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第33章 嵐の後


夕焼けに染まる空が金紫色に輝き、花々の香りがそよ風に乗って漂っていた。リュウガは回復した体を引きずるように歩み、石畳の小道を進んでいた。やがて、泉のほとりに新しい腕を静かに見つめるセレステの姿を見つける。


「セレステ」

リュウガがそっと声をかけると、彼女は顔を上げた。柔らかな視線だったが、瞳の奥には何かを抱えているようだった。


「どう、感じる?」

リュウガが隣に腰を下ろしながら尋ねた。


「変…わったわ」

彼女はゆっくりと手首を回しながら答えた。「これらの腕…前とは全然違う。私のもの、って感じがするの。生命を感じる。でも同時に、あなたの中でも何かが目覚めたような…。」


リュウガは視線を下げ、浮かび上がる残留メッセージを眺めた:

UNLOCK COMPLETE – アクセスパーシャル


「起動したとき…全身が崩壊しそうだった。最初は何の変化もなかった。ただ痛みだけ。でもその後…全てが爆発したようだった。」


「そして、あの全員に届いた光…」

セレステが横目でリュウガを見る。「あなたの光が、私たち全員に降り注いでいたの。クロに、ヴェルにも、リッシアにも、アンとアイオにさえ。まるで暗闇の中の灯台みたいだった。あなたが何をしたか、分かってる?」


「わからない…」

リュウガは拳を握りしめながら正直に答えた。「ただ、もう誰も傷つけられたくなかった。諦めるわけにはいかなかったんだ。」


セレステは小さく微笑んだ。


「それなら、おそらく…アンロックには、“力を求めるのではなく、力そのものになる”ことが必要だったのかもしれない。」


しばらく静寂が続く。すると、セレステが視線をそらしながら、囁いた。


「私と一緒にいてくれる?」


「え?」


「アンとアイオ…ヴェル、リッシア…みんな、あなたを必要としてる。あなたもみんなを大切に思ってる。でも私は…」


リュウガは今度はためらいなく彼女の手を握った。


「セレステ。まだ何を選べばいいかは決められない。僕がこの世界でどういう存在かもわからない。だけど一つだけ確かに言えることがある。ここに連れてきてくれたのは…君なんだ。君も、カグヤも、戦ってくれた。」


セレステはそらすように視線を逸らし、頬を赤らめた。


「ばーか。」


「知ってるよ。」


そのとき、ドアが控えめに開き、メイドが声をかけた。


「失礼します。…お二人の“あの”お話はまたにして。評議会が始まりましたので、お呼びです。」


評議会の間 — エレノア城

金色の紋章が壁を飾り、重々しい空気が漂っている。王、王妃、戦略家アルウェナ、王子、上級貴族たちが席につき、リュウガ、セレステ、クロ、カグヤ(肩に包帯)、リッシアが入室した。


王(重々しく)

「お集まりいただき感謝する。王国を、そして私の娘と盟友を救ってくれた。しかし、本題は『敵』だ。」


アルウェナがテーブルの地図に指を伸ばす。


アルウェナ

「ハークル家は想像以上に統制が取れていました。クラヴァック(Kravach)はその一員にすぎません。しかし、裏には“影の存在”がいると報告されています。生存者の証言は深刻です。」


一人の貴族が不満を露わにする。


貴族(不機嫌そうに)

「彼らは歴史もなければ金の称号すら持たぬ冒険者…国家防衛を任せるつもりか?」


会場に緊張が走る。カグヤが体を強張らせ、クロが目を閉じ、セレステが一歩前に出る気配を見せる。しかしリュウガがしっかり声を上げた。


リュウガ(静かだが確信を込めて)

「昨日の惨劇をまた繰り返したいのか?辞めてもいいなら言ってくれ。だが僕はもう黙って見ていられない。」


貴族が立ち上がる。


貴族

「許せぬ!」


王(怒りを込めて)

「もう十分だ。リュウガの言う通りだ。行動は称号より説得力を持つ。今後、君たちには戦術的権限と、機密についてのアクセス権を与える。」


評議会後 — 城内中庭

沈みかけた夕陽の中、背の高い三人の貴族一行が登場。顔には傲慢さが浮かび、場を圧する。


セレステが眉を細めつつつぶやいた。


セレステ

「…また来たわね。」


カグヤがヴェルの前に身を寄せる。


一人の金髪貴族が声を上げる。


金髪貴族

「プリンセス・ヴェルミラ!ちょうどよかった。評議会への陳情に“王女の意見”を頂戴できますか?」


ヴェルは固くなる。


ヴェル(強い調子で)

「話すことはありません。」


二人目の小男が鼻にかかった声で言う。


小男

「我々は舞踏会でも…」


クロ(鋭く遮る)

