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第1章 真紅の空の下

「生き残るって……どういう意味だ?

お前に力をくれていた“それ”が、もう無いのに。」


復讐のために戦う者もいる。

誇りのために戦う者もいる。


俺たちはただ――一緒に帰りたかっただけだ。


だが、戦場に約束は通じない。


今日、空は赤い。


そして――

俺たちのうち、一人はもう帰らない。

空気には、血の金属臭が充満していた。


リョウは、立っているのがやっとだった。


彼の鎧はへこみ、血に染まり、まるで失った仲間全員の重みを背負っているかのように重かった。


手が震えていた。


彼のまわりには死体。


仲間たちの遺体も、黒く焦げた大地の上に壊れた人形のように散らばっていた。


「くそっ…」リョウは歯を食いしばってうめいた。


彼は脇腹を押さえ、必死に血を止めようとしていた。


鼓動一つごとに、死が近づいていた。


その時、ひとつの影が彼に駆け寄ってきた。


ダリア。

白髪、緑の瞳。息が荒い。


その後ろにいたのは、幼なじみのエリアス。涙をこらえた目で。


ダリアはリョウのそばにひざまずき、優しく彼を支えた。

その視線は遠くの地平線に向けられていた。


「彼をここに残すなんて…絶対にしない」彼女はささやいた。


「もう…手遅れだ…」リョウがつぶやく。


「君たちは、前に進まなきゃ…」


大地を揺るがす爆発音。


戦いはまだ終わっていなかった。


「時間がない!」エリアスが拳を握りしめて叫んだ。


「一緒に来たんだ…なら、絶対に一緒に帰る!」


リョウは剣を手放していなかった。


血が流れていても、身体が限界を叫んでいても。


「リョウ…立てるか?」エリアスが声を震わせて尋ねた。


「…少しなら、戦えるかも」リョウは息を吐いた。


「これから…どうするの?」ダリアが倒れた仲間たちを見つめながら尋ねた。


エリアスは、廃墟の中ではためく破れた旗を見上げた。


「任務は…まだ終わっていない」リョウが言った。


「平原の向こうにある廃墟!」ダリアが思い出す。


「最初から分かってたんだ、これは帰れない旅だって」

リョウは苦い笑みを浮かべた。「でも死ぬなら、戦って死にたい」


ダリアは彼を見つめ、その目に炎が宿っていた。


「じゃあ、行こう。

でももし倒れたら…私が立たせる」


リョウはうなずいた。


エリアスは深く息を吸い、彼らは歩き出した。


黒く焼けた平原が、クレーターと死と沈黙で満ちて広がっていた。


リョウにとって、一歩ごとに血管の中に火が走るようだった。


「軍に入ったとき…やっと自分の居場所が見つかると思ったんだ。

欠点なんて関係なく、

君たちのために“誰か”になれると…」


ダリアとエリアスは立ち止まり、互いを見て、そしてリョウを見た。


言葉もなく、短く抱き合った。


それは恐怖と疲れと――そして愛のしるしだった。


「絶対に一人にはさせないって言っただろ」エリアスが無理に笑いながら言った。

「帰れたら…一緒に帰ろう」


だが恐怖が先に彼らを捕らえた。


少し前に倒れていた死体たちには――まだ剣が握られていた。


最後の瞬間まで、戦っていたかのように。


死の匂いは息すらできないほどだった。


「これって…」ダリアが涙声でささやいた。


「分からない」リョウが怒りをこらえながら答えた。

「でも…容赦なかったんだろうな」


ギィィィ――


金属のきしむ音が空気を裂いた。


煙の中から現れた影。


背が高く、骸骨のような体。


その目は、赤熱する炭火のように燃えていた。


巨大な剣を手にしており、

その刃からは黒い液体が滴っていた。


ダリアが息をのむ。


「…ネクロレイザー…」


リョウが後ずさる。呼吸が乱れる。


「こいつが…みんなを…!」


エリアスが一歩前に出た。


