第290章 ―「ランクの代償」
ギルドの掲示板には、いまだにあの告知が貼られていた。「永遠の運命のトーナメント」という言葉が、松明の灯りに照らされて輝いている。周囲には冒険者たちが集まり、ざわめきと議論が絶えなかった。
リュウガたちは喧騒から離れた席に腰を下ろしていた。
セレステは告知を手に取り、もう一度読み上げた。
―「プラチナランク以上の冒険者のみ」… ―そう言って紙をテーブルに置き、ため息をついた―。これじゃ、私たちは対象外ね。
アンはほっぺたを膨らませた。
―そんなの不公平よ! 私、戦いたい!
アイオが控えめに手を挙げた。
―ぼくも…でも、僕たちって何ランクなんだろう。
リーフティが落ち着いた口調で答えた。
―君たちはまだシルバー、数人はようやくゴールド。プラチナへの昇格は、普通の任務じゃ無理よ。
ウェンディが、医師の眼鏡を直しながら補足した。
―ギルドの規定では、プラチナになるには「S級任務」の達成が必要。誰も手を出さないような、危険か無謀なものばかりよ。
場が静まり返った。
クロはテーブルを見つめながら、歯を食いしばった。
―つまり、死にに行くような任務に行けってことか。
リュウガは静かに頷いた。虚空を見つめながら、落ち着いた声で言う。
―その通り。トーナメントに出たいなら、俺たちは並のパーティーじゃないと証明しなきゃいけない。
セレステが眉をひそめた。
―そんなに当然みたいに言って…あなた、何を考えてるのよ、リュウガ?
彼は微かに笑った。
―不可能な任務こそ、やる価値があるってことさ。
そのとき、近くの冒険者二人がひそひそと話していた。
―聞いたか? ヴァース、もうエントリー済みらしい。
―当然だろ、あいつらはダイヤランクだ。首都じゃ誰も敵わないよ。
フローラの胸が締め付けられた。「ダイヤ」…その言葉は、今の自分たちとの距離を痛感させた。
カグヤは腕を組み、真剣な表情で言った。
―選択肢は二つ。命知らずの任務を受けてランクを上げるか…何もせずに外から眺めるか。
ヴェルが顔を上げ、瞳に決意を宿した。
―ここまで来て諦めるなんてない。女神の願いが本物なら、間違った手に渡る前に止めなきゃ。
ミユキは静かにリュウガを見つめ、微笑んだ。その笑みは柔らかくも、どこか影を帯びていた。
―やっぱり、あなたは受けると思ってた。あなたは、絶対に引かない人だから。
リュウガは立ち上がり、告知の紙を手に取った。
―よし。それじゃあギルドのカウンターへ行こう。今ある中で、一番危険な任務をくれって言うんだ。
ギルドのマスターは遠くから彼らをじっと見つめていた。細めた目で、低く呟く。
―あれが噂の異国の者たちか…もし生き残ったなら、プラチナと名乗る資格があるかもしれんな。
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