第17章 - 輝ける王国エレイノール
エレオノール王国への劇的な入城、そして姉妹の感動的な再会の後――
リュウガとその仲間たちは、ついに大陸でも屈指の壮麗さを誇る都市の門をくぐった。
だが、光り輝くものがすべて黄金とは限らない……
真の「光」の裏にこそ、より深い「影」が潜んでいるのかもしれない。
街は白い大理石の段丘に広がり、光り輝く鎧に身を包んだ騎士たちが見守る階段で結ばれていた。清らかな水の運河が魔法の静脈のように蛇行し、音楽を奏でる噴水、空色の葉を持つ木々、そして浮遊する家々の間を流れていた。家々は、魔法で宙に浮かぶ花々で飾られていた。
広場には、古の英雄たち――人間、エルフ、そしてドラゴン――の像が立ち並び、塔の上には魔晶石が浮かび、光と音楽を放っていた。まるで楽園――だが、その楽園には常に目が光っていた。あらゆる角が監視され、すべての塔に見張りが立っていた。
王室の馬車が中央広場の前で止まった。
プリンセス・エリラが優雅に降り立つ。その佇まいは威厳に満ちていた。
「門を越えた今、聞かせていただきたい」
彼女は毅然と言った。
「妹を救ってくれたことには感謝します。しかし…あなたたちが持ち込んだ魔術と技術は、東方の王国ですら理解できないものです。」
リュウガが一歩前に出た。黒いマントが威風を帯びてはためく。
「リュウガ・ハシモト。銀ランクの冒険者。」
そう名乗りながら、金属製のカードを掲げた。
セレステとカグヤが続く。
「セレステ・アルテラ。アルカナ。」
「カグヤ・ミズハナ。神秘のくノ一。銀ランク。学園では教えないこと専門。」
エリラは鋭い目つきでカードを見つめた。
「『クラスなし』…珍しいですね。」
「でもその“珍しさ”が、私の命を救ってくれたわ」
と、ヴェルミラが微笑む。
エリラはため息をつき、うなずいた。
「ついてきてください。ただし覚えておいてください。父は…私以上に厳格です。」
四柱の広場の前には、エルフのルーンで浮遊する、天上の木で作られた三台の馬車が待っていた。
ヴェルミラは乗り込む前に振り返った。
「またお城で会いましょう、英雄たち。」
カグヤはすでに席に着いていた。
「ここにずっと住むわ、決めた!」
リュウガは窓から外を見つめていた。表情は固い。
「完璧すぎる…」
彼はつぶやいた。
「どういう意味?」とセレステが尋ねる。
「すべてが輝いている場所には…必ず影が潜む。」
翌日、王宮の大広間の扉が開かれた。
魔法のステンドグラスを通して、光が差し込む。
玉座には、王アルドールと王妃イゼルダが座していた。その隣には、ヴェルミラ、エリラ、そして若き王子カエランの姿。
「エレオノールへようこそ」
王が厳かに言った。
「娘を連れ戻してくれたことに、感謝を。」
「姉たちから聞いています。あなた方の勇気は、尊敬に値します」
と、カエランが力強く言った。
身分証が差し出された。
「クラス無し、分類不能な魔術…」
王がつぶやいた。
「忍とアルカナが共に動くとは…」
「だが、称号よりも行動こそが重みを持つのです」
と、王妃が微笑みながら口を開いた。
「今宵、エレオノールはあなた方を祝福します。」
「ワイン?それとも花茶?」とカグヤが聞く。
「両方だ」
カエランが笑って答えた。
その日の午後、城の浮遊庭園にて――
リュウガは王子と並んで歩いていた。
「君のオーラは…尽きることがない。人間のものとは思えない」
と、カエランが言った。
「お前は…将軍として育てられたな」
リュウガが応じる。
「国が欲しいか?」
「いや。欲しいのは“答え”だ。」
「なら気をつけろ。この国の光の下には…秘密が眠っている。」
その頃――
「リュウガとあなた、恋人なの?」
と、ヴェルミラがセレステにからかうように尋ねた。
「はぁっ?!な、なに言ってるの!?リュウガだよ!?」
セレステはお茶を吹き出した。
「それ、“違う”とは言ってないわね」
エリラが笑った。
「あなたのエネルギー…野生的な気配を感じる」
と、エリラがカグヤに告げる。
「うまく隠してるけど…大事な人の前では無理ね」
カグヤが打ち明けた。
「その人って…」
「うん、あの人。」
「なんでこの花、浮いてるの?」とアンが尋ねた。
「無駄に凝ったデザイン」
とイオが即答。
クロは静かに笑みを浮かべた。
リュウガは、丘の上からすべてを見下ろしていた。
――平穏。
長らく忘れていた感覚だった。
だが、彼の奥底は知っていた。
この静けさは、嵐の序章にすぎない。
一行は王族に迎えられた。
だが――このエレオノール王国には、目に映るもの以上の何かがある。
魔法に満ちた庭園、再会の喜び、そして胸の奥に潜む秘密の気配…。
本当の脅威は、まだ姿を現していない――。