれ!」


「了解!」


セレステが呪文を放つ。


「イーグル・チャージ!」


まばゆい光が炸裂し、

カグヤはその場で気を失った。


リュウガが彼女を確認する。

足には黒い紋章が輝いていた。


「浄化!」


紋章は灰のように崩れ、消えていった。


カグヤが目を開け、震えながら言った。


「わ、わたし……そんなつもりじゃ……」


セレステが彼女を抱きしめた。


「話して。私たちが――助ける」

「――“黒い手”」

カグヤは、かすれるような声でそう言った。


村々を奴隷にし、

両親を奪い、

彼女に刻印を残した組織。


「私は……操り人形にされたの」


戦えば戦うほど、

抵抗するたびに、

苦痛が身体を突き刺した。


セレステがそっと手を取る。


「もう、あなたは一人じゃない。

私たちがついてる」


カグヤの頬に、涙が伝った。

重荷を一人で背負わなくてよくなった瞬間だった。


リュウガは二人を見つめ、告げた。


「君たち二人には、**“未完の職業”**がある」


「それって……どういうこと?」

カグヤが尋ねる。


「君たちの中に、封じられた力が眠っている。

そして――君が望むなら、僕がそれを解放できる」


セレステが一歩前に出る。


「お願い。

自分が誰なのか、知りたいの」


リュウガは彼女の額に、静かに手をかざした。

カグヤは――

神殿で目を覚ました。


空には桜の花びらが舞い、

柱は苔に覆われていた。


そこに現れたのは、深い蒼の鎧を纏った戦士。


「私はニンシ。初代“蒼き影”」


「君を……待っていた」


カグヤの身体がわずかに震える。


「なぜ……私なんですか?」


「君は倒れた。

それでも、立ち上がった。

愛する者のために、戦った」


青い光の球が、彼女の前にゆっくりと浮かび上がる。


「私が君を選ぶ必要はない。

君は――自分自身をすでに選んでいた」


その球に手を伸ばした瞬間、

力が身体に流れ込む。


炎。

勇気。

決意。


「私は影。

映し出す存在。

闇の中から守る者。

私は……忍。」

現実へ戻って――


カグヤが、ゆっくりと目を開いた。


蒼いオーラが、彼女の全身をやさしく包み込んでいる。


リュウガとセレステは、息をのんで彼女を見つめていた。


カグヤは――

初めて心からの笑顔を浮かべた。


「今なら、はっきり言えるわ」


「――私は、戦う準備ができてる」


挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

過去が、彼女を定義することはなかった。

痛みは、もはや鎖ではない。


それは今――武器となった。


そしてその武器を携えて――


彼らは「黒い手」に立ち向かう。


この世界を、解き放つために。

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この物語はメキシコ出身の作者「ジャクロの魂」によって執筆されています。 お気に入り・評価・感想などいただけると、物語を続ける力になります! 応援よろしくお願いします!
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