「それはセクハラでした。提案などではありません。」


三人目が冷ややかに吐き捨てる。


三人目

「静かな人形よ、自分の“居場所”をわきまえろ。我々は貴族。あなたたちはただの戦闘道具だ。」


空気が張り詰める。


リュウガが一歩前に出る。その表情は冷ややかだが毅然としている。


リュウガ(口元に笑みを浮かべながら)

「おいおい…今日は小喜劇か?見事なピエロが揃ったな。」


貴族たちは顔色を変える。


金髪貴族

「何だとっ…我らは…」


リュウガ

「敬意が欲しいなら、まずはヴェル姫に対する冒涜を止めろ。」


突然、貴族が杖を掲げ魔法を起動させる。


貴族

「私を挑発したことを後悔するぞ…」


リュウガはさらに近づき、淡く光るオーラをまといながら答える。


リュウガ

「失礼ながら、僕は何も王女に触れちゃいませんよ。貴方たちが敬う敬意は自分たちから捧げるべきものです。」


そのとき…


王(威厳ある声で)

「これ以上無礼を働くなら…その時は『自らの覚悟』を問おう。」


三人の貴族は沈黙のまま退場する。途中でつまずき、リュウガは呟いた。


リュウガ

「見ろよ、ラリー…次はモー、カーリーだな。」


混乱が走る中、セレステが微笑む。


セレステ

「…また乱入されたわね。」


カグヤも笑い、ヴェルは安堵の表情。リュウガは肩をすくめる。


リュウガ

「困った時は、そいつらに言えば済むさ。」


その後、王がリュウガを呼び寄せた。


「リュウガ…君はまだ全快じゃないと知っているが、よく戦ってくれた。だが…これを見てくれ。」


王が差し出したのは、古ぼけた文書、紫の封蝋で封印されたものだった。内容は衝撃的だった。


—Kravan (Kravach) は7年前、エレノア王国によって捕えられた凶悪犯罪者だった。100件以上の凶悪事件に関与し、無期刑となり、厳重に隠されていた—


リュウガ(困惑しながら)

「…どういうことだ?牢獄にいたはずの彼を、俺たちが野戦で相対したのか?」


「逃走ではない。解放されたのだ。」


場に緊迫が走る。


王妃

「数日前、極秘牢が空になっているのが確認された。魔法の拘束はすべて解除、解放されたのはクラヴァックだけでなく、13人もの凶悪囚人だった。」


リュウガは拳を握る。


リュウガ

「……で、犯人は?」


「今のところわからない。だが、貴様たちも…この盤上の駒であることは確かだ。」


リュウガは視線を巡らせた。

仲間たちの顔が浮かぶ。

目を閉じ、決意を込めて言った。


リュウガ

「これはもう、王国だけの問題じゃない。仕組まれた事件だ…俺たちを敵の核心に引き込むための。…俺たちはそれを阻止しなければ。」


ここで終幕となります。いかがでしょうか? リュウガは包帯に包まれたまま、ゆっくりと前に一歩を踏み出した。マントが床に触れ、疲れた瞳の奥に強い決意が光る。


――「陛下……」

彼は力強い声で口を開いた。「私があなた方にしていただいたことを、無視することなどできません。」


王は黙ってリュウガを見つめ、言葉を待っている。


「私には帰るべき国などありません……ですが、もし答えるべき王国を一つ挙げろと言われれば、ここが私の選んだ場所です。助けを求めていた私に、あなた方は避難所を与え、傷を癒し、仲間──彼女たち──を守ってくれました。私たちを道具でも兵器でもなく、人として扱ってくださいました。」


アルヴァード王はその言葉に唇を引き締め、感動の色を浮かべる。


「リュウガ……」


「だからこそ――」

リュウガは声を強めた。「私は冒険者として、同盟者として、そして一人の男として、この王国を守るために全力を尽くすことを誓います。 この陰謀の黒幕がこの世界にいようと、異世界にいようと、見逃すつもりはありません。クラーウァクのような怪物を解き放った者がいるのなら、その者が後悔する日が必ず来ると、ここに誓います。」


彼の瞳が力強く揺れ、王国の未来を見据えていた。王はリュウガの目をじっと見つめ、言葉は発さず、力強く彼の肩に手を置いた。


――「この王国は、もはやあなたを客人とは見なさない……あなたは我々の仲間だ。エレオノールはあなたをその力ではなく、その心によって認める。」


リュウガは厳かにうなずいた。


――「決して、裏切りません。」

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この物語はメキシコ出身の作者「ジャクロの魂」によって執筆されています。 お気に入り・評価・感想などいただけると、物語を続ける力になります! 応援よろしくお願いします!
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