第258章 ―― 蝕に抗う翼
砲の震動ごとに、空が裂けていく。
蝕はすでに100%に達し、すべてを呑み込もうとする黒い太陽のように輝いていた。
ウェンディは肩から血を流し、顔に灰を纏いながら、歯を食いしばる。
「…この怪物に撃たせはしない。」
その隣で、ウナキタ形態のセレステが、衛星のように回転するクリスタルの輪を展開する。
「失敗すれば…守るべきものは何も残らない。カグヤ、私に同期して。」
マンタとフグの融合体となった忍者、カグヤが獰猛な笑みでうなずいた。
「海の生き物だって…巨人を倒せるってこと、見せてやろう。」
荒廃した通路で、リュウガが膝をつき、荒い呼吸をしていた。
ヴォルテルの英雄たちも傷つきながら、なんとか息を整えていた。
神官が苦しげにリュウガを見つめる。
「…もうこれ以上戦ったら、あなたの体が…」
リュウガは首を振る。
「関係ない。あの砲が撃てば、皆死ぬ。」
プリズマドラ形態のセレステが前へ出て、敵の残留エネルギーを反射するプリズム状のドームを展開する。
「動かないで。私が存在する限り、何も通させない。」
その隣では、ジェイド形態のセレステが周囲をスキャンし、緑の瞳を燃やしていた。
「逃走ルートと構造の弱点をマークした。援軍が来れば、真っ先に気づく。」
リュウガは一瞬目を閉じる。
まだ生きている…だが、戦いは終わっていない。
⚔️ 空中にて
魔導長が杖を振ると、その先端から無数の灼熱のルーンが放たれた。
「虫けら三匹が…永遠の夜の誕生を止められるとでも?」
一振りで、黒炎の竜のような旋風が唸りを上げる。
カグヤが真正面から突撃し、水雷を纏った体で叫ぶ。
「くらえッ!」
彼女の衝撃波が火の蛇を真っ二つに裂いた。
ウェンディは螺旋を描きながら翼から太陽光線を放ち、
それをセレステのクリスタルが増幅。
空を貫く緑の閃光となった。
爆発が天空を揺るがす。だが砲は止まらない。
蝕はなおもエネルギーを溜め、その核心は怪物の心臓のように脈動していた。
魔導長が、血を凍らせるような声で笑った。
「無駄だ…その表面すら傷ついていない!」
ウェンディは空中で膝をつき、息を荒げる。翼が震えていた。
「…ここで…失敗できない…!」
セレステが彼女を支え、揺るぎない声で言った。
「まだ、終わってない。」
汗で顔を濡らしたカグヤが振り返り、真剣に言う。
「なら…一緒に行こう。」
三人は目を合わせる。
言葉は不要だった。
――今しかない。
セレステのクリスタルが星のように輝き、
ウェンディの翼は灼熱の太陽のように燃え上がり、
カグヤは海の電流を纏って、稲妻と化す。
三人は蝕へ突進した。
放たれようとする闇の光線に、真っ向から立ち向かって――
地上で、リュウガが目を見開く。
その振動を肌で感じて。
「ウェンディ…セレステ…カグヤ…」
蝕の咆哮が、神の雷鳴のように大地を揺らす。
夜と昼が、一瞬でぶつかり合った。
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