仲間たちの前に立ちはだかるように。


「下がれ」彼は静かに言った。


「ダメ!」ダリアが叫ぶ。


「置いていくな!」リョウも叫ぶ。


エリアスの目には――迷いがなかった。


「聞いてくれ」彼は言った。「ここで止めなきゃ、みんな死ぬ」


「リョウはもう戦えない。

ダリア、彼を連れて逃げろ」


「俺は…生き延びてみせる。約束する」


「無理よ!」ダリアが叫んだ。

「見てよ! みんな殺されたのよ!」


エリアスは歯を食いしばる。


そして――叫びながら突撃した。


ネクロレイザーは動かず、それを迎え撃つ。


カァァン!


剣同士が激突した。


衝撃でエリアスの腕は砕けそうだった。

だが、彼は耐えた。


「こっちに来い!」彼は叫び、氷の魔法を放つ。


地面が凍りつき、

氷柱が一瞬、敵を封じた。


「死ねえええええ!!」

エリアスは全力で斬りかかる。


バキィッ!


氷が砕ける。


ネクロレイザーが咆哮する。


怪物の剣が、容赦なく振り下ろされた。


エリアスの鎧が砕け散る。


リョウとダリアが見守る中――息を飲む。


「やめてえええ!エリアス!!」


「戻ってきてぇ!!」ダリアが泣きながら叫ぶ。


だが、エリアスは止まらない。


最後の突撃。


剣が敵の脇腹に届いた。


火花。亀裂。希望。


だが――


ネクロレイザーが剣をつかむ。


握りつぶす。まるで紙のように。


エリアスは、崩れ落ちる金属を見た。


「…うそ、だろ…」


そして――敵の剣が胸を貫いた。


「エリアァァァァァァァァス!!」

リョウとダリアが絶叫した。


時が止まった。


血が噴き出す。


エリアスは息を荒げ、何かを言いたそうにした。


その目は、リョウを探していた。


「ごめん…お願いだ…生きて…くれ…」


そして、彼は倒れた。


「うわああああああああああああっ!!」


リョウの叫びが空を裂く。


怒りだけでネクロレイザーに突進する。


剣はかすり傷すら与えられなかった。


怪物が反撃する。


リョウは地面に倒れ、もがく。


ダリアが間に入る。杖でかばう。


「リョウ!気をつけて!」


空を雷光が走った。


バリバリィッ!


爆発が二人を吹き飛ばす。


光。炎。混沌。


リョウは地面を転がり、全身傷だらけ。


ダリアも同じ。


「エリアス…」リョウが煙と血の中で泣きながらささやく。

「こんなの…現実じゃない…」


ダリアは目をこすりながら辺りを見回す。


瓦礫の向こうに――


敵はまだ、立っていた。


死んだのか?


雷にやられたのか?


自然現象だったのか?


どうでもよかった。


ただ――エリアスをもう一度抱きしめたかった。


こう言いたかった。


「僕は、生き抜いたよ」って。


だが、彼の体は――


動かなかった。


涙は刃のように落ちた。


「もっと強かったら…君を守れたのに…」


風が煙を吹き飛ばした。


そして、見えた。


ネクロレイザーのシルエット。


炎に包まれ――


立っていた。


その目は、いまだ赤く輝いていた。

挿絵(By みてみん)

「…関係ないわ」

ダリアは一歩踏み出しながら、そうささやいた。


「私が……あなたを守る」


彼女の腕は血を流し、

身体は震えていた。


それでも、歩みを止めなかった。


リョウも立ち上がった。ふらつきながら。

涙はまだ頬を濡らしていた。


それでも――希望は残っていた。


ふたりが一緒にいる限り、

戦える。

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この物語はメキシコ出身の作者「ジャクロの魂」によって執筆されています。 お気に入り・評価・感想などいただけると、物語を続ける力になります! 応援よろしくお願いします!
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