第29章 絶望から希望へ
戦いは最も血生臭い頂点へと達する。
すべてが終わりに向かっているように見える時——
隠された力さえも、目覚め始める。
だが……それで足りるのか?
戦場は真っ赤に染まり、煙と灰、血が濃く漂い、息すら詰まるほどだった。地面は深紅の泥沼と化していた。
カグヤは膝をついて息を切らし、最後の輝きとともにそのすべての変身が壊れた霧のように消えていった。
――「ぐ…くそ…もう力が……」
リュウガは傷だらけの体を支えるように、倒れた石塊に寄りかかりながら、かろうじて炎をたたえたままの剣で、なお容赦なく迫る“あの化け物”を見据えていた。
セレステは血をにじませながらも、かろうじて立っていた。彼女は禁術を三度も超えて使い果たしていた。
――「……退かない……」
王と女王も、やけどや傷を負いながら、王家の武具を固く握りしめている。そのそばにはエリラとその弟が震えながら防御の姿勢を崩していなかった。
そしてその地獄の中心で――
クラヴァク。いや、もはや本物ではなかった。彼が踏みつけるのは、惨劇の残骸そのものだった。
鎧を脱ぎ捨てた彼の体からは、20を超える口が胴体や四肢、首からも無数に突き出し、同時に叫び、囁き、嘲笑し、泣き叫ぶ。皮膚は筋肉と砕けた骨が織り混ざり、再生された肉が壮絶な禍々しさを漂わせている。
彼はこの場で剣士の一人を喉笛ごと捕え、二股に裂けた舌で血を舐めた。
――「はぁあああ……これこそがあるべき舞台……苦痛、恐怖、そして――絶望……!」
女王を見下し、狂気に満ちた微笑を浮かべながら、彼は低く唸る。
――「この時を生き抜いた甲斐があった……こんな者さえ殺してきたが……でも――貴様は違う、青き血を宿す女よ。お前を喰らう。もし無理なら――その娘を、だ!」
――「黙れ、化け物!!」
エリラ王女が聖槍を投げつける。槍は宙を切り裂いたが、クラヴァクは素手でそれを受け止め、思い切り握り潰した。
――「お前は純粋な欲を止められるのか!うろたえた野蛮な本能こそが、真理だとでも言うのか!」
彼は猛然とエリラに襲いかかる――
――「姉を触るな!!」
弟王子が咆哮とともに駆け込み、彼女を盾にして受け止められた衝撃で飛ばされた。
その瞬間、リュウガが炎を帯びた刃を引きずりながら前に進んできた。
――「クラヴァク……おまえに息つく価値すらない……」
――「お前か?悲しき瞳の子供よ!失うものをすべて失った匂いがするな……そしてまた失うがいい!」
クラヴァクの凶暴な腕がリュウガめがけて振り下ろされる。
しかし、セレステが叫んだ。
――「だめっ!!」
魔法障壁が鉄のように響いてクラヴァクの衝撃をわずかにだけ止めた。
すぐに障壁は砕け散り――
リュウガは最後の技を放った。
――「ドラゴンフューリー:ラストシア!!」
炎に包まれた剣がクラヴァクの胴を貫き、一つの口が焼き切られた。
――「それがお前の全力か?!お前らには英雄などいない!!ただ死にゆく獣が、戦ごっこに興じているに過ぎん!!」
クラヴァクは狂ったように笑い、裂けた裂け目の奥から笑い声を響かせた。
カグヤは恐怖で震え、セレステは流血している。王と女王は後退りし、次の瞬間すらも生き延びられるか分からないほど追い詰められていた。
だが――クラヴァクはゆっくりと近づいてくる。
その邪悪な“勝利”を噛み締めるように。
皇宮の大鏡――アルノリスの鏡が銀の枠に浮かびながら、昼の光を乱反射している。赤と青の光が大理石の床を彩る。王都の威厳と共に、死の重みがその空間を支配していた。
ヴェルミラ――“ヴェル”と呼ばれた彼女は震える手で鏡に触れる。隣に立つリッシアは腕を組み、緊張を隠せない。
――「本当に映るの――?」
リッシアが囁く。
――「うん……アルノリスの鏡は、純粋な祈りがあれば映すって……リュウガたちが、戦場を見せて……!」
ヴェルが声を震わせながら手を置くと、鏡は波打つ。
