第240章 ― アンの選択
エクリプスへ向かう部隊は、次の4人で構成されていた。
混沌を貫く光を掲げる〈白の姫〉の姿で先導するクロ。
癒しと攻撃の輝きを放つ〈ユニコーンの姫〉の姿で支援するヴェル。
魔法を宿す古代の矢で援護を続けるエルフの射手、リシア。
そして、すべてに備えた〈アリスの姿〉で構えるアン。
彼女たちは敵陣を突破しながら、エクリプスへと進んでいた。
遠くでは“巨獣”の咆哮が戦場に響き渡っていた。
そのとき――
道を塞ぐように、傷だらけの味方の伝令兵が彼女たちの前に現れる。
「こ、皇帝の巨獣が……!」
彼は膝をつき、血の混じった息で続けた。
「……壁を破壊してる……このままじゃ、塔が……!」
アンの足が止まる。
胸の鼓動が激しく打ち、息が詰まる。
彼女は仲間たちを見つめ、強く首を振った。
「……何事もなかったように進むなんて、できない。
あの化け物が塔を壊せば、エクリプスを止めたって意味がない」
クロが静かに、だが厳しい表情で告げる。
「アン……私たちの任務は明確よ。戻れば全てを危険にさらすことになる」
だが、アンの緑の瞳に宿る光は揺るがなかった。
「危険でもいい。それでも、あの戦いは――私のものだから」
ヴェルが腕を取る。
その手は震え、声には懇願が混じる。
「……本当に行くの?」
アンは笑った。けれどその笑みには、戦いの緊張が滲んでいた。
「今ほど確信してることはないわ。あとは任せた。私は……あの巨獣を止めに行く」
そう言い残し、アンは引き返す。
轟音と炎の向こう、ダイヤモンド・タワーの城壁へと。
その背中は煙と光の中に溶けていった。
残されたクロ、ヴェル、そしてリシアは、任務を全うすべく、なおも前へと走り続ける。
エクリプスの充填が終わる前に、あの砲撃を止めるために。
こうして戦場の運命は、二つに分かれた――
塔を守るため、“巨獣”と対峙するアン。
そして、砲撃を阻止すべく、“光”へと駆けるクロたち三人。
それぞれの選択が、戦の未来を織り始めていた。
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