第284章 ― ヴォルテルの登録
ギルドの内部は、ブーツの音、武器のぶつかる音、そして荒々しい声で満ちていた。
空気には汗、酒、なめし革のにおいが染みついている。
中央の装甲されたカウンターの奥には、金髪をきっちり結んだ受付嬢が、厳しい表情で書類を確認していた。
「次の方。」
リュウガが一歩前に出た。
その後ろにはセレステとカグヤ。
他の仲間たちは背後で待機し、周囲の冒険者たちが彼らを胡散臭そうに見ているのを警戒していた。
受付嬢が顔を上げた。
「身分証を。」
リュウガは、魔法の文字が刻まれたメダリオンを差し出した。
エレノア王国の紋章が静かに光っている。
セレステも、自身のプリズム家の紋章を提示し、カグヤは古代文字が書かれた忍びの巻物を差し出した。
受付嬢は目を瞬かせた。
「よそ者……エレノア出身? 珍しいですね。ヴォルテルでの登録理由は?」
リュウガは落ち着いた声で答えた。
「仕事だ。情報も欲しい。そして、冒険者としてこの地の動きを知る必要がある。」
受付嬢は数秒彼を見つめたあと、無言で登録にスタンプを押した。
「承認。過去の功績により、初期ランクは“シルバー・ハイ”とします。」
ざわりと、ギルドホールにざわめきが走る。
このランクから始まる者は稀だった。
中には鼻で笑う者もいれば、あからさまに警戒の目を向ける者もいた。
セレステが微笑みながら他の仲間たちを示した。
「彼らの登録もお願いします。」
アンとアイオは元気に前へ進んだ。
日本の現代風の服を着た二人に受付嬢は眉をひそめたが、登録を受け付けた。
リーフティ、ナヤ、スティアといったアンドロイドたちは、輝くコードの刻まれたプレートを提示した。
受付嬢は不審そうにそれを見つめた。
「妙な技術ね……。でも、任務を果たせるなら差別はしないわ。」
ヴェルとクロはそれぞれの紋章を誇らしげに提示した。
リシア(リュシア)は優雅に署名し、ミユキは聖職者の証を差し出した。
こうして全員が、名前と初期ランクが刻まれた金属のタブレットを受け取った。
受付嬢は声を落とし、厳しい口調で告げる。
「……何を求めてここに来たかは知りませんが、気をつけなさい。この国は英雄を崇拝している。余計な質問をするよそ者は、歓迎されないわ。」
セレステは冷たい笑みを浮かべ、軽く頭を下げた。
「心に留めておきます。」
カグヤは巻物をしまいながら、掲示板をじっと見つめていた。
その視線の先にあったのは、掲示板の最上段に掲げられた赤いエンブレムだった。
VERSE
ランク:スプリーム(最上位)
達成ミッション数:計測不能
損失:ゼロ
リーダー:不明
リュウガはそれを黙って見つめていた。
彼の中にある直感が告げていた。
自分たちの足取りは確かに“真実”へと近づいている。
だが、それは同時に、破滅の淵へと近づいていることも意味していた――。
章を読んでいただき、ありがとうございます。
昨日は体調を崩してしまい、更新できず申し訳ありませんでした。
少しずつ回復していますので、これからも応援よろしくお願いします。