第236章 – 戦場に潜む影
イアト帝国の中央陣営では、たいまつが竜の舌のように燃え盛っていた。鎧をまとった騎兵隊、魔法歩兵の軍団、そして鎖につながれた戦獣たちが次々に展開し、大地が震える。
指揮台の上に立つ皇帝は、ダイヤモンドの塔を冷たい眼差しで見つめていた。
「抵抗は予想以上にしぶとい。しかし、エクリプスの第二の咆哮こそが、奴らが聞く最後の音となるだろう。」
その隣で、ヴァルダー将軍は頭を下げ、冷酷な笑みを浮かべた。
「奴らはすでに罠にかかった。戦力は分散され、指導者たちは負傷もしくは戦線離脱… 時間の問題です。」
だが、その場から遠く離れた、魔力で黒ずんだ森では、別の存在たちが潜んでいた。
蛇のような蒼い鎧をまとう男、エヴェソールは無言のまま立ち、槍を肩に預けていた。月光の下、その鎧の金属は生きた鱗のようにうごめく。
「帝国は駒を進めている… だが、我らは残骸を喰らうその瞬間を待っているのだ。」
その隣、影の中から姿を現したのは、深紅の髪を持つサキュバスの少女。艶めく瞳には妖しい光が宿り、蝙蝠のような翼をゆっくりと広げると、毒を含んだ香りが周囲に広がった。
「皇帝の兵たちは戦を制していると錯覚している… だが、本当の舞は、希望が絶望に変わった時に始まるのよ。」
エヴェソールは彼女を横目で見た。
「奴らを侮るな。あの戦士たちは、常識を超えるほど粘り強い。」
サキュバスは唇に指を当てながら妖しく微笑んだ。
「だからこそ美味しいのよ。希望が強ければ強いほど、それが潰えた時の絶望は…格別。」
帝国が正面からの総攻撃を準備する中、エヴェソールとサキュバスの影は密かに迫っていた。
ダイヤモンドの塔は今、両刃の剣に挟まれていた。
正面には宣戦布告された軍勢… そしてその背後には、暗闇に潜む捕食者たち。
本当の戦争は、まだ全てのカードを明かしていなかった。
この章が気に入ったら、お気に入り登録、コメント、シェアをよろしくお願いします!
あなたの応援が、この物語を生かし続けてくれます。




