第246章 – 回廊に潜む影
秘密の回廊の空気は重く淀み、石に刻まれたルーンが呪われた赤色に怪しく輝いていた。
その奥、エクリプスの基部へと続く道をふさぐように、黒い鎧に身を包んだ男が静かに立っていた。
その兜の隙間からは、まるで燃える炭のような赤い目が光っていた。
彼の傍らには、鋼の爪を持ち、黒い煙を纏った影の獣が唸りを上げている。
「よくここまで来たな」
その声はまるで鉄が擦れ合うような音を響かせた。
「だが──この道はここで終わる」
クーロは一歩、堂々と前に出た。
そのドレスが白と青の輝きに包まれ、彼女の姿は〈蒼の姫君〉へと変化する。
手にしたのは純潔を象徴する水晶の剣。
「あなたが誰であっても構わない。もうエクリプスは撃たせない!」
その横で、ヴェルは翼を広げ、夜空に瞬く星のように輝いた。
その姿は〈大いなる一角姫〉。額に現れた光の角が空間を貫く。
「たとえどんな代償を払っても、ここを突破する!」
リシアは静かに弓を引き、古の英雄たちの力が宿る光の矢を具現化した。
「早く終わらせるわよ」
男はわずかに笑みを浮かべ、手をかざした。
その瞬間、影の獣が唸りながら飛びかかってくる。鋼の爪が光を裂いた。
クーロは一瞬で前に出て、剣をかざす。
その光が獣の黒煙の一部を浄化し、トンネルが揺れるほどの衝撃が走る。
「二度と……あんたの鎖には縛られない!」
クーロの瞳が怒りと記憶で燃える。
ヴェルは疾風のように舞い、翼が残す光の軌跡が空を彩る。
「氷天の星片よ──舞い降りなさい!」
彼女の手から放たれた蒼氷の槍が無数に降り注ぎ、獣を覆って一部を凍らせる。
獣は吠え、氷を砕きながらも、動きが鈍る。
その隙を逃さず、リシアが放ったのは──
「ヘラクレスの矢!」
雷鳴のような音とともに放たれた一撃が、男の胸の鎧に直撃。
彼の体を数歩後退させた。
「……なるほど」
男は興味深そうに呟くと、剣を地面に突き刺した。
その周囲に黒きルーンが広がっていく。
回廊が唸り、地鳴りが響く。
再び男と獣が猛攻を仕掛け、三人は息を合わせて応戦する。
一撃一撃が命を奪うためのものであり、躊躇は一切ない。
その最中、ヴェルが叫ぶ。
「時間がない……エクリプスが──!」
全員が振り返る。
トンネルの奥、禍々しい暗黒の光が脈動を強めていた。
見えない時計が「90%」を指していた。
クーロは剣を強く握りしめ、オーラが激しく広がる。
「ここで終わらせるしかない!」
三人は互いに背を預け、力を重ねる。
光、氷、そして精霊の魔法が重なり、調和した光を放つ。
──決戦の幕が、今、開かれようとしていた。
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