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第238章 ― 皇帝の影

その報せは、まるで闇を裂く刃のように、イアト帝国の司令天幕を貫いた。

香と火薬の匂いが混じる空気の中、外では戦鼓の轟きが絶え間なく鳴り響いていた。


血と汗にまみれた伝令が、将軍ヴァルダーと皇帝イアトの前にひざまずいた。

「陛下……! 侵入者迎撃の部隊が……全滅いたしました」


その後に続いた沈黙は、息苦しいほど重かった。


黒と金に輝く鎧を纏ったヴァルダーが、怒りに顔を歪め、握った拳の血管が浮き上がる。

「……全滅? あの兵たちは“壁”のはずだったのだぞ!」


だが、皇帝は動かない。

帝国の紋章で飾られた鋼鉄の玉座に悠然と座り、氷のような視線で伝令を見据える。

「……顔を上げよ」


伝令は震えながら顔を上げた。


皇帝の声は低く、穏やかにすら聞こえたが――

その一言一言は、鉛のように重く響いた。

「ならば、彼らは“その程度”だったということだ」


その言葉と同時に、ヴァルダーが剣を抜いた。

一閃。

刃が閃き、伝令の首が宙を舞った。


血が石の床に飛び散り、天幕内は再び静寂に包まれる。


「……ご無礼を、陛下」

ヴァルダーは深く頭を下げる。

「このような失態、二度とは起こさせません」


その瞬間、皇帝が立ち上がった。

その身ひとつで、空気が変わる。

ただ存在するだけで、人々を圧倒する“威”があった。


「よく聞け、ヴァルダー」

その声は、火山の底で鳴るような静かな怒りを孕んでいた。

「一つの部隊の敗北など、運命を左右しはせん。ダイヤモンド・タワーは必ず陥落する。

その時、侵入者どもも、その名も、その記憶すらも、この世から消し去られるだろう」


皇帝の視線は、遥か彼方――再び脈動し始めた“エクリプス”へと向けられた。

あの魔導球体は、黒い心臓のように生き、鼓動し、力を溜め続けていた。


「剣で届かぬなら……砲で沈めよ」


ヴァルダーは血塗られた剣を収めながら、狂気めいた笑みを浮かべた。

その目には、血と炎の戦場を望む者の輝きがあった。


「……ならば備えよ。

この戦、ようやく“始まり”だ」

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この物語はメキシコ出身の作者「ジャクロの魂」によって執筆されています。 お気に入り・評価・感想などいただけると、物語を続ける力になります! 応援よろしくお願いします!
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