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第300章 – 「アウレリア&ノクサラ:双なる核、ひとつの誓い」

「夜を恐れずに癒し、命を忘れずに打つ。」

精神を剥ぎ取るものの残響は死んでいなかった。それはエルサスの心の脈に沿って這い回る、名を喰らう感染のようだった。地面からは水晶の虫が這い出し、精神ゾンビが忘れられた言語で祈るために口を開き、重力は不可能な弧を描いて歪んでいた。


リュウガは歯を食いしばった。命の力を代償にかけた封印が、ついにひび割れ始めていた。


――今がチャンスだ、と彼は息を切らしながら言った――。深淵の思考から切り離すか……それとも俺たちが、奴の記憶に成り果てるかだ。


セレステが一歩踏み出す。黒の谷の光が彼女の結晶に吸い込まれ、まるで二つの空が互いを飲み込むようだった。


――ならば、両の手を使おう、と彼女は言った。その声は、相反する鐘の音が重なったように響いた――。癒す手と、終わらせる手を。


装甲が花びらのように開く。左はエメラルドの緑、右は深紫。二つの光輪、二つの冠。アウレリアが左半身で輝き、ノクサラが右半身で星を刃へと下ろした。


I. 展開:「刃と夜」


トンネルは歌声と衝撃音で満たされた。


アウレリア ― 生命の鏡プリズム

緑の結晶が星座のようにチームを取り囲み、すべての敵弾を浄化して跳ね返した。ヴェルの傷は霜が溶けるように癒え、アイオの鼻血は止まり、アンは数分ぶりに深く息を吸えた。


ノクサラ ― 夜光のマント

セレステのもう一方の体は5秒間非実体化し、三つの幻影が別方向へ駆けた。精神触手が影を噛んだとき、ノクサラは背後に現れ、「静なる虚の印」を中枢に刻んだ。紫のルーンが、時を刻み始める。


――三十秒、とセレステが警告した――。爆発したら、すべてを巻き込みに来る。


――その三十秒、稼いでみせる、とリュウガが手を挙げた――。フォーメーション!


カグヤが壁を跳ねて護符を貼り、ウェンディが治療ドローンと魔力輸液ラインを展開。クロは前衛を担い、「永夜のノクターン」が肌下で脈打つ。リシアは転送糸で矢を縫い、増援の通路を遮断。スティアとパールは火力と精密で後方を守る。


洞窟が吠える。天井から、水晶の静脈で繋がれた寄生脳が降り注ぐ。群体の思考が響いた。


「適合する魂を検出……拘束を開始。」


――今日じゃない、とセレステは囁いた。


II. 緑の手:「輝きしガイアの詠唱」


アウレリアが剣を掲げた。斬るのではなく、歌った。


その旋律は壁に絡みつき、悪夢の菌類を清め、精神の水たまりを光の湖へと変えた。裂け目からは結晶の根が伸び、虫やゾンビを絡め取り、それらの力を吸ってガラスの粉に変えた。


――掃討完了!――とウェンディが叫ぶ――。続けて、セレステ!


――いくよ――アウレリアは「緑の再生斬」で空を駆けた。


その光の弧は、廊下の向こうでガーンの胸の傷を縫い、老練なオークは目を瞬かせ、黙ったまま感謝のうなり声を上げて立ち上がる。


エルサスの心はゆっくりと脈打ち、谷は一瞬だけ、痛みなく呼吸をした。


III. 紫の手:「千の嘆きの夜」


印のカウントがゼロに達した。


ノクサラが両腕を広げ、紫水晶の球体が怒れる惑星のように加速する。「静なる虚の印」は精神核の中心で爆発し、音なき内爆が寄生記憶の層を剥がし取った。


残響は叫ぶ。初めて、怯えたように。


「エラー……同一性の分離……」


――もっと、とセレステが容赦なく言う――。「影のプリズム・ダガー」


紫の刃は消え、敵の精神装甲の内部に再出現した。すべての刃は思念の糸を抜き、無音で焼き尽くした。


ノクサラの影は翼を広げた:至高形態 – 千の嘆きの夜

彼女は美しき喪の彗星となり、直視した者は恐怖で動けなくなった。


――今だ!――とリュウガが叫ぶ――。シンクロ!




