第196章 - プリズムと太陽、そして聖なる剣
ダイヤモンドの塔の振動がさらに激しくなった。
水晶のような回廊の奥から、新たな足音が響く。
それは帝国の金属音ではない。
規律正しく、荘厳で、まるで聖歌のような進軍だった。
ヴォルテル王国が到着したのだ。
先頭を歩くのは――セレン・ハルヴァード、"光剣士"。
彼の水晶の剣は、闇を裂くように光を放っていた。
その隣には、銀の杖を掲げた聖女エルリア。
清らかな光が彼女を包み、その後ろには聖遺物を携えた六人の精鋭騎士が続く。
セレンの声が響く。
—「ヴォルテル王の名の下に、この塔を“正義”のために接収する。」
聖なるオーラが回廊を満たす。
そこに現れたのは――セレステ。
変身し、モルガナイト形態となった彼女のダイヤモンドは、千の色彩を宿す心臓のように輝いていた。
—「この塔は、どの国にも属しません。
奪うつもりなら…私たちの“真実”を、その身で知ることになります。」
隣にはウェンディ。
手には炎のように輝く槍、髪は夜明けの光のように燃えている。
—「この塔が欲しいなら――まずは、私たちの光を越えてみなさい!」
ヴォルテルの使者たちは剣を抜き、構えた。
セレンが剣を向ける。
—「どちらの光が“純粋”か――決めるときだ。」
激突が始まる。
セレステは両手を広げ、**光花晶の封印陣**を展開。
二人の騎士が花のような光に包まれ、聖遺物を封じられた。
—「その遺物、ここでは使えませんよ。」
ウェンディは槍を回転させながら叫ぶ。
—「灼熱の太陽! 光爆ッ!!」
炎の旋風が回廊をなぎ払う。
敵軍は後退を余儀なくされる。
だがセレンはその炎を水晶剣の斬撃で切り裂く。
光は夜明けのように眩しく、神聖だった。
—「見事だ…だが、それだけでは足りん!」
聖女エルリアが杖を掲げ、浄化の光を放つ。
その一撃がセレステのプリズムを砕こうとする。
—「くっ…!」
だが、ウェンディがすかさず盾を展開し、光を反射させる。
—「仲間を傷つける者は、私が許さない!」
爆発の閃光が回廊を照らした。
セレステが微笑みながら言う。
—「それなら…私たちの光を一つに。」
ふたりは同時に踏み込み、ウェンディの炎が竜巻となり、セレステのプリズムがそれを屈折させて多重の光線に変える。
煌めく炎の万華鏡が敵軍を襲い、光の奔流が彼らの隊列を飲み込んだ。
騎士たちは動揺し、後退を始める。
セレンだけは立ち止まり、目にわずかな敬意を浮かべた。
—「…二つの光が、一つになったか。」
ウェンディは額に汗を浮かべながら、肩で息をする。
セレステはダイヤモンドに手を当て、静かに言った。
—「どこの国から来ようと関係ありません。
ここで、あなたたちの思い通りにはさせません。」
戦いは始まったばかり。
水晶の回廊で――プリズムの光と灼熱の太陽が、
聖なる剣を迎え撃つ。
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