揺らめく水面のように歪んだ後、映ったのは――破壊された野原。耐え立つ兵士たち。セレステが必死に耐えている。奥に見えるクラヴァク、その身体は複数の口から自らの仲間を貪っていた。
――「な……何……?あいつ、本当に……クラヴァク!?」
ヴェルの声が震える。
――「見て……セレステが向かってる!」
リッシアが唇を噛む。
――「行こう……彼女ならきっと……!」
戦場では再び轟音が響く。クラヴァクの巨大な体が一歩一歩地面を砕いていく。その死の臭気と腐敗の気配が漂う。
セレステは目に涙を浮かべながら……最後の力を振り絞る。
――「もう……あなたを――傷つけない……愛する者を――――やめさせる!!」
魔力が彼女の核から炸裂し、足元の大地が鈍く光る。
――「セイバーリンク:エクサ・サージ!!」
青く鋭い稲妻のような一撃が一直線に放たれる。
クラヴァクは異様な笑みを浮かべ、炎と瓦礫をくぐり抜け――セレステへと突っ込んできた。
――「くああああああ!!!」
リュウガとカグヤが叫ぶ。
間に合わなかった。
クラヴァクが彼女を捕らえ――機械の腕がボキボキと鳴った。
――「お前の玩具、特別かと思ったか?」
毒気を帯びた言葉を吐くのは、胸元に口のある口だ。
――「リュ リュウガ……!」
セレステの声が震える。
――「さあ……羽根のない舞姫よ、踊れ――」
生々しい“きしむ音”と共に、クラヴァクはセレステの機械の腕を引きちぎり――
床に飛び散った二つの機構がマントのように転がると、悲鳴と血飛沫が炸裂した。
――「あああああああああ!!!」
セレステの断末魔が野原と城壁にこだまする。
カグヤは硬直し、リュウガはひざまづいた――口を押さえながら震える声で、――「……セレステ……」
クラヴァクはそれを誇らしげに見下ろす。その巨大な腕を高く掲げ――口々に拍手するかのような“咀嚼音”が響いた。
――「これが――“お前らの愛”か?ククク……見事に壊れたな!」
両腕を玩具のようにひねりながら……
そして……リュウガとカグヤに向かって踏み出す。
そこで――悲鳴が重なった。
――「ヴェル……だめっ……!!」
二人は硬直しながらその光景を見つめていた。
――「これは……私のせい……私がここにいれば……!」ヴェルはひざまずいて涙をこぼす。
リッシアはうなだれるが、すぐに顔を引き締めた。
――「今は自責してる場合じゃない。これが戦い――なら、私たちで防ごう。セレステも、アナとアイオも――もし生きているなら。」
戦場では死の気配が濃く重く――瓦礫が炎に包まれる。
リュウガは立ち上がろうとしてぐらつく。ながれる血と傷が彼を蝕む。
クラヴァクは口々に嘲るように囁きながら……
――「疲れたか、虫けら?おまえは玩具がなけりゃ、姫たちさえ守れないのか?」
リュウガの背後に、暫くぶりに「UNLOCK」の文字が浮かんだ。
――「新たな力……か?」
時はない。選択の余地もない。
――「UNLOCK!」
彼は叫び、技を解放した。
閃光が走り、透明なエネルギーが彼を貫いた。でも――何も変わらなかった。
――「な、なんだ……?」
力の上昇も、変身も、光の明滅も、一切なし。
奈落の静寂。その瞬間――
クラヴァクが全身の力を込めた暴打で襲いかかってきた。
――「――死ね!!!」
巨大な棍棒がリュウガを叩きつけた。
彼は数メートル吹き飛ばされ、壁に衝突して爆音が響いた。
――「リュウガ!!」
セレステの声が砕けそうに響き、カグヤが駆け出した――
宮殿の玉座の間の前――アルノリスの鏡の前で、ヴェルとリッシアはその惨劇を見つめる。
――「リュウガ!」ヴェルは胸を押さえ、瞳を震わせる。
――「いや……このまま終わらせられない……」
リッシアは拳を強く握りしめた。
(ここに二人の幼少期の思い出へと続く追憶の描写が入る……)
この章のタイトル、「第28章:絶望の彼方」はどうでしょうか?