リュウガは掌を掲げた。絆のヴィザーが、誰にも見えない線を照らす。


その地図は物理的ではない。感情の地図だった――痛み、震え、疑念が繋がる場所。


――アイオ、アンを加速しろ。「時兎」、ベクトル三。


――はいっ!――アイオが地面を叩くと、アンのために時間が映画の早送りのように進んだ。


――アン、扇型に札を投げろ。「アリシア通路」を作ってくれ。


――了解!


――カグヤ、三重の護符! 衝撃にはバイソン、流動にはシルロ、錨にはマンタ!


――忍法、「獣の三幅対」!


――クロ、俺の脈が“今”と言ったら、斬れ。


――……任せろ。


――ウェンディ、倒れたら起こしてくれ。


――倒れたら、地に縫いつけるわよ、分かった?


リュウガは息を吸い込む。命核の炎が彼を焼くことなく輝き、制御の限界で留まった。


これは殉教ではない。鍵だ。


――セレステ――彼は見つめながら言った――。奴の根を中央に引きずり出してくれ。


――皿に盛って出してあげるわ。




アウレリアが「星根」を精神核の下に突き刺す。ノクサラが側面の拘束を切る。アンが巨大なカードで通路を作り、残響をリュウガの前に落とす。


カグヤが印の輪を閉じ、リシアがポータル矢の天井を構築。スティアが安定装置を固定し、パールが隙間を正確な銃撃で縫い合わせる。


ヴェルは紅の花びらの幕を呼び、ミユキは意志を繋ぐ脊椎の祈りを歌う。


すべてが一拍の中で整列した。


――今だ!――リュウガが咆哮する。


クロが青い日蝕のように現れる。「蒼月の涙」で時間が3秒割れ、世界が遅くなる。


その不可能な隙間で、リュウガは一歩踏み出し、ノクサラが開いた裂け目に掌を突き刺す。


――「魂の共鳴」!


それは光ではなかった。共有された記憶だった。


アイオの最初の笑い。クロの恐怖が勇気に変わった瞬間。アンの頑固な優しさ。ウェンディの忍耐。ヴェルの優雅さ。リシアの忠誠。スティアの誇り。パールの静かな脈動。


――そして中心には、セレステが両の世界を支えていた――壊れぬように。


群体の思考が噛みついたが、溺れた。


「これは……なんだ……秩序がない……神もいない……」


――家族だ――とリュウガは囁いた――。お前が喰えない、ただ一つのものだ。


核が無数のガラスの蝶に砕け、切ることなく、風へと消えた。


エルサスの心が一度鼓動し……そして、静まった。


静寂。




リュウガは膝をついたが、意識は保っていた。ウェンディがすでに駆け寄り、治療と小言を始める。


――だから言ったでしょ、限界は超えるなって!


――超えてない――と彼は青ざめながら笑った――。その上をダンスしただけ。


セレステは双形態を解除し、オーラが核へと戻る。彼女は無言でリュウガの額に自分の額を当てた。手の震えはすぐには収まらなかった。


――完璧だった――彼が言う。


――みんなで、ね――と彼女は答えた――。この習慣、絶対に手放さない。


カグヤが息を吐き、クロが剣を納める。アイオがアンの腰に手を回す。ヴェルは花びらを塵に還すままにし、リシアはガーンとラヴェルの無事な姿を見て頷いた。


副通信にて、ヴィオラが報告:


――精神信号、安定。閉じ込められていた意識……穏やかに消失。苦痛なし。


――ありがとう――とセレステが目を閉じて呟いた。




岩のバルコニーから、ヴァースが見下ろしていた。レイナは眉をひそめ、イリスは金の目でデータを記録し、サリアは嵐の前を感じたように微笑み、イツキは槍を強く握りしめた。


