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第43章:タイタンの決闘

戦場は彼女の足元で震え、空は魔力の爆発ごとに裂けるようだった。


エヴェソルは、紫の威厳ある鎧と裂けたマントを纏い、黒いエネルギーに包まれた剣を構えて立っていた。


「見くびっていたよ、水晶の戦士よ。だが今こそ……本当の俺を見せてやる。」


彼が腕を掲げると、紫の魔力に包まれた獣がその隣に出現した――鋭い牙と呪われたルーンの翼を持つ魔獣の召喚。


「深淵獣:闇のフェンリル!」


狼は咆哮し、その音波が空気を震わせ、セレステに向かって突進する。


だが、セレステは一歩も退かなかった。ほんの一瞬目を閉じ、静かに呟く。


「プリズムモード:起動。」


その身体は強烈な光を放ち、磨き上げられたフローライトの鎧がスペクトルすべての色で輝く。


「プリズム・シンギュラリティ!」


彼女の胸から五芒星のような水晶核が宙に浮かび、回転を始めた。戦場の音が消え、時が止まったかのようになり……そして――


ヴォォォンッ!


その中心に小さなブラックホールが生まれ、エヴェソルの魔力弾、獣のエッセンス、環境マナすらも吸い込み始めた。


エヴェソルは後退し、驚愕する。


「な……何をしている……?」


セレステは輝く瞳で叫ぶ。


「あなたが奪ったすべて……倍にして返すわ!」


核が崩壊し――星のような爆発、プリズム・スターバーストが戦場をまばゆい恐怖で照らした。


ドォォォォォン!


多色の光の雨が大地を焼き、木々を吹き飛ばし、魔力の波動が数キロに渡って広がった。


そして、煙が晴れた時――


セレステはまだ立っていた。息を切らし、鎧にひびが入りながらも、威厳は崩れない。髪は宙に浮かび、まるで宇宙に立つかのようだった。


エヴェソルもまた立っていた。マントは燃え、肩は砕け、剣は震えている。


「……驚いたな。」彼は血を垂らしながら笑った。「やるじゃないか。」


セレステは一歩踏み出す。


「まだ終わってない。私は……守るべきものがある。あなたには、通させない。」


エヴェソルが剣を地面に突き立て、紫のオーラが渦巻く。


「ならば……まだ踊ろうじゃないか、水晶姫!」


二人は再び激突した。剣と剣、魔法と魔法。プリズムの雷光が闇とぶつかるたび、大地が震えた。


これは凡百の戦いではなかった。


それは、巨人たちの戦だった。プリズム・シンギュラリティの爆心地がまだ煙を上げる中、両者はなおも立っていた。


エヴェソルは剣を両手で構える。その刃には生きているかのようなルーンが輝く。


「お前の一撃には……理由がある。なぜ、そんなに強く戦う?セレステ。」


エネルギーの余韻に髪を揺らし、セレステは静かに答えた。


「守ることを知ったから。失うこと、操られること、不完全さ……そのすべてを越えて、私はもう、愛するものを奪わせない!」


星の光を纏い、セレステは突進する。剣が弧を描き、クリスタルの魔力がエヴェソルの闇とぶつかる。


カァン!


空気が裂け、大地が割れる。


エヴェソルは咆哮した。


「ならば備えろ!我が深淵に限界はない!」


彼は回転斬りで反撃し、叫ぶ。


「深淵の爪嵐くうらん!」


闇から無数の刃が現れ、セレステを包囲する。しかし、彼女は目を閉じ、腕を広げた。


「プリズム・リフレクトフィールド!」


光のドームが彼女を包み、刃は一つずつ爆発し、色とりどりの閃光に変わった。


「行かせない!」セレステは叫ぶ。「あなたは、自分のためだけに戦っている!」


煙の中、エヴェソルが飛び込む。


「俺は進化のために戦う!弱き者の鎖を断ち切るために!」


だが、その剣が振り下ろされる前に、セレステが身を翻し、剣の柄で殴り、回し蹴りで彼を吹き飛ばした。


彼女は追撃する。その一撃一撃に――


アイオとアンの笑顔。

クロの優しい声。

ヴェルの決意の瞳。

リュウガの、絶望を跳ね返す力。


「あなたは……一人ぼっちよ!」セレステの瞳に涙が浮かぶ。「それこそが、あなたの最大の弱点!」


エヴェソルは膝をつくが、かすれた声で笑った。


「それで……止まると思うなよ。俺には最後の切り札がある。」


だが、セレステは剣を構え、静かに言った。


「最終技――プリズム・インフィニティ。」


彼女の身体が光の渦に包まれ、回転しながら上昇。そして、闇すら裂く垂直の一閃を放つ。


バァァァァン!


