第242章 ― 日蝕の影に潜む真実
空気はまだ煙と塵に満ちていた。
リュウガはセレステとミユキに支えられながら、少しずつ脚に力を取り戻していた。
その瞳には疲労の色があったものの、それ以上に、すでに多くを悟った者の硬さが宿っていた。
「……リュウガ」
ミユキは涙をこらえながら呟いた。
「やっと……」
リュウガは一瞬だけ目を閉じ、深く息を吸い込むと、擦れたが芯のある声で語り始めた。
「もう……感情から目を背けたりしない。君たちが何も知らなかったのは顔を見れば分かる。けど、真実は……誰かが俺の記憶を改竄したんだ」
ヴォルテルの英雄たちが凍りつく。
まるで冷水を浴びせられたかのように。
ミユキが何かを言おうとしたが、リュウガが手を上げて制した。
「今は……話すときじゃない」
その瞳に冷たくも確かな決意が宿る。
「いずれ、この答えは出す。必ずな」
セレステは視線を伏せ、彼の言葉を静かに受け入れた。
だが、その瞳の奥にある緊張の色は消えていなかった。
そのとき――
ナヤが厳しい表情で近づいてきた。
琥珀の瞳にはホログラムが映り、空中に地図が投影される。
赤い大円が脈動しながら表示されていた。
「警告。ダイヤモンド・タワーへの帰還ルートは封鎖されています」
声は冷静だったが、その裏には明確な緊迫感があった。
「“エクリプス砲”が再充填中」
地図には、エネルギー中枢が拍動するように点滅していた。
「推定発射までの残り時間:15分」
ナヤは真っ直ぐリュウガを見据える。
「そのまま進めば、確実に殲滅される」
リュウガは傷の痛みに顔を歪めながらも、眉を寄せて地図を見つめる。
その瞳には、絶対に諦めないという光が宿っていた。
「……ならば、別の戦略を立てる」
ナヤは頷き、別のルートを指し示す。
「危険度は高いが、代替ルートを発見済み」
地図に隠された通路が浮かび上がる。
「君の身体はまだ損傷が激しいが、細胞活動に急速な再生パターンが見られる。戦闘を極力避ければ、移動中にある程度回復可能」
リュウガは拳を握りしめる。
「それで十分だ。……ここで倒れるわけにはいかない。これまで見てきたものすべてを、無駄にはできない」
セレステが彼の肩に手を置いた。
「あなたは一人じゃない、リュウガ。今回は……最後まで、私たちも共に行く」
ヴォルテルの英雄たちは、言葉なくそれを見守っていた。
空気にはまだ緊張が残っていたが、ひとつだけ明確になったことがあった。
――“エクリプス”との戦いは、まだ始まったばかりだ。
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