――奇跡じゃない――とサリアが言った――。組織された人間の力よ。嫌いじゃないのが、悔しい。


――女神は……何も語らなかった――とイリスが困惑して呟く。


――誰かが代わりに答えた――とイツキがリュウガを見つめながら言った――。それが過ちか、それとも審判の始まりかは、まだ分からない。


爆発の跡の壁には、誰も刻んでいない印が残されていた。螺旋。静かに、だが確かに。


リュウガはそれを見て、冷気とは別の震えを感じた。


――見られてる――と彼は小さく言った。


――なら、見せてやろう――とセレステが揺るぎなく返す――。癒す緑と、許さぬ紫――その二つの眼を。


カメラは引いていく:疲れ果てたが生きているチーム、同じ画面に収まった一枚の命。深淵は、ようやく静かに息を吐いていた――しばらくの間だけ。


ヴォルテルの山々を冷たい風が吹き抜けていた。


夜明けか終焉か決まっていない空の下、イツキ・ヴァースは仲間を率いて歩いていた。地面は古びた結晶と鉄の塵で軋み、一歩ごとに、眠っていた記憶が目を覚まそうとしていた。


――深淵は黙った――と、青髪のイリスが呟いた。彼女の目はルーンの光で輝いていた――。けど、死んではない……ただ周波数が変わっただけ。


ピンク髪のレイナが、気だるげに短剣を弄ぶ。


――なら、無駄じゃなかった。静寂を勝ち取ったってこと。


赤と黒の髪をしたサリアが、短く笑う。


――静かでも、空気は預言の匂いがする。進んでいいのか、リーダー?


イツキはすぐには答えなかった。風が白黒のマントを翻し、石のように静かな目が遠くを見つめていた。


やがて、彼は低く、慎重に答えた。


――女神は、ただ見に行けとは言わなかった。「深淵が死する地、真実は目覚める」との啓示があった。


――その真実が、嫌なものだったら?――とレイナが問う。


――それでも、受け入れるしかない――と彼は返す。


やがて、風景は深い裂け目に開いた。中央には――半ば神殿、半ば機械のような構造体があった。


壁を覆う金の印は、いくつか破れていた。


――これ……――とイリスが囁く――。エルサスの波動で検出したのと同じ印。


――螺旋だ――とイツキが確認する――。つまり、本当だった。


慎重に近づく。サリアがエネルギーグローブの手を掲げて空気をなぞる。低く、唸るような共鳴が返った。


――中に何か生きてる。人間じゃない。


突然、空気が歪んだ。


青い霧に包まれたフードの人物が、印の中から現れる。空虚な鏡のような目が、イツキに突き刺さる。


――ヴォルテルの英雄たちよ……お前たちも贖いを求めるのか?


レイナが短剣を抜いた。


――てめぇ、何者だ?


――お前たちの首輪が生まれた時を見た者だ。女神に「最初の奴隷の設計」を与えた者だ。


静寂。


その言葉の残響が、チームの魂を貫いた。


イツキが一歩前に出る。槍が白光を放つ。


――なら、お前こそが、世界を壊した原因だな。


――違う、英雄よ――とフードの者が応じる――。私は命令に従っただけだ。だが本当に信仰を清めたいなら……螺旋を辿れ。ヴォルテルの心臓へ。


彼の姿は煙のように消え、古代の印が刻まれた浮遊する結晶だけが残った。


イリスがそれを慎重に手に取る。


――熱い……生きてる。


――じゃああんま触るなよ――とサリアが唸る――。呪いはもうたくさん。


イツキはそれをじっと見つめる。


――ヴォルテルの心臓……


その目が鋼のように引き締まる。


――帰る時が来たようだ。

挿絵(By みてみん)

――第300話、ここまで来られたのは、あなたのおかげです。

最初は小さな物語でした。けれど、読んでくれる人が一人、また一人と増えていって、

今、こうして300話を迎えることができました。


この世界はまだ終わりません。

リュウガたちの旅は、これからさらに深く、さらに広がっていきます。


もし少しでも「面白い」と感じたなら、評価やお気に入り、コメントで教えてください。

それが、作者である僕の力になります。


本当にありがとうございます。

――ジャクロの精霊

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この物語はメキシコ出身の作者「ジャクロの魂」によって執筆されています。 お気に入り・評価・感想などいただけると、物語を続ける力になります! 応援よろしくお願いします!
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