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第241章 ― 唇に乗った名前

ガレオンの煙はなおも黒い柱となって立ち上っていた。金属の巨体はクレーターの中に崩れ落ち、捻じ曲がった鋼の間を青い火花がかすかに踊っていた。

沈黙は鉛のように重く、時折、倒壊する梁の軋む音だけが響いていた。


瓦礫の中、リュウガの身体は動かず、塵と傷にまみれて横たわっていた。


「いたぞ!」

レンジの声が響き、ヴォルテルの部隊が駆け寄ってくる。


だが、最も早かったのはセレステだった。

彼女の鎧が煌めき、桃色と緑の光を放ちながら膝をついて彼の傍へ。

胸のダイヤが強く脈打ち、癒しと空気の浄化、そして呼吸の安定をもたらす波動を放っていた。

「リュウガ、耐えて……!」

その声は命じるようであり、同時に恐れに震えていた。


隣では巫女ミユキが聖なる光の魔法陣を展開し、杖の先がリュウガの顔を優しく照らす。

彼女はその傷ついた身体を両手で支え、震える声で囁いた。

「お願い……もう、二度と失いたくないの」


二人の力──セレステの結晶の光と、ミユキの暖かく黄金の癒し──が交わる中、リュウガの身体がわずかに動き始めた。


かすかな呻きと共に、彼の目がゆっくりと開かれる。最初は焦点が合わず、苦しげな息を繰り返すが――

やがて、その瞳は二人の顔をとらえる。


「……セレステ?」

その声は弱々しくも、確かなものだった。すぐに彼女を認識した様子だった。


しかし、首をわずかに動かしたそのとき、巫女の顔と視線が交差する。


時が止まった。


「……ミユキ?」


その名は、信じられないという囁きとして唇から漏れた。深く記憶の底から引き出された名前だった。


ヴォルテルの英雄たちが息を呑む。セレステは眉をひそめ、驚きを隠せない。

そしてミユキは、リュウガの手を撫でながら涙を溢れさせて叫んだ。


「やっぱり……やっぱりあなたはリュウガだった! 最初から感じてた、ずっと……私の幼なじみ、ずっと大切な人!」


リュウガは黙っていた。息はまだ荒かったが、その瞳には確かな“記憶の灯”が宿り始めていた。


――誰も予想しなかった再会。

それは、戦場のど真ん中で静かに起こった。

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この物語はメキシコ出身の作者「ジャクロの魂」によって執筆されています。 お気に入り・評価・感想などいただけると、物語を続ける力になります! 応援よろしくお願いします!
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