表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
302/324

第285章 ― ヴォルテルでの登録・後編

グループが登録を終えようとしていたとき、ギルドのざわめきが徐々に静まり返っていった。

まるで、空気を裂くような鋭い視線が彼らに突き刺さったかのように。


二階の手すりに寄りかかりながら、ある若い女性が軽い笑みを浮かべつつ、じっと彼らを観察していた。

茶色のセミショートの髪、深緑の縁が入った黒いジャケットにぴったりとしたグローブ。

いつ戦闘になってもおかしくないような、機能的な装いだった。


彼女の目がまず止まったのは、アイオ。

日本の夏祭りにいそうな、8歳の少女風の軽やかなスカートとカラフルなプリントのジャケット、そして中世風のこの世界にまったく馴染まないスニーカー姿。


次にアン。真紅の都会風ブラウスにぴったりしたパンツ。

そしてウェンディは、まるでスタイリッシュな女医のような白衣姿。

その光景を見て、彼女は小さくくすっと笑った。


「面白いわね」

その声は感情を削ぎ落としたように平坦で、金属的な響きを持っていた。

「この世界に合わない服装…。変装のつもり? それとも目立ちたいだけ?」


アンは顔をしかめて一歩前へ出た。

「関係ないでしょ。」


カグヤが警戒の目を向けながら、刀の柄に手を添える。

「……誰だ、お前は?」


その少女は階段をゆっくりと降りてきた。視線は微塵も逸らさない。

「ただの観察者よ。異邦人たちがどんな格好で現れるか、ちょっと気になっただけ。……でも、正直ね、そんなに場違いだと目立って当然よ。」


ギルドの中に再びざわめきが戻る。何人かの冒険者がそっと距離を取った。

まるで、誰かが火花を散らすのを恐れているかのように。


セレステが冷静な目で彼女を見つめ返す。

「何が言いたいの?」


少女は首を傾げて、どこか愉快そうに答えた。

「別に。ただ観察してるだけ。……あなたたちが、どれくらいこの地に“持ちこたえられる”かってね。」


そう言って、くるりと背を向けた彼女は、完璧な足取りで出口へと歩いて行く。

そして扉の前で一言だけ、まるで予言のように告げた。


「また会いましょう――生き延びていれば、だけど。」


クーロは歯を食いしばる。

「チッ……あいつ、何者だ。」


震える指で唇を押さえていた受付嬢が、小声で告げた。

「彼女は……“ヴァース”のメンバー、エリラです。」


リュウガの身体がわずかに強張る。

彼女が現れた瞬間に空気が変わった理由が、今やっと分かった。

“ヴァース”――それはただの名前ではない。


ヴォルテルという国において、“英雄”とは限らず、“怪物”である者もいるのだ。

挿絵(By みてみん)

章を読んでいただき、ありがとうございます。

昨日は体調を崩してしまい、更新できず申し訳ありませんでした。

少しずつ回復していますので、これからも応援よろしくお願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この物語はメキシコ出身の作者「ジャクロの魂」によって執筆されています。 お気に入り・評価・感想などいただけると、物語を続ける力になります! 応援よろしくお願いします!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