第191章 ――ダイヤモンドの秘密
《ダイヤモンドの塔》の巨大な門が、重々しい轟音と共に開かれた。
それはまるで、リュウガたちの意志に応えるようだった。
中から溢れ出した光は純粋で透き通っており、生きた宝石の心臓へと足を踏み入れたかのように、彼らの視界を一瞬で奪った。
やがて光が収まり、誰もが言葉を失った。
主の間――そこは磨かれたダイヤモンドの壁に囲まれ、その中に数々の神器が浮遊していた。
剣は炎を持たずして燃え、冠は秘術の符号をきらめかせ、球体の中には小さな宇宙すら見えた。
まさに「神々の博物館」だった。
ドワーフのグレイオは、長い口笛を吹き、兜を脱いで深々と頭を下げた。
「先祖の髭にかけて……こりゃ千代にも渡る宝の山だ!」
彼はひとつの浮遊するハンマーに近づいた。その表面には、瞬きするたびに姿を変えるような刻印が彫られていた。
「一つ一つが、王国一つより重い価値がある……」
目を潤ませながら、彼は呟いた。
「これは……力じゃない。夢だ。鍛冶師の誇りそのものだ……」
リュウガは黙って彼を見つめていた。
初めて、グレイオが“何かの前で小さく見えた”瞬間だった。
王子アルタは前へと進み、目を輝かせながら言った。
「私が交わした約束は……決して偽りではなかった。」
その声には誇りと感動が混ざっていた。
「この宝物庫は、王国の歴史を変えるだろう。」
彼はリュウガたちへと振り返り、真剣な表情で続けた。
「君たちは、誰よりも大きな功績を果たした。王冠にかけて誓おう――君たちは英雄として報われる。金も、土地も、望むものすべて……契約以上の報酬を与えよう。」
アンは驚きの目を向けた。
「約束以上に……?」
アルタはうなずいた。
「当然だ。君たちがいなければ、これらの奇跡は……間違った手に渡っていた。」
だがその時、彼の瞳にかすかな影が差した。
アルタは、雷を閉じ込めたような槍の前に立ち止まり、口を引き結んだ。
「……だが」
「我らだけではない。まだ、この競争は終わっていない。」
沈黙が落ちる。
誰もがその意味を悟っていた――帝国、そしてヴォルテル。
リュウガは周囲を見渡し、神器たちの光を目に映しながら静かに言った。
「誰が来ようと構わない。ここに踏み込むなら……俺たちが立ちはだかる。」
塔の光がその言葉に反応するかのように脈動した。
まるで、塔そのものがその誓いを聞き入れたかのように。
奥底から、低く重い反響が響いた。
――警告のように。
《ダイヤモンドの塔》は、容易く手に入る褒美ではない。
グレイオが祖先のハンマーを撫で、アルタが約束以上の誓いを立てるその裏で、
静かに、そして確かに――他の足音が、この水晶の回廊へと近づいていた。
感動に浸る時間は、もう残されていない。
真の試練は……いま、始まったばかりだった。
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