第199章 ― 砕けた首輪の残響
回廊は太陽の炎、狂乱するプリズム、そして聖なる光で燃えていた。
ウェンディ、セレステ、そしてクロは前線を保ち続けていたが――
その一瞬、激突の最中に、セレン・ハルヴァルドが剣をわずかに下ろし、じっと彼女を見つめた。
—「お前は……」
息を切らしながら、彼はつぶやいた。
クロは眉をひそめた。杖はまだ光を放っている。
—「……何のこと？」
セレンの瞳には困惑と記憶の色が混ざっていた。
—「間違いない……その目、その反抗的な光……俺はお前を覚えている。
あの奴隷の首輪をつけたのは、俺だ。」
周囲の空気が凍りついた。
エルリアが驚いた表情で振り返る。
—「ご存じ…なのですか？」
セレンは歯を食いしばり、怒りと羞恥を混ぜた声で叫ぶ。
—「あれは任務だった。お前のような奴隷は、声を上げないように管理しなければならなかった。」
クロの目が見開かれた。
記憶が閃く。
首に巻かれた黒い首輪。
セレンの無表情な顔。
閉ざされる尊厳。
引きずられる身体。
物のように売られていったあの日々。
胸が震え、杖が手の中で震える。
—「私は……ただの影だった。
名前も、声も、意思もなかった。」
セレステが顔をしかめ、震える声で叫ぶ。
—「クロ……！」
セレンは冷たく剣を構え直した。
—「お前は必要だった。
お前のような者がいなければ、秩序は保てなかった。」
クロはゆっくりと目を閉じた。
……そして、爆発的な白い光が全身から放たれた。
—「私はお前の奴隷じゃない！
お前の影でもない！
私はクロだ！！」
その叫びと共に、杖が巨大な白光の渦となり、セレンを数メートル吹き飛ばした。
エルリアが彼を庇おうとするが、
ウェンディが太陽の爆裂を放ち、バリアを砕いた。
—「仲間を縛る権利なんて、誰にもないッ！」
セレステは怒りと涙で震えながら、地面を叩く。
その瞬間、無数の結晶の槍が地面から噴き出し、回廊を貫いた。
—「これはもう塔のための戦いじゃない……
私たち自身のための戦いよ！！」
クロが一歩一歩進む。
その杖は、まるで小さな白い太陽のように輝いていた。
—「お前が私に残した全ての傷を返してやる。
そして、私の中にあった**“永遠の鎖”**を、今、砕く！」
セレンは剣を掲げ、歯を食いしばる。
—「ならば見せろ！
お前がもうあの奴隷ではないということを！」
光が再び激突する。
今度はもっと激しく、もっと個人的に。
プリズム、太陽、白光――
三つの輝きが一つとなって、塔全体を揺らす咆哮を生んだ。
核にいるリュウガは、静かにその戦いを見つめていた。
—「みんな、自分の傷を背負って戦ってる……
塔を守る以上の理由で。
だが、戦略を立てなければ、この戦争に答えは残せない。」
ダイヤモンドの塔をめぐる戦いはさらに激化し、
今やクロの過去すら、その審判の一部となっていた。
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