第211章-禁断の兵器とエレオノーレとの同盟
大地が、金属の咆哮と共に震えた。
イアト帝国の軍列の奥から、あり得ざる怪物のシルエットが現れた。
鋼鉄と呪われたルーンで構成された巨人——その名も〈破滅の巨像〉。
中心の赤い眼は、まるで黒い太陽のように開き、
一閃で地平線を真っ二つに裂き、山を灰に変えた。
皇帝ヴァルセリオンは腕を掲げ、声を轟かせた。
「これぞ〈破滅の巨像〉。いかなる王国も、いかなる英雄も、
その影からは逃れられぬ。ダイヤモンドの塔は我がものとなる。」
塔の内部では、緊張が極限に達していた。
探索用の魔法結晶は、巨像が一歩一歩迫ってくる様子を映し出している。
リュウガは歯を食いしばり、虹色の宝石で作られた魔法通信陣を起動させた。
空気がきらめき、回線がつながる。
そこに映し出されたのは、白銀の鎧をまとい、王家の紋章を掲げた
若きエレオノーレ王国の王子・カエランの姿だった。
その隣には、短く切った黒髪と、地図も人間も見透かすような紫の瞳を持つ
軍師アルウェナ・ファルケンラスの姿もあった。
「リュウガか」
カエランは驚いた声で言った。
「この遠征中に直接の連絡とは。何があった?」
リュウガは一礼し、言葉を絞り出す。
「イアト帝国が皇帝本人を動かした。そして同時に――〈破滅の巨像〉も。」
「エレオノーレが今動かなければ、
塔も、同盟も、未来も、すべて失われるだろう。」
ヴェルが一歩前に出て、焦燥のこもった声を上げた。
「カエラン王子、我々が見たものは普通の剣では対抗できません!
あれが進めば、すべてが消されます!」
アルウェナは腕を組み、鋭い視線で状況を読み取っていた。
「……黒い太陽が最後の手札を出してきたか」
彼女は低くつぶやいた。
「塔が破壊されれば、力の均衡は完全にイアトに傾くわ。」
カエランは一瞬アルウェナを見てから、再び通信陣に目を戻した。
その声には、誓いのような強さがあった。
「リュウガ。エレオノーレは盟友を見捨てたりしない。
騎士団、王国親衛隊、魔導砲兵隊、全軍を動かす。
戦場の指揮はアルウェナが執る。」
アルウェナは真剣な面持ちでうなずいた。
「我らは盾となり剣となろう。
だが覚えておいて。皇帝自身が戦場に立てば、
一つの誤りがすべてを終わらせる。」
リュウガは拳を握りしめ、決意の炎を宿した瞳でうなずいた。
「ならば共に戦おう。誓う。あの巨像には、塔ひとつ触れさせはしない。」
通信が切れる。
一瞬、部屋に沈黙が広がる。
その中で、機械のような瞳を持つパールが静かに言った。
「エレオノーレが味方にいるなら……
迫り来る闇を食い止められるかもしれない。」
リュウガは全員を見渡し、
静かだが、指導者の力を宿した声で宣言した。
「各自、備えを。最後の戦いが……今、始まる。」
そして外では、巨像がもう一歩を踏み出し、
その影に、大地さえも震えていた。
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