第233章 ― 救出部隊
通信機からの沈黙は、次第に耐えがたいものとなっていた。
ウェンディ、アンドロイドたち、さらにはヴェルやリシアまでもが呼びかけたが、返ってくるのは雑音だけ。
ガレオンは墜落し、リュウガは敵地のどこかで行方不明のままだった。
セレステは唇を強く噛みしめ、胸のクリスタルが鈍く不穏な光を放っていた。
「……何もせずに、ここにいるなんてできない。リュウガが傷ついているなら、1秒たりとも無駄にできないわ。」
アンは拳を握りしめ、必死に涙を堪えていた。
「死んじゃダメ……!いつも私たちを守ってくれた彼を、今度は私たちが取り戻す番!」
空気が張り詰める。
全員を危険にさらすことはできない。だが、彼を見捨てることもできなかった。
最初に前へと出たのはカグヤだった。
淡い茶色と白の毛皮、鋭い牙、長く伸びた耳――獣の影が彼女を包み、“忍犬”の姿へと変貌する。
その姿からは、獰猛な気配が立ち上っていた。
「私が行く。灰に覆われた戦場でも、彼の匂いなら追える。」
セレステは手を掲げ、緑色の光に包まれた。
鉱石の破片が彼女の身体に融合し、耐久と調和を象徴する“ユナカイト”の装甲を形作った。
彼女の瞳はまるで宝石のように煌めいていた。
「あなたが見つけたら、私はその盾になる。リュウガを絶対に守ってみせる。」
3人目に前に出たのは、九尾の少女ハル。
彼女は風と炎を纏いながら、幻影のように分身する。
「私が囮になる。もしヴァルダーや皇帝と鉢合わせしても、リュウガから引き離す。命を懸けてでも。」
ウェンディは歯を食いしばり、行きたい気持ちを抑えていた。
負傷者たちを守るという自分の役割を、誰よりも理解していた。
「お願い……必ず、彼を連れて帰って。」
セレステは優しく肩に手を置き、穏やかな笑みを浮かべた。
「大丈夫。彼には、まだ果たすべき運命がある。ここで終わらせるわけにはいかない。」
そして、3人の救出部隊は言葉もなく進み出た。
煙と炎の中、彼らは無言の決意で前へと歩みを進める。
イアト帝国の軍太鼓と、コロッサスの咆哮が戦場を揺らすなか――
3人の覚悟は、誰にも止められなかった。
裂けた空の下、どこかで――
リュウガは、救いの手を待っていた。
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