表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
285/324

第268章(続)――「暴かれた鎖」

沈黙は鉛のように重く、

クロの告白は空気の中に浮かび続けていた。

否定も、忘却も――誰にもできなかった。


「……事実だ」

セレステが、冷静すぎる声で呟く。

「私の解析でも確認した。

複数の首輪から、同一の魔法式を検出した。

すべて、ヴォルテル由来の設計だった。」


リュウガがうなずく。

その表情は、まるで世界の重みを背負う者のように重かった。


「噂じゃない。

俺も奴隷市場を潰したときに聞いた。

売人たちは“誇り”をもって話していたよ。

“ヴォルテル製の首輪”だってな。

それを使うことが“格式”とされていた。」


その言葉が――

ヴォルテルの英雄たちに、見えない刃となって突き刺さる。


「……そんな……嘘よ……」

日本の弓使いが一歩後ずさり、震える手で弓を握り直す。

「私たちを迎えてくれたあの国が……守ると誓ってくれた国が……

その鎖を……“作っていた”の……?」


クロが拳を握りしめたまま、視線を上げる。

その蒼き瞳は、痛みと怒りに燃えていた。


「私は……それを“つけられた”んだ。

売られる時にね。

……まるで物みたいに。

その首輪には、確かに“VORTEL”の刻印があった。」




巫女であるミユキは、心が二つに裂ける音を感じていた。

リュウガを見つめ、涙が止まらなかった。


「……じゃあ、私たちが“女神の名のもとに”やってきたことは……

全部……無意味だったの……?」


剣士のリーダーが前に出て、叫ぶ。

「違う! 全員が悪いわけじゃない!

腐った貴族がいたとしても、国民全てがそうじゃない!」


セレステが、その言葉を冷ややかに切り裂く。

「“数人”で築けるほど、奴隷制度は軽くない。

それを見逃した時点で――その国は、“共犯者”だ。」


魔術師の青年が、顔を伏せたまま、ぽつりと漏らす。

「……もしかしたら……

最初から……俺たちは“利用”されてただけだったのかもな。」


緊張が頂点に達する中――

日本から来た英雄たちは互いの目を見つめ合う。

“正義”と“忠誠”の間で揺れる瞳。


そして、クロが一歩前へ出る。

その声は、揺れながらも、決して折れていなかった。


「……私を嫌えばいい。

この話を聞いて傷ついたなら、それもいい。

でも私は、あの鎖を実際に背負った。

今度は……あんたたちの番。

この国の罪を知っても、

“それでも守る”って言えるなら――

もう何も言わないよ。」


誰も、すぐには答えなかった。


ただ――

風だけが、誰の代わりでもなく吹いていた。




その時、大地がうねった。

遥か遠方の空に、再び光と影が交錯する。

蝕が、再びチャージを開始したのだ。


リュウガが顔を上げ、険しい目で遠くを睨む。


「……時間がねえ。

答えを出すなら、今だ。

この世界に、考える“余裕”なんて――

もうない。」



誰もが、遠くの空を見つめた。

爆発の余波に染まる、闇と光の狭間。

そしてその心には、たった一つの問いが刻まれていた。


――自分は、まだヴォルテルの“英雄”でいるのか。

それとも、今ここで、運命に抗う“選択”をするのか。


答えのないまま、

第267章は――静かに幕を下ろす。

この章が心に響いたなら、お気に入り登録・コメント・共有をお願いします。

あなたの応援が、「小説家になろう」でこの物語を生かし続けてくれます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この物語はメキシコ出身の作者「ジャクロの魂」によって執筆されています。 お気に入り・評価・感想などいただけると、物語を続ける力になります! 応援よろしくお願いします!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