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第44章 腐敗

戦場は激しい衝突の波動で震え、空は赤く染まり、魔力の唸りと戦の叫びが混じり合っていた。その混沌の中心で、カグヤは「ブラックマンバ」の姿で、漆黒の忍の闇に包まれながら音もなく動いていた。


「そろそろ……沈黙の毒を味わわせてあげる。」


忍法――《死舞・真夜中のミッドナイトファング

瞬時に姿を消し、敵兵の間を縫うように出現。毒を帯びた刃で次々と急所を突き、カグヤの動きはまさに死の舞。技名を囁くと、瞳が蛇のように光り、敵は何が起きたかも分からぬまま倒れていった。


「蛇の抱擁から……逃げられない。」


その瞬間、彼女の身体が変化し、巨大な蜘蛛の姿に変わる。八本の脚は古のルーンで輝き、毒の液が牙から滴った。


「さあ、終焉を紡ぎましょう……」


技――《呪網・千の囚われ(レッド・マルディータ)》

腹部から放たれた黒く鋭い棘のついた糸は、無数の敵を包み込む。魔力毒が宿ったその糸に触れた者は一瞬で麻痺し、武器すらも切断できない網の檻に囚われた。


「この糸一本一本に、私の毒が込められているわ……逃げ道なんてないの。」


そして、再び姿が変わる。今度は煌めく鱗を纏った《天空ベタ魚形態》。鋭い瞳と魔力に漂うような優雅なヒレが揺れる。


「深海の底で……もがいてみなさい。」


水流術――《紅台風・斬潮タイフーン・カルメシ

空中で渦のように旋回しながら、カグヤは鋭利な水の刃を四方に放つ。それぞれが波のように襲いかかり、敵の鎧を切り裂き、陣形を崩壊させていく。


「道を開けなさい――さもなくば、海の底に沈むだけよ!」


王国軍に風が吹き始めたその時、遠くの丘から強烈な魔力の爆発音が響く。そこに立っていたのはクロ。敵を山のように倒し、その頂に、青い魔力を纏ったスパイク付きの輪を背負っていた。


「遊びはもう終わり……本当の“痛み”を教えてあげる。」


手を掲げると、輪がさらに高速で回転し、凝縮された魔力の火花を散らす。


魔法技――《終輪・蝕の審判エクリプス・ジャッジメント

輪は宙へ飛び、いくつもの破片に分かれて魔力の刃となる。それぞれが敵を追尾し、命中と同時に爆ぜ、闇と光の閃光が舞い踊る。クロは剣を静かに下ろし、冷ややかに呟く。


「これはあなたたちが選んだ裁き。私は、それを執行するだけ。」


カグヤとクロの連携で、敵軍は混乱と恐怖に沈み、叫び、逃げ惑い、次々と倒れていく――戦場に、王国の希望が力強く刻まれていた。

神聖な沈黙がその場を包み込んだ。


戦いで荒れ果てた戦場の中央、ただ二人――王女ヴェルと、姉であり裏切り者のエレオノール――が対峙していた。


砕けた鎧、戦火で熱を帯びた武器……そして、王国の運命を左右する最後の決闘が始まろうとしていた。


後方では、傷跡が乾いた顔で王が重々しく声を発する。


「エレオノール……なぜここまで堕ちた……」

その声は震えながらも、確かな怒りと悲しみに満ちていた。

「血を裂き、民を壊してまで……どんな王冠を得るというのだ?」


王妃もまた、疲労の色を隠さぬまま、それでも毅然と娘たちを見つめる。


「あなたは私たちの誇りだった、エレオノール……今でも、その一部を信じたい。でも……もし拒むなら、ヴェルが、国のために立ち上がるしかない。」


王子は埃と汗にまみれた顔で拳を握りしめる。


「姉上、どれほど野心があろうと……やったことは正当化できない!力が欲しいなら、裏切らずに超えてみせろ!」


近くでは、剣を地に立てたアルウェナが荒い息を吐きながら言う。


「……もう、かつての彼女ではない。それでも……家族なのよ。心を裂かれようと、我々は闇に支配されるわけにはいかない。」


少し離れたところで、戦闘形態のままのアンとアイオが静かに見守っていた。


「……ヴェル、泣きそう。」アイオが囁く。


「でもやるわ。あの子は強い心を持ってるもの。みんなのために戦う心を。」アンが涙をこらえながら答えた。


クロは、まだ魔力を帯びた曲剣を静かに下ろしながら呟いた。


「ヴェルが背負ってるのは……魂の重み。あれは王国のためだけじゃない。贖罪のため、愛のため……未来のための戦いだ。」


セレステは、傷だらけの身体で、それでも輝きを纏いながら微笑む。


「私の大切な友達……あの子は、自分が思ってるより強い。ずっとずっと勇敢よ。やっておいで、ヴェル!」


カグヤは、黒蛇の混合形態のまま腕を組み、低く言った。


「もう引き返せない。エレオノールは己の道を選んだ。そしてヴェルも……覚悟を決めた。」


戦場の中心で、エレオノールは剣をひねり、優雅で冷徹な構えを見せる。


「まだ私と戦う気?ヴェル……私はもう、あの頃の姉じゃない。あなたは、私の“今”を受け止める覚悟があるの?」


ヴェルはゆっくりと剣を下ろす――だがそれは、ただ力を蓄えるためだった。


そして、風が鳴いた。


最後の戦いが、始まった。

挿絵(By みてみん)




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この物語はメキシコ出身の作者「ジャクロの魂」によって執筆されています。 お気に入り・評価・感想などいただけると、物語を続ける力になります! 応援よろしくお願いします!
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