続きや加筆修正など、ご要望があれば教えてください!
空気は死の気配に満ち、瓦礫は燃え盛り、リュウガの足元の大地は血で染まっていた。
傷ついた兵士たちの悲鳴、前線を支える指揮官たちの命令、そして口の化身と化したクラヴァクの獣のような咆哮が絶望の轟音を奏でる。
リュウガはよろめきながら、荒い息を吐く。
鎧はへこみ、マントはぼろぼろ、全身に傷を負いながら、それでもなお──彼は立ち続けていた。
クラヴァクは不自然な笑みを、頬から頬へ、いや口から口へと広げながら、彼を見下ろす。
――「もう疲れたか、虫ケラめ?――お前は玩具がなきゃ何もできんのだ!姫を守る力すらないとはな!」
リュウガは一瞬、視線を落とす。だが、彼のHUDにある文字が浮かび上がった:
[能力解放:UNLOCK]
彼の瞳が大きく見開かれる。
――「新たな能力…か?」
時間はない。選択の余地もない。
――「UNLOCK!」
リュウガは叫び、その能力を起動した。
──だが、まったく変化なし。眩しい光も、力の奔流も、オーラの爆発も、一切なし。
――「なんだ…?」
鈍い静寂が包む。世界が止まったかのような数秒のあと──
クラヴァクが全身の力を込めて襲いかかってきた。
――「――死ねぇぇぇ!!!」
大きな棍棒が、リュウガを地面に叩きつけた。
その衝撃で彼は数メートル吹き飛び、石壁に激突。砂埃が舞い上がり、大地が震えた。
――「リュウガ!」
セレステの声が、声がれにも似た震えで遠くから届く。
――「くそっ…!」
駆け寄るカグヤの歯ぎしりが聞こえた。
玉座の間。アルノリスの鏡前に立つヴェルとリッシアは、息をのんでその状況を見守る。
――「リュウガ!」
ヴェルが胸に手を当てて叫ぶ。
――「こんな…終わりかたは…!」
リッシアが拳をきつく握りしめた。
ヴェルの唇が震える。
――「まだ…ヤツを失いたくない…。あたしのために、みんなのために戦ってくれた…!」
鏡はまだ、瓦礫と血の中で苦しむリュウガの姿を映している。
その時、遠くでクラヴァクの狂気の笑い声が響いた。
――「それが全力か?それが大英雄か?哀れよ!悲鳴すら小さいぞ!」
玉座の間に重苦しい静寂が降りる。地の震えが遠くから響き、城の石壁を振動させる。
鏡の前に立つヴェルとリッシア。魂が張り裂けそうな重圧の中で、二人はただ…息を呑むしかなかった。
この物語はメキシコ出身の作者「ジャクロの魂」によって書かれています。
異文化から描かれたファンタジーの世界をお楽しみください!
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呼吸と崩壊の狭間で、リュウガは底に辿り着く。
だが時として——深淵の中にこそ、本当の光は宿る。
「解放する」とは、どういう意味なのか?
そして今、命と死の境界が霞んだこの時——
アルノリスの鏡は、何を映し出すのか?