第247章 ― 影に染まる蒼の誓い
通路は一撃ごとに揺れた。黒鎧の隊長が力強く歩を進めるたび、その黒い剣は地面からエネルギーを吸い上げていた。その隣では、影の獣が煙のヒュドラのように身をよじり、刃のように鋭い爪をきらめかせていた。
「この通路を通す者は誰一人いない」
隊長が吠える。その声は鋼がぶつかり合うように響いた。
クーロが一歩前へと進み、その衣が光に包まれて蒼の姫へと変わる。彼女の手に握られた聖剣は、浄化の光を放っていた。
「鎖に縛られて生きてきた… 屈辱も、奴隷の苦しみも知っている… だが、もう二度と膝などつかない!」
叫びと共に、彼女は獣へ突進した。刃が闇を切り裂き、一瞬、獣の姿が煙へと崩れた。
だが、影は再び凝縮し、その爪がクーロに命中。彼女の体は壁に叩きつけられた。
「クーロ!」
ヴェルが叫び、翼を広げる。
ユニコーングランの姫は天の輝きを身にまとう。
「氷天の欠片!」
蒼い氷の槍が獣の体を貫き、煙のような身体を鈍らせた。獣が咆哮し、氷を砕くが――その隙にリシアが弓を引き絞る。
「ヘラクレスの矢!」
光の矢が雷のごとく放たれ、隊長の鎧に直撃した。初めて、男が一歩後退し、鎧の金属が軋む音が響いた。
兜の下で、隊長が笑む。
「面白い… ならば、我が真の力を見せてやろう」
彼は剣を地に突き立てた。裂け目から黒い棘が通路全体へと伸び広がる。クーロは跳躍で避け、ヴェルは水晶の壁で防ぎ、リシアは矢を連射して破壊した。
だがその瞬間、獣が激しくクーロへ突進。
彼女は剣を構えるが、爪が防御を貫き、脇腹を深く裂いた。
「ぐああああっ!」
悲鳴が石の壁に響き、血が床を染めた。
「クーロ!」
ヴェルが必死に羽ばたき、花びらの刃を飛ばして獣を引き離す。リシアも連射で援護する。
クーロは膝をつき、蒼のドレスが脇腹で破れ、止まらぬ血が流れていた。
隊長は剣を掲げ、その全身を闇の気配が包む――まるで鉄の魔神。
「一人減ったな。次は誰だ?」
ヴェルは歯を食いしばり、瞳に涙がきらめく。
「…ふざけるな!」
リシアが再び矢をつがえ、声は震えていないが、瞳には恐れが宿っていた。
「彼女はここで倒れない!」
そのとき、通路全体が震え、奥で「蝕の光」が95%までチャージされていた。
張り詰めた緊張が全てを包む。
傷ついたクーロは荒い息をしながらも、剣を震える手で握りしめていた。
ヴェルとリシアが彼女の前に立ちはだかり、覚悟を宿した瞳で敵を見据える。
隊長とその獣が、捕食者のごとく、同時に歩を進める――
最後の激突が、今まさに始まろうとしていた。
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