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第221章 ― 塩の姫君

西側戦線がカグヤの猛攻で震撼する一方、

東の防衛線にはまるで別の空気が流れていた。

戦場の嵐の中を、静かに、しかし確かな足取りで進む一つの姿があった。


それは――アン。

純白の輝きに包まれ、変身した彼女のドレスは結晶化した塩の層となり、

足元には海の気配をまとった蒼いオーラが波紋のように広がっていた。


彼女はすでに、“塩の姫君プリンセス・オブ・ソルト”となっていた。


手にした海螺のような装飾をあしらった杖を高く掲げ、

柔らかながらも響く声で詠唱する。


「——深海のウォール・オブ・アビサル・シー!」


地面から塩水の波が沸き上がり、瞬時に凝固して

光を弾く結晶の壁となり、敵の矢の嵐を真正面から受け止めた。

鋭い矢はまるで岩に当たるかのように砕け散り、虚しく落ちる。


その後方で待機していたエレオノーレの兵たちは、息を呑んだ。

その光景に、一人の指揮官が声を張る。


「進め!あの方が道を開くぞ!」


アンは静かにうなずき、淡く微笑んだ。


「戦の潮が暗きものであるなら、私は海の光をもってそれを晴らす。」


再び杖を掲げると、足元に魔法陣が展開される。

それは海塩の符号で編まれた蒼白の輪――


「——塩晶のレイン・オブ・クリスタル・サルト!」


次の瞬間、空から無数の塩の結晶が降り注ぎ、

刃のような鋭さで帝国兵たちの隊列を貫いた。

あまりの破壊力に、前線の兵たちは恐怖に駆られ後退する。


それを見た者の中には、

まるで“海の女神”と戦っているかのように錯覚した者さえいた。


塔の砦から弓を構えていたヴェルは、その姿を目にしてつぶやく。


「アン姉さん……あれはもう、騎士どころじゃない。

……誇りだよ。」


その隣でリシアも魔法矢を射ながら静かに言った。


「……奇跡と呼ぶに相応しいわ。」


リュウガの声が、プリズムネットワークを通じて響く。


「アン、東の防衛線を維持しろ!

カエラン、彼女の後方に槍兵を展開せよ!

あの壁が崩れれば、〈破滅の巨像〉が中庭へ突入するぞ!」


アンは杖を胸に引き寄せ、うなずく。

その瞳には揺るぎない光があった。


「……耐えてみせる、リュウガ。

子どもたちのために、民のために――そして、あなたのために。」


そう言って最後に、巨大な波を召喚する。

それは結晶化した塩の津波で、帝国兵を一掃するかのごとく押し流し、

波が引いた後には、まるで石像のように塩に覆われた敵兵たちの姿が残っていた。


塔の光がその結晶を照らす中、

エレオノーレの兵たちは咆哮するように叫んだ。


「塩の姫君に続け!!」


アンはただ、静かに微笑む。


――彼女はただの守護者ではなかった。

“希望”をその姿で示す者だった。

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この物語はメキシコ出身の作者「ジャクロの魂」によって執筆されています。 お気に入り・評価・感想などいただけると、物語を続ける力になります! 応援よろしくお願いします!
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