爆風が戦場を吹き飛ばし、音が止まった。


エヴェソルは地面に倒れていた。剣は砕け、鎧は崩れ、彼の全てが敗北を語っていた。


だが――


大地が震えた。


「なに……これ……?」セレステが警戒する。


エヴェソルの胸から、紫の炎を纏った古の封印が浮かび上がる。低くうねる声が響いた。


「……それで……終わりだと思ったか……?深淵の本質は……封じられん……」


彼の身体が立ち上がり、黒い炎に包まれる。


「一緒には死なん……ならば、深淵の栄光と共に、爆ぜてやる!」


狂気の叫びと共に、禁断の印が輝いた。


「最終深淵術――“永影の怒り”!」


黒い球体が拡大を始め、すべてを飲み込もうとする。


セレステは絶望を叫ぶ。


「だめ!このままじゃ、全部が消し飛ぶ!」


その時、光の残像のようにリュウガが現れる。カグヤのポーションで魔力を回復した彼は、セレステの肩に手を置いた。


「俺が封じる!前を向け、セレステ!」


驚きつつも、セレステは下がる。リュウガが両手を掲げ、黄金のルーンを展開する。


「次元結印――『光の四重封』!」


力が収束し、エヴェソルの身体が自らの力に呑まれていく。


「ハハハ……いいぞ……この終焉も……また運命……!」


ドォォォォォン!


闇の爆発が反転した日蝕のように広がり――そして、消えた。


煙が晴れた時、そこには何もなかった。エヴェソルも、剣も、鎧も……全てが無に還っていた。


セレステはその場に膝をつき、呟いた。


「……消えた……」

リュウガが現れ、セレステの隣にひざまずき、優しく手を差し伸べた。


「君が……止めたんだ。正面から向き合って……そして、勝った。」

戦火の炎が戦場を照らし、エヴェソルの爆発の残響がまだ遠くでこだまする中、戦いの中心はなおも燃え盛っていた。残された敵――エレオノールに忠誠を誓う兵と、王座を奪わんとする傭兵たちが、王と王妃を包囲していた。


だが、王国の王アルデンと王妃リオラは、ただの高貴な血を引く者ではなかった。彼らは、かつて戦場を駆けた戦士でもあった。


「リオラ、昔みたいだな」アルデン王が微笑みながら、竜鉱石ドラゴンタイトで鍛えられた儀礼剣を構える。


「あなたが斬る先を導いて。私は光を届けるわ」

風に髪をなびかせながら、リオラ王妃は輝く杖を握りしめて応じる。


敵が一斉に襲いかかる。矢、剣、下級の魔法が飛び交う。しかし、ふたりの王のオーラはまるで長く抑え込まれていた嵐のように膨れ上がった。


「今だ、我が妃よ!」王が叫ぶ。


ふたりは手を取り合い、声を重ねる。


「王家最上級奥義――星冠の審判クラウン・オブ・ジャッジメント!」


空が裂けるように開き、戦場の上に黄金の王冠が現れる。ゆっくりと回転しながら、天空の魔力と神聖な力を蓄えていく。中央には純粋な光の球が現れ、ふたりの魔力がそれに注ぎ込まれた。


敵兵たちは、動きを止める。恐れに顔をこわばらせる。


「王国のために!」と王が叫ぶ。


「民のために!」と王妃が応じる。


星冠は光の槍を放ち、それは神の裁きのように地を貫いた。金と青の光の波動が周囲を一掃し、敵兵たちは吹き飛ばされ、武器を落とし、ある者は気を失い、ある者は光に包まれながら崩れ落ちた。


地が揺れる。


静寂が訪れる。魔力の火花だけが空気に残り、揺らいでいた。


王国軍の兵たちは、戦線でその光景を見届け、武器を高く掲げて叫んだ。


「国王陛下、万歳!!」

「王妃陛下、万歳!!」

「お二人こそ、真の英雄だ!!」


アルデン王は剣をゆっくりと下ろし、深く息を吐く。リオラ王妃はその腕を取り、静かに微笑んだ。


「ご無事ですか?」


「少し体が鈍ったようだが……一緒に戦う理由、思い出せたよ。」








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この物語はメキシコ出身の作者「ジャクロの魂」によって執筆されています。 お気に入り・評価・感想などいただけると、物語を続ける力になります! 応援よろしくお願いします!
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