表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
221/324

第213章 ー 遠き影

ダイヤモンドの塔の高層プラットフォームのひとつから、リュウガは探索用クリスタルを調整していた。

空気はオゾンの匂いを帯びており、遥か遠くで〈破滅の巨像〉が放ったエネルギーによって、周囲は微かに震えていた。


そこに——それはあった。

〈破滅の巨像〉。ゆっくりと、だが確実に進むその足取りは、大地を砕きながら塔へと迫っていた。

中心の紅い眼が空を裂くたび、雷光のような一閃が走る。

その距離にもかかわらず、振動は塔の足元にまで届いていた。


ウェンディは歯を食いしばり、全身を震わせた。

「な……なにあれ……一体何なの……?」


隣ではヴェルが視線を逸らさずに答える。

「生物じゃない。……兵器だ。

戦争のためだけに作られたものだ。こんなの、歴史のどこにも存在しなかった。」


リュウガはすぐには返事をせず、クリスタルをさらに調整し、帝国軍の最前線に焦点を合わせた。


そこに、立つ影があった。

漆黒の鎧を纏い、その身からは闇の気配が漂っていた。

背後には黄金の鴉が描かれた軍旗が翻り、

その傍らには、やや背の低いが同じく威圧感を放つ将が、部隊に指示を与えていた。


アルタ王子が眉をひそめた。

「……あの二人、何者だ?」


リュウガは一瞬目を閉じ、静かに答えた。

「もしこれが軍の先鋒なら、あれは指揮官だ。

……名は知らなくても、見ればわかる。」


マグノリアが、いつもながらの冷静な口調で呟いた。

「先頭の男……ただの将軍じゃないわ。ここからでも感じる。あの異様な圧。」


アンは唇を噛みしめ、険しい表情で言う。

「誰であれ、あんな怪物を操ってるのなら……敵でしかない。」


リュウガはクリスタルから視線を外し、深く息を吐いた。

〈皇帝ヴァルセリオン〉の名も、〈将軍ヴァルダー〉の名もまだ知らぬままだった。

だが——その気配から伝わってくるものは、他とは違っていた。


「名はわからない……」

彼は力強く言った。

「だが、わかることはある。

奴らがここにたどり着けば、塔は終わる。

——俺はそれを、絶対に許さない。」


その言葉は、まるで火花のように全員に伝わった。


セレステは淡く輝く結晶の髪をなびかせながら、ほろ苦い笑みを浮かべた。

「なら、教えてあげましょう。

この世界のすべてが……簡単には屈しないってことを。」


遠くで〈ガレオン〉が咆哮を上げ、戦闘準備を整えていた。

そして地平の向こう、黄金の鴉がはためくその下で、

敵は着実に進軍を続けていた——自らがすでに、誰かの視線に晒されていることも知らずに。

この章があなたを惹きつけたなら、ぜひ「お気に入り」に追加し、コメントとシェアをお願いします。

あなたの応援が、この物語を生き続けさせる力です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この物語はメキシコ出身の作者「ジャクロの魂」によって執筆されています。 お気に入り・評価・感想などいただけると、物語を続ける力になります! 応援よろしくお願いします!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