第251章 ― 鎧を砕く一撃
通路は、緋の騎士が放つ黒鎖で燃え上がっていた。
その周囲を回るオーブは、まるで闇の太陽のように脈打ち、剣の一振りごとに空間を震わせる。
赤い瞳が、虫けらを見るかのように英雄たちを見下ろしていた。
「何をしようと…貴様らの運命は、すでに決まっている」
唇に血をにじませながら、ヴェルが拳を握りしめる。
「ならば…その運命を、ぶち壊してやる!」
カグヤは一瞬だけ目を閉じ、全身が輝きを帯びた。
黒い鱗と青い光の線が、腕と脚を走る。
「――忍法形態:シルーロ・レイアド!」
その姿は水中の雷のように揺らぎ、黒鎖の間をジグザグに駆け抜ける。
その軌跡ごとに、緋の騎士の鎧に細い斬撃痕が刻まれていく。
「川魚か…くだらん」
騎士が反撃しようとする寸前、カグヤが変化する。
「――忍法形態:マンタレイ!」
青い翼が背中から広がり、空中に浮かび上がると、鋭く弧を描く斬撃を連続で放つ。
それらはオーブと衝突し、空間を揺らした。
追いつめられた瞬間、カグヤの身体が膨らむ。
「――忍法形態:フグ!」
皮膚は鋼のような棘に変化し、敵の一撃を受け止めて、衝撃を跳ね返す。
爆風が通路を包み、騎士がわずかに後退する。
「くだらなくなんてない…私は、読めない存在なんだよ」
カグヤが着地し、荒く息を吐きながらも、笑みを浮かべる。
セレステはジェイド形態のまま、光学予知システムを起動。
緑に輝くバイザーが、オーブの微細な振動から動きを解析する。
「見えた! 胸の奥…あの核に、攻撃の瞬間だけ、ひびが入る!」
クーロが剣を強く握る。
「なら、すべてを賭けるしかない」
ヴェルが叫ぶ。
「私が引き出すわ!」
ヴェルは「紅薔薇の王冠」を展開し、燃える棘で騎士の足を絡める。
続いて「緋星の審判」の球体を掲げ、一瞬だけ時間を停止させた。
怒り狂った騎士が咆哮し、全力の緋の光線を放つ。通路全体が震え、壁が砕ける。
「今だ!」
セレステの声が響く。
ジェイドクリスタルが弱点を示す。
クーロの「蒼月の涙」がその点を斬り裂き、空間ごと一瞬凍結させる。
ヴェルが紅の花びらを集中させ、同じ裂け目に打ち込む。
カグヤがシルーロ形態で一閃、矢のように突き刺さる。
――通路が閃光に包まれる。
地面に倒れながらも、その光景を見つめていたリュウガ。
巫女が必死に止めようとする。
「ダメ! 動いたら死んじゃう!」
リュウガは血を滲ませた唇で微笑む。
「動かなくても…これならできる」
彼が手を掲げると、空中に灼熱の魔法陣が現れた。
「――マグマ・バースト:強化展開」
その熱波が、セレステのジェイドの標印に重なり、爆発の威力をさらに増幅させた。
敵が叫ぶ。ついに――緋の鎧にひびが入り、砕ける音が響いた。
その裂け目から、黒く煮えたぎる液体が溢れ出す。
英雄たちは地に伏しながらも、息を切らして生きていた。
ヴェルは膝をつき、クーロは脇腹から血を流し、カグヤは肩で息をする。
セレステはプリズマドゥーラへとモードを切り替え、緊急の防御結界を展開する。
緋の騎士は、揺らぎながら立ち上がった。
歪んだ笑みを浮かべる。
「見事だ…私を傷つけるとはな」
だがその直後、彼の闇のオーラがさらに濃くなる。
「だが、それはつまり――貴様らが、“本当の姿”と戦うことになるということだ」
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