第226話「クリスタル作戦」
内壁の上から、エレオノール王は戦場を見下ろしていた。
いつもは穏やかなその瞳に、今は爆炎の輝きと、破壊を撒き散らす巨像――**破滅の巨像**の影が映っていた。
「まさか…この塔が、こんな戦いを迎えるとはな……」
低く呟くその声には、重い覚悟が込められていた。
遥か遠く、“エクリプス”が脈打っていた。
犠牲と黒き魔力を糧に、破滅の力を蓄えている。
王は拳を握りしめた。このままでは、どれだけ耐えようと、再びあの砲撃が放たれれば、すべてが終わる。
そのとき、粉塵にまみれた鎧を着た少女――セレステが一歩前へ出た。
その紫がかった瞳には、迷いなき決意が宿っていた。
「陛下…ご提案がございます」
「言ってみよ、セレステ」
彼女が天に手をかざすと、幾つもの浮遊水晶が出現し、戦場の立体地図を描き出す。
塔、ガレオン、巨像、そして闇の砲台エクリプス――すべてがそこにあった。
「巨像はガレオンに気を取られていますが、長くは保ちません。そして、本当の脅威はエクリプスです」
重苦しい沈黙の中、彼女は続けた。
「私の持つプリズムコアの力をすべて一点に集中させ、ウェンディとアンドロイドたちの補助を得れば――
遠距離からでもエクリプスの中枢を破壊できる、“反射爆撃”を放てるかもしれません」
王は眉をひそめた。
「それは……お前自身が無事では済まぬだろう」
セレステは静かに笑った。
「ええ。でも、やらなければ皆が死にます」
そこへ、満身創痍のリュウガが現れる。彼はその言葉を聞いて頷いた。
「ならば――俺も共に行く。お前一人にはさせない」
ヴェルが弓を持ち上げ、にやりと笑う。
「おいしいとこ、独り占めはナシだぜ」
額に血を流したままのアンも頷く。
「これはもう、チーム戦でしょ?」
王は、彼ら一人ひとりを見つめた。
若い。しかし、その瞳には何よりも強い“光”があった。
「……よかろう。ダイヤモンドの塔は、全力でお前たちを支援する。
この日を、歴史に刻め――!」
セレステは目を閉じ、胸元のプリズムが共鳴する音を感じた。
「作戦開始。――コードネーム、“クリスタル”」
空は唸り、砲台は脈打ち始める。
第2撃まで、残された時間はわずかだった。
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