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第276章 ― ヴォルテルへの航路

ガレオン号は、金色の雲海を突き進んでいた。

帆を叩く涼やかな風。

遥か下には、どこまでも広がる森と山々――

その向こうに、もうダイヤモンドの塔の姿は小さく遠のいていた。

まるで、過去の記憶のように。


船上では、仲間たちがそれぞれの時間を過ごしていた。

作戦の相談、旅支度、そして――

避けられぬ小さな衝突。

アンとアイオが、どちらの戦闘スタイルが優れているかで口論を繰り広げていた。

アンは光るカードを振りかざし、

アイオは魔法カポエイラの蹴り技を空中に連打する。


「私の塩花盾の方が絶対に役に立つってば!」

アンがムッと唇を尖らせる。


「はぁ? あんたのカードは飛ぶだけでしょ? 私の蹴りは巨人でも倒せるんだよ!」

アイオが軽くステップしながら反論。


ヴェルは鮭色のユニコーン姿でため息をつき、

リシアが弓を持ったまま呆れ顔で言った。


「このままだと、ヴォルテルに到着する前に私たちが見世物小屋に見られるわね」


無言で見守っていたアンドロイドたち。

その中でスティアが金属音を響かせながら口を開く。


「衝突を検出。――分離処理を開始しますか?」


「ちょっ、やめて! スティア、本気出さないでー!」

皆が笑いながら止めに入り、

場が一気に和らいだ。

その頃、リュウガは魔導地図を前に、

セレステ、カグヤと共に航路を確認していた。

ウェンディは腰に手を当てながら、食料や水の残量を報告。


すべてが順調に見えた――

だが、空気を切り裂いたのは、みゆきの声だった。


巫女装束の彼女が静かに近づき、柔らかな微笑を浮かべる。

だが、その瞳には不可思議な光が宿っていた。


「ねぇ、皆さん…わかってますか?」


みゆきはリュウガではなく、周囲の女性たちへと語りかける。


「あなたたちは、彼を知ってまだ短い。

でも私は違う。

リュウガがどんな嘘をつく時に微笑むか、

怒りを隠す時に黙るか、

嫌いな食べ物を“気遣い”で無理に食べるか――全部、知ってるの」


空気が、一瞬止まった。


アンとアイオは腕を組んで、冷ややかな視線を返す。

ヴェルはまばたきをしながら、少し距離を取る。

クーロは手を強く握りしめ、ヴォルテルでの苦い記憶が脳裏をよぎる。

セレステですら眉をひそめ、真剣な顔になる。


それでも、みゆきは危うい優しさを浮かべながら言った。


「つまり――私の方が、彼を誰よりも知ってるの」


「みゆき…今はそういう話をしてる場合じゃ――」

リュウガがため息混じりに口を挟もうとするが、


「いつ話すの?」

彼女は鋭く遮り、まっすぐに見つめた。

「いつかって、いつ?

リュウガ、私が“ただの一人”だと思ってるなら、それは違う。

私は……あなたと“ずっと”一緒だったの」

その場の緊張を、ふとした一言が吹き飛ばす。


ロバ少女のブルナが、おそるおそる手を挙げた。


「え、えっと…これってさ、リュウガ本人に決めてもらえばいいんじゃない?」


キツネのハルも苦笑いしながらうなずく。


「うん、誰かが海に投げ飛ばされる前にね~」


皆が笑い出す。

リュウガも、ついに肩をすくめて苦笑した。


みゆきは目を伏せたまま微笑む。

だがその目には、深く静かな“覚悟”が輝いていた。

夜がガレオン号を包み込む。

甲板に立つ仲間たちが、星のまたたく空の下、前方を見つめる。


その遥か先――青い霧の彼方に、

ヴォルテルの王国が、その姿をうっすらと現していた。


リュウガは静かに息を吸い込む。


「――あそこに、答えがある」


風が帆を強く揺らし、船体を押し進める。


まるで、“運命”そのものが、彼らを次の戦場へと導いているかのように。

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この物語はメキシコ出身の作者「ジャクロの魂」によって執筆されています。 お気に入り・評価・感想などいただけると、物語を続ける力になります! 応援よろしくお願いします!
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