第286章 ― ヴォルテルの影
冒険者ギルドの喧騒が静まっていく中、リュウガ、セレステ、カグヤが身分証を提示していた。
他の仲間たち――アン、アイオ、ウェンディ、フローラ、クーロ、リシア、ヴェル、そしてアンドロイドたち――も、同行者として登録を完了させていた。
すべてが順調に見えた――その時までは。
アンが振り返ると、彼女のツインテールがふわりと揺れた。
「なに見てんの? 和風スカート着てる女の子が中世ギルドにいたって、別にいいじゃん!」
と、腕を上げて堂々と宣言する。
アイオはというと、8歳の日本の子どもが着ていそうなカラフルな服を着て、頬をふくらませた。
「全然おかしくないもん! それに、私がいちばんファッショナブルだから!」
「ファッションはさておき、注目されすぎだな…」とカグヤが腕を組んだままつぶやく。
ウェンディは白衣を整えながらため息をついた。
「この視線で1コインもらえるなら、ガレオンを3隻は買えるわね。」
フローラが一歩前へ出て、周囲をにらみつける。
その視線だけで、注目していた者たちは目をそらした。
「はい、見世物は終わり」
冷たく言い放つ。
リュウガが首の後ろをかきながら呟いた。
「ファッションショーをしに来たわけじゃないんだが…」
アンは軽く跳ねて、無邪気に笑う。
「でも、可愛く見えるでしょ?」
セレステは眉をひそめながら、額に指を当ててため息をついた。
「この調子だと、“ヴァース”の連中に見つかるのも時間の問題ね。」
ギルドを出て、夕暮れの風が頬を撫でる中――
子どもたちが広場を駆け抜けていたその時だった。
屋根の上に、ひときわ目を引く影が立っていた。
茶色のセミロングの髪。
深緑のアクセントが入った黒い戦闘服。
氷のように冷たい瞳を持つ少女――エリラ。
その声は、金属音のように冷たく響いた。
「……珍しい集団。実に、目立つ。」
リュウガが即座に顔を向け、警戒の目を向けた。
だがエリラはただ、静かに彼らを見下ろしていた。
「誰……あれ?」とアイオがアンの袖をつかんでささやく。
近くにいた商人が、まるで禁忌の名前を呟くように声を漏らした。
「……彼女は、“ヴァース”の一員だ。冒険者最高位の者たち。そして…そのリーダーは、“英雄”そのものだ。」
重い沈黙。
風が通り抜け、髪を揺らす。
フローラが一歩前に出て、仲間を守るように立つ。
だが、エリラは何も言わず、静かにその場を離れ、ヴォルテルの陰に消えた。
リュウガは拳を握りしめた。
「最高位の冒険者集団…すでに俺たちを“標的”にしたってわけか。」
セレステは真剣なまなざしで彼を見つめる。
瞳の奥に、緊張の光が宿っていた。
「まだ…始まったばかりよ。」
さっきまで服装で笑っていた仲間たちは、今や無言で歩いていた。
この都市の一歩一歩が、誰かに見られているかのように――
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